第9話 凛とキリカ
「おはようキリちゃん!」
「おはよう布由」
朝、長い金髪をなびかせている凛と教室に入った布由は窓際の席に座っている三つ編みおさげで丸眼鏡をかけているの魔女キリカと目が合った途端笑顔であいさつをし駆け寄っていった。それを見た凛は目を丸くし驚いたような表情をしていた。
「ねぇふゆ、いつの間に黒華さんと仲良くなってたの?」
当然の疑問を布由に投げかけた。
「さ、最近だよ」
「本当に……?」
布由は何かをごまかすようにそう言った。黒華霧こと魔女のキリカとは入学式の前から知り合ってはいたが、こうして学校でお互いに声を変えけるのは今日が初めてなのだ。もちろん凛はこのことを知らないので疑い深い目を布由に向けていた。
「まぁ、いいや。私、ふゆの親友、坂本凛。よろしくね黒華さん」
「はい、よろしくお願いします坂本さん」
二人はお互い笑顔で挨拶を交わしたが、心なしか二人の間に火花が散ってるようにも見える。だが布由は何も気にしてない様子だった。
それから二限目の授業である体育の授業が始まろうとしている。今日の体育の授業では卓球をする予定だ。
「布由、今日は私の相手してくれる?」
キリカはラケットをもって布由を誘いに来た。
「ちょっと待った!ふゆは私の相手をしてもらうのよ」
キリカに対抗するように凛も布由に詰め寄る。
「じゃあ、二人で勝負して勝った方とやる。それでいい?」
「いいね、そうしよう黒華さんもそれでいいよね」
「はい、かまいませんよ」
キリカもそれを承諾し、二人はメラメラと、闘志を燃やしながら卓球台へ向かうのだった。
「それじゃあ、最初に一セット取った方の勝ちで。サーブは黒華さんからでいいよ」
凛は髪を髪紐で結びながらルールを決める。そして二人は向かい合いキリカのサーブで布由を取り合う戦いが始まった。布由はそれを座って眺めている。始めは軽いラリーが二、三往復続いていたが次第にスピードが速くなり布由は目で追えなくなってきていた。
「このスピードについてくるなんて中々やるね」
「あなたこそ、しぶといですねっ!」
キリカは力強くスマッシュを台のふち目掛けて打ち放した。だが凛はそれをいとも簡単に撃ち返してしまう。
「……」
「まずは一点」
凛はラケットをくるりと回してそう言った。唖然とするキリカにボールを渡し再び凛はラケットを構えなおす。そしてもう一度キリカのサーブで長いラリーが始まると思っていたのだがどうやら違うらしい。凛の撃ち返したボールをキリカがまた力強くスマッシュをするのかと思いきや、そのボールはキリカのラケットには当たらずカーブし卓球台の上をバウンドして床に落ちていった。
「二点目~」
またしても点を取ったのは凛だった。その後も凛は着々と点を取り続け気づけばキリカが五点、凛が十点を取り、凛のマッチポイントがやってきた。そして決着は以外にもあっさりついてしまった。体力が無くなってきたキリカに容赦ないスマッシュを打ち凛はマッチポイントを制したのだ。
「さぁ、ふゆ私と一緒に……」
凛がそう言ったその瞬間無情にも授業が終わる、チャイムが鳴った。
「……また次やろうね凛ちゃん」
そして時間が流れ昼休み。今日は三人でいつもの中庭にある、あまり人の来ない木陰で弁当を食べる予定なのだが布由が来ない。
「ふゆがお茶を買いに行ってくるって言ってから五分……一向に帰ってくる気配がない」
「もしかして迷子になってるんじゃ……」
「まさかそんなこと……いや、あの子ならあり得る。ちょっと探しに……」
凛は布由を探しに行こうと立ち上がった。
「私も行きます!」
キリカも立ち上がり二人は一緒に布由を探しに校舎の中へ入っていく。校舎の中は多くの生徒であふれかえっていた。というのも今日は購買で限定メロンパンが販売されている日であり限定メロンパン目当ての生徒が多く集まっているのだ。
「この中からふゆを……いやこの中にいないかもしれないし……」
「……坂本さん、何か布由とつながりがある物は持っていますか?」
「そう言ったってそんなもの……あっ、髪紐。これ初めてテニスの試合に出たとき布由から貰ったやつ」
凛は腕に巻いていた赤い髪紐をほどきキリカに見せる。それにキリカは手をかざし、凛にばれないようにほんの少しだけ魔力を込めた。すると髪紐からキラキラとした砂のようなものが人混みの中へ伸び始めた。
「坂本さん、布由はその先の階段のところにいます」
「それ本当なの!?まぁ、行ってみるけど」
凛はきりかに言われた通りに階段まで人混みをかき分けながら向かう。そして凛は人混みの中から布由を連れて戻ってきた。
「ごめんねぇ、人が多くてなかなか進めなくて。やっと進めたと思ったら何故か元の場所に戻って大変だったんだよ」
「今度からは布由を一人にしないよ。迷子になっちゃうからね」
「ふゆも帰って来たしお昼ご飯食べようか」
そして三人はようやく昼食を食べ始めるのだった。
「布由、これ上げる」
「え、いいの!?」
突然キリカは自分の弁当のおかずから卵焼きを布由に食べさせた。
「!?ふゆ、これあげる」
それを見た凛は対抗してか、布由に渡した。唐揚げを渡した。
「じゃあ、私からはこれをあげるね」
布由は二人の口にイチゴを入れた。突然のことで驚いたキリカと凛は声も出さず固まってしまっていたが、布由はどこか楽しそうにしていた。
「二人は仲良しだねぇ」
笑みを浮かべ、凛とキリカに聞こえないくらいの声でそうつぶやくのは布由だった。
「何か言った?」
「うんん、何も言ってないよ」
そして昼食を食べ午後の授業を乗り切り迎えた放課後。凛はバイトへ、布由とキリカは森の中にある喫茶店、クロネコにいた。
「凛ちゃんとは仲良くなれそう?」
キリカが淹れてくれたアップルティーを飲みそう聞く。
「私としてはぜひ仲良くなりたいかな。それに卓球で負けたのがちょっと悔しい……」
「凛ちゃんはスポーツ全般が得意だからね。それにテニスやってるから自然と卓球も上手なんだよ」
布由は自慢げに言う。それを聞きながらキリカは布由の隣に座りケーキを渡した。
「でも次は私が勝つから」
キリカはケーキを食べようとする布由の隣でニコリと笑顔でそう言った。不覚にもドキッとしてしまった布由はその笑顔がとてもかっこよく見えていた。




