第7話 初めて二人で出かけた日
遂に迎えた休日、キリカはフェルアから選んでもらった服を着て布由との待ち合わせ場所の駅前にいた。
「どうしよう、予定より早く着いちゃった」
駅にある時計塔を見上げキリカはそうつぶやいた。なんとキリカは布由との待ち合わせ時間の二十分前に到着してしまっていたのだ。キリカが大人しく待とうとしていたら時計塔の後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「キリカちゃん?」
「!?」
そう名前を呼ばれて振り返るとそこには同じく予定より早く着いていた布由がいた。
「布由!?まだ待ち合わせ時間の二十分前だよ」
「えへっ、楽しみ過ぎて早く来ちゃった。そういうキリカちゃんも早く着いてるじゃん」
「わ、私も楽しみで早く来ちゃって……」
「ふふっ、じゃあちょっと早いけど行こうか」
二人は駅のホームへ向かい電車に乗って隣町のショッピングモールへ向かうのだった。
「ここがショッピングモールだよ、キリカちゃん」
「こんなに大きな建物って存在するんだ……人間界すごい……」
「中はもっとすごいんだよ」
そんなショッピングモールの外観に感動しているキリカを中に連れて入った。
「……魔法界にある大図書館みたい」
ショッピングモールの中へ入ったキリカはあたりを見渡しながらそうつぶやいた。
「大図書館?っていうのはよくわからないけど、すごいところでしょ」
「うん。それに1つの建物の中にたくさんのお店があるし人もたくさんいる」
普段こういったところに来ないキリカはとても楽しそうにしていた。
「ほら、こんなところで立ち止まってないでまずはゲームセンターに行って思いっきり遊ぼう!」
布由はキリカの手を握りゲームセンターへ向かうのだった。
「布由、これって何?」
キリカが指さした先にあるのは大きなシマエナガのぬいぐるみのクレーンゲームだった。
「これはクレーンゲームって言ってこのボタンを押して上についてるアームを動かすの。そしてこのボタンを押したらアームが下に降りて行って景品をつかんでそこにある穴へ落ちれば景品が手に入るゲームだよ。やってみる?」
「うん、やってみる!」
そう意気込んだキリカは百円を入れ早速アームを動かし始めた。キリカの動かしたアームはぬいぐるみの真上に行き降ろされたアームはぬいぐるみをつかんだ。
「布由!持ち上がったよ」
「嘘っ、一発で取れちゃうの!?」
キリカと布由は張り付くように持ち上がり穴の方へ移動するぬいぐるみを見ていた。だがクレーンゲームはそんなに甘くない。穴まで残り半分のところでぬいぐるみはアームから滑り落ちてしまったのだ。
「あーっ!落ちちゃった」
「もう1回……」
悔しそうなキリカはもう一度百円を入れた。しかし、何度やってもぬいぐるみは穴の中に落ちてはくれない。何度も、何度もキリカはぬいぐるみが取れるまで百円を入れ続けた。そしてついにその時はやってきた。
「あと……1回だけ……」
「完全に沼にハマっちゃったね、キリカちゃん」
キリカはボタンを押してアームを動かし狙いを定めてアームを降ろした。降ろされたアームはぬいぐるみをがっしりとつかみ離さないように移動を始めた。ぬいぐるみを掴んだアームはついに穴の上にやってきてぬいぐるみを穴へ落した。
「やったー!取れた、取れたよ布由!」
柄にもなく布由の前で取れたシマエナガのぬいぐるみを抱いてキリカは、はしゃいでいた。それを見ていた布由はクスっと笑みをこぼしていた。
「ど、どうしたの布由」
「いやぁ、可愛いなって思って」
するとキリカは我に返ったのか頬を赤らめぬいぐるみに顔をうずめた。そんなこんなでクレーンゲームが終わった二人はプリクラを取ってお昼にフードコートでハンバーガーを食べていた。
「さて、次はどこ行こうか。キリカちゃんはどこか行きたいところある?」
「私、人間界の服をあまり持ってないから服を見に行きたい」
「じゃあ、食べたらキリカちゃんの服を見に行きますか!」
そして昼食を食べ終わった二人は服屋へ直行した。
「ここなら可愛い服がいっぱい揃ってるからきっといいのが見つかるよ」
たくさんの洋服が置いてあるスペースで二人はそれぞれ服を選んでいた。
「布由、これとかどうかな」
キリカは一枚の服を布由に見せた。
「おぉ、いいじゃん。試着室ならそこにあるよ」
「ううん、これは私じゃなくて布由に着てほしいの。布由に似合うかなって思って……」
キリカは照れくさそうにそう言った。
「えっ!私にいいの?じゃあ私もキリカちゃんの選んであげるよ」
布由は張り切ってキリカの服を選びだした。そして二人はお互いに選んだ服を試着し見せ合い購入した。
「はい、キリカちゃん、これ私からのプレゼント」
布由が手に持っていたのは桜のヘアピンだった。
「いいの?こんなに可愛いもの貰って」
「いいの、いいの、ほらつけてあげるよ」
布由は優しくキリカの白く美しい髪を触り桜の髪飾りをつけた。
「うん、すごく似合ってる。そこの鏡で見てごらん」
キリカはみせにある鏡の方を向いた。
「綺麗……ありがとう布由。これから毎日着けるね」
「気に入ってもらってよかったよ」
布由はにっこりと笑顔を見せた。
「この後はどうしよっか。アイスでも食べる?」
「アイス……食べたことないから食べてみたい」
「よし、じゃあ、アイス食べに行こうか」
そして二人はアイスを買いに向かった。布由はバニラアイスをキリカはチョコアイスをそれぞれ頼んだ。
「ひんやりしてる……」
「一口食べてごらん。冷たくておいしいよ」
そう言われたキリカはペロリと一口アイスをなめる。
「美味しい……」
「でしょ。でも、食べ過ぎには注意だよ。お腹痛くなっちゃうからね」
二人はそのまま黙々とアイスを食べていた。それからアイスを食べ終わった二人はその後もいろいろな店を回り休日を楽しんでいた。そしていつの間にか時間は過ぎ去り陽が落ち始めていた。
「もうこんな時間か、そろそろ帰ろうか」
「布由、今日は誘ってくれてありがとう。人間界のことが知れたいい日になったよ」
「私もキリカちゃんのいろんな表情が見られて楽しかったよ。特にクレーンゲームの時はすごかったなぁ……」
「その時の事は忘れて、恥ずかしいから」
「うーん、忘れないかな。だって可愛かったし」
「じゃあ、私もいつか布由のことをもっと知ってやり返してやる……」
こうして二人の楽しい休日が終わった。




