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喫茶クロネコへようこそ  作者: うなぎタコ


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第10話 真っ黒な本

「私、学校の図書館に入ったの初めてだ。意外と広いんだね」

「ここが人間界の図書館……本当にこの広さで足りるの?」


 ある日の放課後、布由とキリカは学校の図書館へ、とある本を探しに来ていた。


「それじゃあ、手分けして探そうか」

「私、向こうの方から探してくるね」

 

 二人はそれぞれ手分けして目当ての本を探しに向かった。


「キリちゃん、探してる本見つかった?こっちには無かったけど」


 布由は本棚の影から顔を出しキリカに話しかける。

 

「うんん、こっちも無かった。もしかしたら学校の図書館には無いのかもね。でももう少し探してみたいかも」

「分かった。じゃあ私はあっちの方探してくるね」

「うん。ありがとう」


 その後も二人は広い図書館の中で一冊の本を探していたがなかなか見つけられずにいた。


「やっぱりないのかなぁ。ん?この本……」


 諦めかけていたキリカが手に取った一冊の真っ黒な本。その本は周りの本とは違い、僅かながら魔力が漏れ出している。本を開こうとするとバチッと静電気の様な物に弾かれてしまう。


(結界が張ってある……これ、魔導書?なのかな、なんでこんなところに……)

 

「キリちゃん、こっちには無かったよ~」


 本を探しに行っていた布由が戻ってくる。


「あれ、その本、もしかして見つかったの!?」

「これは探してる本じゃないけど気になったから……それにやっぱり無かったよ、マンドラゴラの栽培方法が載ってる本」

「そっかぁ、やっぱり学校には無いんだ。もっと大きな図書館ならあるのかな……ところでその本はどうするの?借りる?」

「うん、借りて行こうかな」

「それにしても凄そうな本だね」

「そう?まぁ、確かにそうかも」

 

 キリカはその怪しい真っ黒な本を借り、その日はそれぞれ家に帰った。家に帰るなりキリカは本に掛けられた結界の解除を試みる。だが何度やっても結界に弾かれてしまう。

 

「……クロ、居る?」


 自分では結界の解除が無理と判断したキリカは使い魔の黒猫、クロを呼んだ。


「ここにいますわよ」


 尻尾を浴びていたクロはキリカの呼びかけに返事をする。そして結界の張られている本がおかれている机へ飛び乗った。


「クロ、この本に掛けられてる結界を解除したいから解析お願いできる?」

「えぇ、いいですわよ。それにしてもどこでこれを見つけてきたのですか?」

「学校の図書館にあったの」

「なぜ人間界のそのようなところに……」


 クロは困惑しながら真っ黒な本を見る。

 

「分からない、だから解析が終わり次第お師匠様のところに持っていこうと思うの」

「そう、それは良い判断ね。じゃあ解析を始めるわ。時間がかかるからお店を開ける準備をしに行きなさい」

「ありがとうクロ、行ってくるね」


 クロに結界の解析を任せキリカは一階にある喫茶店の開店準備を始めるのだった。店内と店先の掃除、食器を吹いて軽く仕込みを済ます。いつもは布由がいて話をしているだけで、あっという間に終わるこの作業も、一人静かでいるととても長く感じる。そしてしばらくして店が開き多くはないが人間以外の客が集まってきた。その中に一人、見覚えのある魔女がいた。フェルア・エトリアだ。

 

「やっほー、キリ」

「いらっしゃい、フェル。飲み物はカフェラテで良かったよね」

「うん、ありがとう」


 フェルはカウンター席に座り、キリカの淹れるカフェラテを待っていた。


「それで、今日は何しに来たの?」


 カフェラテをフェルの前に置いてキリカは目的を聞く。


「何かなきゃ来ちゃダメなの?まぁ、今日は用があってきたんだけどね。はいこれ師匠から」

「何これ、手紙?何も書かれてないけど」

「その手紙に魔力を込めてみて」


 そう言われた通りキリカが手紙に魔力を込めるとじわじわと文字が浮かんできた。


「すごい……これ、どういう仕組みなの」

「師匠が言うには同じ魔力の周波数を持つ人が魔力を込めると隠されてる文字が浮かび出てくる魔法なんだって。しかもこの魔法、難し過ぎて使えるのは魔法界に五人しかいないんだって」

「そんな高度な魔法を使って私に伝えたかったことって何なんだろう」


 気になったキリカは手紙に浮かび上がった文字を読む。そこには『次こっちへ来るときの手土産はイチゴタルトを所望する』と書かれていた。それを見たキリカは心底あきれた顔をしていた。


「こんなどうでもいいことを伝えるために高度な魔法を使うなんてお師匠様は本当に……」


 キリカは手紙を片手で握りつぶしながらそう言った。すると二階から降りてきたクロがカウンターの上に乗り、キリカとフェルアの間に座る。


「結界の解析が終りましたわ」

「クロ!お疲れ様。それで、どうだった?」


 クロは首を横に振る。


「解析の結果だけどあの本には強力で複雑な結界が張ってあるの。残念だけど私やキリカじゃあ、結界は解除できそうにないわ」

「クロでもダメなのかぁ」

「キリ、何か面白い物でも見つけたの?」

「今日学校の図書館で見つけた真っ黒な本なんだけど何故か結界が張ってあって魔力が中から少しだけ漏れてたんだよね。そうだ、フェルにも見てもらいたいから上からとって来るよ」


 そう言ってすぐにキリカは二階から真っ黒な本をもって降りてきた。


「これだよ、この本真っ黒でしょ」


 キリカはフェルアに真っ黒な本を渡す。

 

「本当だ、魔力があふれてる。なんかちょっと不気味……それでこれどうするの?」

「明日にでもお師匠様のところに持っていこうと思ってるよ」

「それならイチゴタルト作っておかないとね」

「もしかしてそれを見越して手紙を書いたんじゃ……いや、お師匠様ならあり得そう……」

 

 それからしばらく経った後、キリカは店を閉めイチゴタルトを作り始めた。


「フェルは今日泊っていくの?」

「いや、帰るよ。学園から出されてるレポート明後日提出なんだけどまだ終わってないから書かないといけなくて」

「人間界について調べてるんだっけ?」

「そう。人間界の生き物とか植物とかについて調べてるんだよ」

「へぇ、今はそんなことについて調べてるんだ」

「実は人間界の植物を使って薬とか作れるんだよ」


 何気ない会話を交わした後フェルは魔法界へ帰っていった。

 そして翌日の朝早くキリカとクロは真っ黒な本とイチゴタルトを持って魔法界へ向けて出発するのだった。

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