第30話 準備
「は-い、みんなおはよう。文化祭の抽選結果出たから伝えるぞー」
文化祭の出し物を決めた数日後の朝、布由のクラスの担任の小鳥遊先生が、一枚の紙をもって教室へ入ってきた。布由たちは席に座り息を飲んで、結果を聞く。
「えー、抽選の結果このクラスは飲食店を出せることになりました。おめでとう」
小鳥遊先生が結果を伝えた瞬間、クラス中は歓喜に包まれた。
「やったねキリちゃん!」
「うん、メイド喫茶楽しみだね」
布由は隣の席に座るキリカと顔を合わせながら喜びあっていた。
「それじゃあ、今日は一日準備に使えるから、みんなで協力して店の準備をするんだぞ。何かあれば職員室に来るように」
そう言って小鳥遊先生は教室を出て行った。そしてそのまま、文化祭のクラス実行委委員が中心となり、準備が始まる。それぞれ学校内の資材置き場や倉庫から使えそうなものを集め、看板や小道具の製作を始めた。布由たちは看板に付ける飾りを作ることになった。
「どう布由?こんな感じで合ってる?」
キリカは折り紙で作った花を布由に見せる。
「うん、上手にできてるよ!初めてなのにすごいねキリちゃん」
キリカの作った折り紙の花は初めて作ったとは思えないほど美しいものだった。
「キリは昔から手先が器用だったから、こういうのが得意なんだろうね」
同じように折り紙で花を作っていたフェルアが言う。一方、フェルアの作った花は形が崩れている物が多かった。
「黒華さん、文化祭で出す料理のことで相談があるんだけどちょっといいかな?」
そう言ってキリカを訪ねてきたのはクラスメイトの白川寧々だった。
「うん、大丈夫だよ」
「よかった。じゃあちょっと家庭科室まで来てくれる?」
「分かった。布由、ちょっと行ってくるね」
「うん。行ってらっしゃい、キリちゃん」
そして二人は家庭科室へ向かった。このクラスで本格的な料理を作れるのは喫茶店で働くキリカしかいないため、度々こうして呼ばれることがある。文化祭本番もキリカは料理をすることになっているのだが今は布由と一緒に装飾を作ったり、今みたいに家庭室に行って、料理の手伝いをしている。
「凛、いずみん、ちょっとフェルアちゃん借りてくね!」
「えっ!?ちょっ!?」
今度は被服室で、文化祭で着る衣装を作っている片倉玲奈が教室に来てフェルアを連れていった。きっと作った服を着せたいのだろう。
「あっという間に二人いなくなっちゃったね」
「じゃあ、二人が帰ってくるまでちょっと休憩する?」
「いいね、飾りもだいぶ作ったもんね」
残された布由と凛の二人は、ある程度、飾りを作ってから休憩を取ることにした。二人はいつものあまり人が来ない中庭に移動した。
「ふゆ、飴食べる?」
「うん食べる!」
布由は凛から包み紙に入った飴を一つ受け取り、口に入れた。すると口の中で甘い林檎の味と、どこかで食べたことのある不思議な味がした。
「ねぇ、ふゆ。もし、世界の半分が手に入ったら何がしたい?」
凛は蒼い空を見上げながら唐突ににそんな問を布由に投げかけた。
「凛ちゃんらしくない質問だね」
「最近やったゲームであったんだ、魔王が勇者と戦う前に、世界の半分をお前にやろう。って言うの」
「もし勇者が世界の半分を貰ったら?」
「バッドエンドだね。でもそれはゲームでの話。ふゆはどうしたい?」
「そうだねぇ……」
布由はしばらく考えてからこう答えた。
「色々考えたけどやっぱり、争いのない平和な世界にしたいかな。そして、月に一度ケーキパーティーを開催する!」
「ふふっ、ふゆらしいね」
胸を張ってそう答える布由に、思わず凛は笑みを浮かべる。
「凛ちゃんはどうなの?世界の半分」
「私はみんながやりたいことを制限されずにやれる世界がいいな」
凛は遠いところを見つめながらそう言った。
「ま、私は常に自由でありたいからね。さぁ、そろそろ教室に戻ろうか」
そう言って凛は立ち上がる。それに続いて布由も立ち上がり二人は教室まで帰っていった。
「あ!凛、いずみん、丁度いいところに!呼びに行く手間が省けたよ!」
「れな?どうしたの?」
布由と凛が教室に帰るため廊下を歩いていたら被服室の扉が開いて、中から片倉玲奈が出てきて、二人の手を引いて被服室の中へと連れ込んだ。そして二人はカーテンの前に置いてある椅子に座らされた。
「二人に見て欲しいものがある!それがこれだー!」
玲奈は勢いよくカーテンを開ける。するとそこには制服の上から、フリルの付いたメイド服を着たフェルアが立っていた。
「フェルア!?」
「フェルちゃん!?」
「この服、動き辛い……」
二人は驚き、思わず立ち上がってしまった。
「どう?私の力作は?」
玲奈は腕を組んで自慢げにそう言う。
「最高だよ!玲奈ちゃん!」
「フェルア、写真撮るから動かないでね」
それからしばらく、メイド服を着たフェルアの写真撮影会が行われた。
「いやー、いいものを見せてもらったよ。ありがとう、れな」
「これ、あと何着作るの?」
「あと五着、それと男子用の服が後三着かな。腕が鳴るよ!」
メイド服を作るのが楽しいのか、玲奈は笑顔でそう答える。その後ろには、きっとだんっ使用のであろう大き目のメイド服が飾られていた。
「それじゃあ、私達は教室に戻るよ」
「がんばってね、れな」
「うん、頑張るよ。期待しててね」
「待って、私も一緒に教室帰る!」
教室へ帰ろうとしている布由と凛を見てフェルアは、大慌てで、メイド服を脱いで駆け寄ってきた。
そして三人で被服室を後にして教室へ向かう。その道中に家庭科室から帰ってきていたキリカを見つけ最終的には四人そろって教室へ帰ることになった。今日は学校中どこを見渡しても文化祭の準備している生徒たちであふれていた。




