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喫茶クロネコへようこそ  作者: うなぎタコ


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第4話 調合の魔女

 「ここがキリカの住んでる森か……久しぶりだなぁ、キリカ元気にしてるといいけど」


 ある日の夜、魔女キリカの経営する喫茶店【クロネコ】のある森に一人の赤髪の魔女が降り立った。魔女はそのまま、まっすぐ喫茶店へ向かって行った。


「いらっしゃいませ」

「やっほー、キリ」

「フェル!?」

「そうだよ、キリの幼馴染のフェルア・エトリアだよ~」


 そう言って、料理を運んでいるキリカに魔女フェルア・エトリアは話しかけに行った。


「なんか忙しそうだね、私、手伝おっか?」

「お願い!服は二階にあるから」


 忙しそうなキリカを見たフェルアは店の二階に上がりこの店の制服を着て喫茶店の手伝いを始めた。そして二人で店を回すこと数時間、ようやく客足が落ち着いてきた。


「ありがとうフェル、助かったよ」

「いいってことよ」


 手伝いが終わったフェルトはカウンター席に座り水を飲んでいた。そして一息ついたフェルトは鞄の中から何かの液体の入った瓶を取り出しカウンターの上に置いた。


「はい、これ。今日はこれを渡しに来たんだ」

「おぉ!魔力薬だ。こっちには魔力が流れてないから助かるよ」


 魔力薬、それは魔法界で売っている魔力の籠った液体薬である。この薬はただ魔力を回復するだけではなく怪我なら大抵治る優れ物なのだ。魔法界では大気中を流れる魔力を操り魔法を使うことができるのだが、ここ人間界には魔力が流れておらず魔法を使うには自分の体内を流れる魔力を消費しなければならない。そして魔力が無くなれば当然魔法の類は一切使えなくなるのだ。


「今回は五本持ってきたからしばらくは補充しなくて大丈夫だと思うよ」

「さすがフェルだね。早速飲んでみるよ。あ、もしかしてまだ苦いままなのかな?」

「うーん、それはどうだろうね」

 

 キリカはフェルから受け取った魔力薬を一口飲んだ。


「あれ、ちょっと甘くなってる?」

「そう!キリのために甘く作ったんだよ。でもまぁ、多少苦みは残っちゃったけど」

「ありがとう、おかげで飲みやすいよ。さすが調合の魔女だね」


 そう言われたフェルトは嬉しそうにしていた。調合の魔女、その名を持つ魔女は魔法界では二人しかいない。フェルトとフェルトの師匠、セリルア・ケリロだけだ。そして魔力薬はセリルアが魔力のない土地で魔法を使えるようにするため作られたものであり独特の苦みを含んでいる。だがあまりに苦く飲みにくいことがあったため、フェルトが二年かけて飲みやすく改良したのだ。ちなみにセリルア・ケリロの弟子はキリカとフェルトの二人だけである。


「そういえば、お師匠様は元気なの?最後に会った時は腰を痛めてベットで横になってたからちょっと心配で」

「師匠?あぁ、元気だよ。いやむしろ元気すぎるかな。キリが魔法界を出て行った後に自分で腰の痛みを治す薬を作って今はずっと研究室に籠ってるよ」

「相変わらずだね、お師匠様は。元気ならそれでいいけどね」


 キリカはフェルトと話しながら作ったミルクココアをフェルトに差し出した。その後しばらくしてこの日の喫茶店経営は終了した。


「結局最後まで手伝ってもらっちゃったね。フェル、今日泊っていくでしょ?」

「もちろん、そのつもりで来たからね。師匠にもそう言ってあるし」


 二人は喫茶店の二階にあるキリカの家に上がり夕食と風呂を済ませキリカの自室でくつろいでいた。


「ねえ、キリは最近どうなの?人間界の生活には慣れた?」

「うん慣れてきたよ。学校にもちゃんと毎日行ってるし友達もできたんだよ」

「そっか、ちゃんと学校行って私以外に友達もいるんだ。ちょっと安心したよ」

「魔法界にいたときは学校なんて行かずにお師匠様と研究室に籠ってたからね」

 

 キリカは魔法界にいたときのことを懐かしんでいた。魔法界に居た頃のキリカはひたすらに研究熱心な子で朝から晩までセリルアと共に魔法薬や魔法について研究していた。ゆえに友人は少なく、同じ研究室に籠っていた幼馴染のフェルだけが唯一気を許せる友人なのだ。


「それでキリの友達ってどんな子なの?」

「とっても元気で明るい子だよ。それによく喫茶店に、遊びに来てくれるんだよ。でも今日はきてくれなかったなぁ」

「もしかしてキリ、人間をここに入れてるの?」

「うん、そうだよ。でも安心して、私と二人でいる時だけだから」

「そういう事じゃないんだけど……まぁ、今回は、多めに見るよ。だけどあんまりここに人間を入れちゃだめだからね。ただでさえ人間が魔力を受けたらどうなるかわかってないのに……あんまり危ないことしないでね」


 フェルトは一人、人間界で暮らすキリカのことを心配しながらホットミルクを飲んだ。


「ところでその友達の人間って、どうやってこの森に入ってるの?人間はこの森の中に入れないはずだけど」

「私が作ったネックレスを渡したんだ。この森と喫茶店に入るための鍵みたいなネックレスだよ」

「キリ、あんた本当にすごいんだね。人間にも効果のあるネックレスを作るなんて。キリも師匠に並ぶくらいにはすごいことしてるよね」


 フェルトはキリカの作ったネックレスの話を聞いて感心していた。


「私はお師匠様ほどすごくないよ。ネックレスだって私の魔力を流してるものだから、ネックレスにある魔力が無くなったらもうここへは入れないからね」

「魔力の補充はできないの?」

「うん、できない。魔力が尽きたらただのネックレスになっちゃう。お師匠様ならどうにかできるのかな」

 

 キリカは切なげにそう言った。


「フフッ、キリはよっぽどその人間の友達が好きなんだね」

「ふぇっ!何、急に。まぁ、確かに好きだけど……」

「ふーん」

 

 キリカは動揺し頬を赤らめていた。


「ねぇ、もういいじゃん。早く寝よ?」

「ダメだよ。まだ夜はこれからなんだから」


 そう言ってフェルトとキリカはお互いが寝落ちするまで話を続けていた。そして翌日、二人が目を覚ましたのは昼過ぎだった。


「それじゃあ、私そろそろ帰るね」

「もう帰っちゃうの?」

「キリにも会えて渡すものも渡したからね。それに定期的に魔力薬持ってくるからまたすぐ会えるよ」

「それもそっか……あっ、そうだ。ちょっと待てってね」


 魔法界に帰ろうとしていたフェルトを引き留めキリカは厨房へ移動した。それから約一時間後キリカは白い箱をもってフェルトのところへ戻った。


「フェル、これ」

「何これ?甘いにおいがするけど」

「アップルパイだよ。お師匠様が好きだから持って帰って届けてくれる?もちろんフェルの分もあるよ」

「ありがとうキリ!師匠も喜ぶと思うよ」


 そしてフェルトはキリカから貰ったアップルパイをもって魔法界に帰っていった。箒に乗り空を飛んでいるフェルトの背中を見送りながらキリカは店前の掃除を始めるのだった。

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