表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の谷の狙撃手  作者: キャップ
第三章 剣崎明人の軌跡
304/309

剣崎明人の軌跡

三年前の初夏。不本意ながらも秋津洲での戦に加担してしまった。あの墓地から真っすぐに両領地を繋いでいる「あの谷」での戦闘。


参加させたのが少数の斥候と狙撃兵とはいえ、この地にて銃を使用させてしまった。こちら側に損耗こそなかったが秋津洲人を傷つけてしまった事に違いはない。


小規模とはいえ「エフゲニーが聞かされている中」では最も直近で起きた金剛家と扶桑の戦であり、兵士を貸し出したエフゲニーにとってもほとぼりが冷めるほどの時は経っていない。


戦場となった土地を軍人への教育の場とすることは時代を問わず世界中で行われている。異世界である秋津洲とて例外ではないだろう。だがこちらに対する釣りにしては疑似餌が大きすぎる。イワシを釣るのにマグロの仕掛けを使うようなものだ。


金剛と扶桑、お互いに斥候が入り込んでいる地域だ。こちらに認知される事は承知の上での行動なのは疑いようもない。影武者を使った、戦を起こす為の攻撃を誘う挑発か、ただこちらの動きを確認するだけの行動か、はたまたこちらが危害を加えない事を確信して何かしらの目的を達成しようとしたか。


「・・・・・」


答えようのない疑問は尽きなかった。そしてよりたちの悪い「疑惑」もだ。


今回撮影に成功した狙撃兵を含めた十数組のカメラマンを派遣したのはエフゲニーの考えではない。あくまで金剛家の依頼を受けてそれを受諾したに過ぎないものだ。


「我々では及ばない優れた装備と技量の偵察兵による監視」という単純な動機が金剛家からの依頼理由だった。三年前にはイレギュラーこそ起きてしまったが、直接的な戦闘が絡まない任務であればエフゲニーや各中隊長も実戦的な訓練を兼ね、これまでに何度もその様な依頼を受けてきた。だが今回はこれまでの依頼に対して規模も人員も明らかに多い。これまではせいぜい一個小隊程度の派遣だったにも拘わらず、裏方も含めればそれこそ三個小隊近くが動いている。


大隊の存在は扶桑はもちろんとして両家のたった一人の農民にすら認知されてはならない。本来は少数のみで動くべきだったのだが、広範囲に及ぶ監視と秘匿の為に多くの兵を導入するという半ば本末転倒な事になっていたのだ。


こちらは依頼主である金剛家の依頼をこなし、成果を報告した。そしてこちら側にその成果を何に利用するのかを問うことはできなかった。


正確にはできない訳ではない。だが金剛家の口から直接真意が語られる事はないだろう。扶桑瀧人が不審な動きをしており、篠田の発電所を視察したのち扶桑の都である山城へは戻らずに「転移の中心」とされる幻永林のある最上へ。そして今度は再び篠田へと戻り、あの墓地へと姿を現した。最初の発電所視察と同時に訪れていたという墓地へ、再びだ。それが事実なのかを知る手伝いをしてほしい。


その答え以上の答えを問うことも真意を探る事も「真正面からは」不可能だ。金剛家も何かを隠し、大隊を利用している事は考えるまでもなく間違いのない事実だろう。それはお互い様だ。腹の内を全て見せられる程に仲の良い組織や国同士などこの世に存在したりはしない。ひねくれではなくこれも事実だ。


個人的な用事であれば、あれを忘れたこれを忘れたと一見右往左往するような行動をするのも理解できる。だがそのような行動は扶桑瀧人が起こしてよい行動ではない。突発的に成さねば成らぬ予測困難な事態が起きたという事は想像に難しくない。それも危険を冒してまで実行しなければならない何かが。


日本軍人が漂流してきている可能性。不審な扶桑瀧人の行動。明らかに活発化している金剛家の動き。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ