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喫茶クロネコへようこそ  作者: うなぎタコ


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第3話 スポーツテスト

 高校の入学式から数日たったある日の事。


「クロ~今日も学校で布由に話しかけられなかったよぉ~」


 魔女のキリカは学校から帰ってくるなりカウンターにいる使い魔の黒猫クロに顔をうずめていた。


「これで何回目ですの?いい加減話しなさい」

「ここではうまく話せるけど学校だと緊張して話せないの……」


 キリカは自分の姿を変え布由と同じ学校で同じクラスの隣の席なのだが、そのことを布由に隠しているのだ。


「じゃあ、ここ来た時に言いなさいよ。どうせ今日も来るんでしょう?」

「ここだと、布由と話せるのがうれしくて話を切り出しにくいの」

「はぁ、あなたは本当に……とりあえず着替えてきなさい」

 

 クロに話を聞いてもらったキリカは、二階の自室へ上がり着替えに行った。数十分後キリカはいつもの和服の上にエプロンドレスを着た姿で降りてきた。


「あ!キリカちゃん!やっほー今日も遊びに来たよ」

「布由!いつから来てたの」


 お店に降りてきたキリカの目の前にいたのはカウンターの上にいるクロの頭をなでている制服姿の布由がいた。撫でられているクロの方を見てみると、しぶしぶ撫でさせているような感じだった。

 

「ん?さっき来たばっかりだよ」

「そうだったんだ。制服って言うことは学校帰りに来てくれたんだね」

「そうだよ、学校が始まっちゃってキリカちゃんに会う時間が減っちゃっうからそのまま来たんだ」

「!?」


 布由が嬉々としてそう言うとキリカは照れたように頬を赤らめていた。


「ふ、布由は学校どうなの?」


 キリカは照れ隠しするように布由に話を振った。

 

「楽しいよ。でも明日は行きたくないかなぁ……」

「どうして?」

「だって明日はスポーツテストがある日なんだよ」


 そう言った布由はカウンターにうつ伏せてしまった。


「スポーツテスト?」


 キリカは首を傾げた。スポーツテスト、それは運動の苦手な布由からしたらただひたすらに苦痛な時間。テストという名の拷問の時間なのだ。そのことをキリカに伝えるとガクブルと震え始めた。


「人間ってそんな恐ろしいことしてるの……」

「そうだよ、恐ろしいんだよ。キリカちゃん何かスポーツテストで使えそうな魔法ないの?」

「あるにはあるけど本当に使っちゃっていいの?今後何か大変なことになったりしない?」

「うっ、そういわれると確かに今後、体育祭とかで大役任されたらいやだなぁ」

 

 布由はうつぶせの状態からさらに頭を抱えだした。


「本当に運動嫌いなんだ」

「嫌いだよ~」

「じゃあ、明日頑張ったらご褒美を用意しておくよ。だから頑張って?」


 キリカがうつぶせになっている布由にそう言うとバッ!と顔を上げた。


「私、明日頑張る!」


 それから元気になった布由はキリカとしばらく話し店の開店前に家へ帰っていった。


 翌日。

 

「おはよーふゆ」

「おはよう、凛ちゃん……」


 布由は重い足取りで家を出て学校へ向かっている道中で凛と出会った。


「あはは、やっぱり元気ないじゃん今日」

「そりゃそうだよ、だって今日はスポーツテストの日だもん。凛ちゃんはわたしが運動苦手なこと知ってるでしょ?」

「よく知ってるよ。でも、あたしは別に嫌いじゃないかなー」

「凛ちゃんは体動かすの好きだもんね」


 布由は遠い目でそう言った。

 

「それ以上に、必死に頑張ってるふゆを見るのが好きなんだけどね」

「ん?今何か言った?」

「うんん、何でもないよ」


 二人はそのまま会話を続けているといつの間にか学校へたどり着いていた。スポーツテストは午前の授業すべてを使い、前半は室内、後半は屋外でそれぞれ行われるのだ。学校へ着いた二人は更衣室で体操着に着替え体育館へ移動した。


「さぁ、まずはシャトルランからだよ!」


 体育館に移動した布由と凛は準備運動をして最初の種目のシャトルランへ移った。

 

「なんで最初にシャトルランなの!最初は握力測ったり、もっと軽い奴じゃないの?」


 布由は凛に最初の種目について不満を漏らしていた。

 

「だってショトルラン以外空いてないから。それに、一番大変なシャトルランからやった方が後、楽でしょ?」

「楽じゃない!苦痛だよ!……ってまぁ、どれからやってもあんまり変わらないか……」


 諦めた布由はそのまま凛に連れられシャトルランの開始地点へ移動した。布由はうずくまりながらその時を待っていた。


「ほら、ふゆ始まるよ」

「う~、いやだ~」

 

 そして無情にもシャトルランが始まってしまった。始めの三往復は布由も余裕があったが六往復、七往復辺りになると息が上がり始め十五往復目で力尽きリタイアしてしまった。一方凛は五十往復程して終わった。その後も反復横跳び、上体起こしなどの室内種目を二人は終わらせた。


「さぁ、次は外の種目だよ。ふゆ」

「ちょっと……休憩……させて……」


 布由は蚊の鳴くような声でそう言った。


「じゃあ先に五十メートル走行ってくるね」

「うん……頑張って……」


 石の階段に座って休憩している布由は元気な凛を見送った。スタート地点に着き順番を待っている凛は、隣で一緒に走る一人の生徒のことを見ていた。


(この子、最近布由がよく眺めてる子だ。たしか名前は黒華霧(くろはなきり)さんだっけ……大人しそうなこだなぁ)


 凛がそう思っているとすぐに順番が回ってきた。そしてピストルの空砲音で凛と黒華霧は走り出した。勢いよく走りだした凛は、最初の方はリードしていたが後半になるにつれだんだんと黒華霧が追い上げて行き、ついには二人並んでゴールした。


(大人いい子度と思ったのに意外とやるんだね……)


 走り終えた凛は隣を走っていた黒華霧を見てそう思っていた。すると布由が水の入ったペットボトルをもってきてくれた。


「お疲れ様、凛ちゃん」

「ありがと~ふゆ。じゃあ、走ろうか」

「嫌だ~」


 水を受け取った凛は嫌がる布由の手を引きながら五十メートル走の場所まで引っ張って行った。その後布由も五十メートルを何とか走りきり、その他の屋外種目、立ち幅跳びやハンドボール投げをやり遂げスポーツテストが終わった。

 いつもなら放課後キリカのいる喫茶店へ遊びに行くのだが今日はまっすぐ家に帰り、最後の力を振り絞ってお風呂に入って汗を流しソファーの上で寝落ちしてしまった。

 翌日、今日は休日だが布由は激しい筋肉痛に襲われ、半日ベットの上から動けずにいた。

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