表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/34

12、兄妹対決

『ねぇねぇ、お兄ちゃんがいないと、やっぱり寂しい?』


 机の上の小さな友達に、彼女は語りかけていた。


『居ないったってよ、かーちゃんにバーゲンの荷物持ちに駆り出されてるだけじゃねぇか。なんだよいきなり充電中の俺をたたき起こしやがって。』


 オセロ盤の上に乗って盤に石を置きながら、彼は悪態をついた。


『だって、誰もいなくって退屈なんだもん。』

『だからってわざわざオセロやるために、俺を起こすのかよ……はい、角とった。』

『うぇー、強いよー。ちょっとは加減してよー。』


 小さな友達の代わりに石を裏返しながら、彼女はぶうたれた。


『うっせえ、いきなり暇つぶしに付き合わせておいて加減しろとか勝手にもほどがあるだろうが。』


 オセロ盤をむつかしい顔で睨みながら、彼女はふと思ったことを聞いてみることにした。


『そういえばさ、もし、もしも……お兄ちゃんが、本当にいなくなったら、あなた、どうするの?』


 友達は、少しだけ質問の意図を考えていたようだったが、やがて口を開いた。


『そりゃ……恐ろしく退屈になるだろうな。』

『寂しいとかじゃないの?』


 彼は考え込んで、すこし再び口を開いた。


『さぁなぁ……あいつと遊んだり、笑ったり、喧嘩したり、一緒にバトルしたりできないなら……俺は何をしていけばいいのか分かんないな。……それが、寂しいってことなのかね?』

『そしたら、どうする?』


『そんなもん、絶対にありえないぜ。俺がさせねぇよ。あいつやお前と笑いあうのが、俺の一番の楽しみなんだからな。』

『もう、なによそれ。』


 彼女は笑ったが、彼の眼は、そのガラスのような瞳は、どこまでも真剣だった。


「ランナちゃん……ランナちゃん?」


 ランナはリルの声でハッと現実に引き戻された。


「次、ランナちゃんの番だよ。」


 リルはオセロ盤の上に石を置いたところだった。

 彼女らは、夕食を待っている間、暇つぶしにオセロをしていた。


「うぇー、全然取れないじゃない……」


 ランナがむつかしい顔で盤面を睨んでると、玄関が開く音がした。


「ただいまー。」


 その声に、ランナは顔をしかめる。


「うっ、お兄ちゃんだ……」


 あれ以来、ランナとチギルは食事の時でも言葉を交わさないし、それ以外ではランナの方から避けている。


「ランナ……」

「リル、続きは部屋でやろ。」


 今も、居間に入ってきたチギルを見て、盤ごとリルを持ち上げて部屋に戻ろうとしている。

 しかし、そこでリルが盤からテーブルに降りた。


「待って、ランナちゃん。私、あの子と戦いたいの。」

「え、リル? 何を言い出すの?」


 そうこうしているうちに、チギルがそばまでやってきた。その肩の上には装甲を纏ったプレーン型のプラモロイドが乗っている。


「ねぇ、あなた、私とバトルして!」


 リルはプレーンに向かって呼びかけた。彼女は驚いて自分を指さした。


「え、わ、私とですか?」


 ランナが慌ててリルを止めようとする。


「ちょっと、リル! 勝手に何言ってるのよ!」


 リルは両手を顔の前で合わせてランナを拝むようにして懇願した。自分と、プレーンの少女と、ランナと、チギルと。彼女の小さな身には余る問題だが、険悪な兄妹に挟まれて悶々としている状況を許容できるほど、彼女は気が長くなかった。

 とにかく4人で一緒に何かすれば何かが変わると、そう思ったのだ。


「お願い、私の我儘を聞いてほしいの!私たち、決着をつけなきゃいけない気がするの!」


 その言葉に、プレーンの少女―ヘラも、自分の中のモヤモヤした気持ちに気づいた。マスターになるかもしれなかった少女と、その相棒となったプラモロイドへの、割り切れない感情に。


 同時に、彼女はハルトの言葉を思い出していた。お互いのことを知るなら、バトルが一番だと、彼は言った。


 ヘラは、リルは自分と同じ気持ちなのだと思った。

 自分とリルの戦いで、マスター同士の会話の橋渡しをしたい、彼女はそう思った。


「マスター、それと、ランナ……さん。私からもお願いします。」


 ヘラも、チギルとランナに呼びかけた。

 プラモたちの視線を受けて、マスター二人は困ったようにお互いを見る。


「え、ええ……ちょっと、なによう。」

「バトル、か……なるほど、いいかもな。」


 チギルは、ヘラの気持ちをなんとなく察し、ランナに向き合う。


「いいじゃねぇか、やろうぜ。飯ができるまでまだ時間あるだろ。」


 3人からの視線を受け、ランナも渋々うなずく。


「わ、わかったわよぉ。やればいいんでしょ。」

「ありがとう、ランナちゃん。」

「ありがとうございます。」


 我儘を聞いてくれたことへの感謝を言い、プラモ二人はお互いに頷き合った。

 マスター二人はプラボックスでバトルの準備をする。そして、プラモ二人をボックスに入れ、スマホを構える。


「フィールド展開!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 視界が暗転すると、ヘラとリルはプラモ十体で手をつないでも囲めないほどの大樹が並ぶ樹海の中に立っていた。しかし、今回は前の試合とは違いお互いにお互いが見えない位置に配置されている。


『お! 森の中か、いいステージだ。』

『え、森の中かぁ……いやなステージ……』


 二人は正反対な反応をするが、それもそのはず、空を飛ぶリルにとっては、張り出した枝が障害物になり、移動力でも攻撃力でも飛行や射撃の強みを生かしきれない。

 対して、障害物の多さはヘラにとっては足場や遮蔽物が多いということである。


『ヘラ、まずは木の上に登るんだ。脚部の爪を使え。』

「はい、わかりました。」


 ヘラの脚部には、鋭い鉤爪が付いている。木に足をかけると、爪ががっちりと引っかかるのだ。

 そして、ヘラは手をかけたりブレードを木に刺したりしながら、頂上付近の大きな枝まで登って行った。


『レーダーを使え、頭部だけでなく、肩部についたパーツもな。』


 ヘラは高い位置から、レーダー機能で敵の位置を探し始める。


 ヘラのレーダーは敵の発する電磁波を検知する。プラモロイドが電気で動くものである以上、どうしても体からは電磁波が漏れてしまう。


 しばらく木の上でじっとしていたヘラだったが、やがてレーダーにかかるものを見つけた。


「いました!」


 一度向きが分かれば簡単だ。あとはカメラ映像でわずかな動きから敵の姿を見つけられる。


『よし、距離を詰めろ。』

『うそ、見つかっちゃったの!? リル、逃げて!』

「ど、どっちに!?」

『とにかく上に!』


 マスター同士お互い顔を突き合わせてバトルしているので、当然声で互いの行動がばれる。見つかったことを悟ったランナとリルは、足場がなく見晴らしの良い空に逃げることを選んだ。


 因みに、こういう時のためにその場で文字を入力したりあらかじめ用意しておいたテキストで命令を出すこともできるが、彼らはその準備をしていなかった。

 木々の間を抜け、空を目指すリル。しかし、そう簡単に逃がしてはもらえなかった。


「逃がしませんよ!」


 ヘラは脚の鉤爪を使って枝を渡り、腰の後ろにつけた昆虫の腹のような推進器を噴射させながらジャンプしてリルの進路上でブレードを振り上げる。


「んな、速い!?」


 とっさにシールドを張って直撃を避けるが、シールドの縁に片足をかけてもう片足での蹴りで叩き落されてしまう。


『よし! 今のは上手いぞ!』

「ありがとうございます、マスター!」


 ヘラは落下途中でブレードと鉤爪を引っ掛けて木につかまる。


『ちょっと、もろに入ったけど大丈夫!?』


 リルは地上すれすれでPAで勢いを殺して着地する。


「何とか大丈夫だけど、何発もは受けられないよ……けほっ、木が高すぎて離脱が間に合わないよ……。」


 そこで、リルは上から空を裂く音が聞こえるのに気付いた。


「はぁぁぁぁぁ!」


 リルが慌てて身を引くと、ヘラが背中から落ちながら上から左腕で真っ直ぐに切り付けてきていた。


「ひぃっ!?」

『ちょ、お兄ちゃん!? 大人げないよ!』

『盾で転がり、右突き、足払い!』


 ヘラは攻撃をかわされると、背中のシールドを補助腕で動かして転がりさらに右腕を突き刺すように追撃し、さらに、右手をついてそこを軸に体を回転させ、足払いをかける。


「うわっと!?」

『飛んで!逃げて!』


 リルは転ばされそうになったところで咄嗟にPAを使い、空中に浮いて転倒を回避すると同時に推進器を吹かせて距離を取った。

 そのまま空中に上がろうとするリルだったが、体勢を崩しかけてすぐに着地した。


『どうしたの?空中に上がりなさいよ。』

「だ、だめだよランナちゃん、今ので左側の翅がやられちゃった。」


 今のブレード攻撃で、翅の片側がへし折られてしまっている。


「だぁぁぁぁぁあ!」


 そうしているうちに、姿勢を低くしたヘラが一気に距離を詰めていく。


「くぅっ!」


 リルは細かく浮遊し、距離を取りながら射撃で牽制する。先ほどの着地でヘラの左の補助腕がひしゃげてしまっているので、そちらを狙って撃つ。

 ヘラもそちらを向けないように、方向転換して円を描くように距離を詰めていく。


『いいわよ、リル。そのまま距離を保って!』


 距離を詰め切れずにダメージが蓄積するヘラを見かねて、チギルが指示を出した。


『ヘラ、左のランチャーも使ってみろ。精密に狙わなくてもいい。』

「わかりました。」


 ヘラは左手で脚部につけた小型のランチャーを手に持って構えた。ミサイルが3発だけ入った細長いランチャーである。それを適当にリルに向けて一発撃った。

 煙のエフェクトを吐きながらミサイルが飛んでいくが、十分目で追えるスピードでしかなく、回避は簡単に見えた。


『なによそれ。リル、横に避けて。』


 リルはPAで浮遊して、推進器をふかして横に高速移動し、ミサイルを回避する。

 かわしたと思ったその時、ミサイルの軌道がぐんと曲がり、リルを追ってくる。


「え、何これ!?」

『PAの出す電磁波を追従するアンチエアミサイルだ!後のミサイルもぶっ放しちまえ!』

「はい!」


 放たれたミサイルがリルに迫る。


『転がって避けて!』


 飛んでくるミサイルを潜り抜けるように転がり、なんとかミサイルをやり過ごした。


「くぅぅっ、危なかった……」


 リルは一安心するが、チギルの次の指示が飛んだ。


『低空飛行で突っ込んでブレードで切り裂いてやれ!』


 腰の推進器を一気に吹かして、低空をその勢いで飛びながらヘラが一気に接近する。


「決めます!」


 右腕のブレードで地面を擦るようにしながら、地面に突っ伏しているリルに迫り、頭から真っ二つに切り裂こうとする。


『ひぁぁぁぁぁ!?』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ