第28話 転校生
長い夏休みが終わり、学校生活がまた始まった。教室の中は久しぶりに集まったクラスメイト達がいつもよりにぎやかにしていた。もちろんそれは、布由も同じだった。
「それでねキリちゃん、そのかき氷がふわふわでおいしかったんだよ!」
布由は隣の席に座る、キリカに楽しそうに思い出を語る。
「いいな、私も食べてみたかったよ。そしてゆくゆくはお店で出してみたい……」
「なら、今度作りに行くよ!」
「本当?じゃあ、楽しみに待ってる」
キリカは嬉しそうに答える。それから、凛も教室へ入るなりすぐに布由の席に向かい、三人集まって、夏休みの思い出を語る。そんなことをしていたらチャイムがなり、布由たちの担任の小鳥遊先生が教室に入ってきた。
「はーい、みんなおはよー。早速だけどこのクラスに転校生が来てまーす」
小鳥遊先生がそう言うと生徒たちは歓声を上げ喜びの声を上げていた。
「ねぇ、布由。転校生って何?」
「うーん、簡単に言ったらクラスメイトが増えるんだよ」
「クラスメイトが増える?」
「そう!どうんな子かな……」
そう、布由も楽しみにしていると小鳥遊先生が廊下の方を向き、転校生を呼んだ。そして教室の扉が開き、転校生が入ってきた。その転校生は布由たちにとってとてもなじみ深い人物だった。
「はーい、今日からこのクラスの仲間になるフェルア・エトリアさんです」「エトリアさん、自己紹介できる?」
フェルアはコクリとうなずく。
「初めまして!私はフェルア・エトリア。ここからは遠い国から来ました。これからよろしくお願いします!」
フェルアは元気よく挨拶をした。
「じゃあ、エトリアさんの席は坂本さんの後ろの席だから」
そう言われ、フェルアは笑顔で凛の後ろの席に移動した。そしてフェルアの紹介が終わり、休み時間がやって来る。すると当然フェルアの周りにはクラスメイトが集まり、質問攻めにあっていた。
「フェルちゃん大変そうだね」
「まさかフェルがこっちの学校に来るなんて……」
キリカは頭を抱えながらクラスメイトに囲まれるフェルアをちらっと見る。
「えっ、キリちゃんも知らなかったの?」
「うん、何も聞かされてなかったから。……でも、そういえば今日の朝、やけに、ニヤニヤしながらお店に来たっけ」
今朝のことを思い出したキリカは、複雑な表情をしていた。そしてフェルアに対する質問攻めは一日中続いた。
「うはぁー、今日は疲れたよ。まさかあんなに質問攻めになるなんて……」
放課後フェルアは森の中にある喫茶店、クロネコに来ていた。
「私としては、フェルがどれだけ質問攻めにあおうが、別にいいんだけどね」
キリカはカウンターで伏せているフェルアの側に氷がたっぷり入ったメロンソーダを置く。そのひんやり冷たいメロンソーダをフェルアはストローでかき混ぜて飲む。
「そういえば布由ちゃんは?今日は来てないの?」
「うん、今日は坂本さんと出掛けるんだって」
「へぇ、凛と一緒に……寂しい?」
「べ、別に寂しくない!」
キリカは頬を赤く染めながら、照れ隠しをするように言う。
「そ、そういえばフェルはどうしてこっちの学校に来たの?」
「セレスナさんに言われてきたんだよ。魔法界の名簿から消えた誰かがこの街にいるかもしれないって」
魔法界にある中央魔法役所には、魔法界に住む人たちの名前が管理されている名簿が存在する。その名簿に書かれた名前は、普通なら消える事なく死んだ後も名前が残り続けるのだが、キリカ処刑未遂の件の後、欺瞞の魔女セレスナ・クロースとキリカとフェルアの師匠であるセリルア・ケリロが、中央魔法役所で処刑未遂を起こした人物の名前とそのつながりを調べるため名簿を見たら不自然に名前が消えている場所があったらしい。そして時間をかけて調べていく内に、名前の消えた人物がこの街にいる可能性が出てきたのだ。
「だったら私が探すでもよかったのに」
「それだと万が一の時、大変でしょ?だからセレスナさんの力を使ってこっちの学校に来たってわけ」
フェルアは得意げにそう言う。
「そっか、セレスナさんはこっちの学校で布由を見守るために校長先生、やってるんだっけ」
「愛だね」
「……それでフェル、他にその名簿から名前が消えてる人の情報とかは無いの?」
「うーん、この街にいるってこと以外特に情報は無いかな。いや、思い出した。消えた名前は名簿だけじゃなくて魔法犯罪ブラックリストからも消えてたんだった」
「ブラックリストからも!?そんな重要なこと忘れないでよ!」
「ごめん、ごめん、でも思い出したからさ。ね」
魔法犯罪ブラックリスト。それは魔法界で犯罪を犯した者の名前が書かれている物で、中でも凶悪犯罪者の名前が書かれているのがそのブラックリストである。
「魔法界の凶悪犯罪者がこの街に居るだなんて……」
「この場所の結界も強力なのに変えとかないと大変なことになるかもね」
「そうだね。ここは魔力があれば入れちゃう場所だから、どうにかしないと」
そして二人はこの場所を守る結界について案を出し合った。限られた人しか出入りできない結界、明確な悪意を持った者をはじく結界など、様々な案が出たが、どれも現実的ではなかった。
「まぁ、結界のことは追々、考えるとして。フェルは、この先こっちの学校に通って名簿から消えた人を探すわけだけど、あなたこっちに家はあるの?」
「無いよ」
その質問に迷いなく即答。
「じゃあ、毎日魔法界に帰るの?」
「いや、そんなことはしないよ。疲れちゃうし」
「だったらどうするの?……まさかここに……」
「うん、ここで暮らすよ!」
フェルアは笑顔で答える。それを見たキリカは頭を抱えてため息をついた。
「はぁ、部屋は開いてるからいいけど……その代わりここに住むならお店手伝う事!いい?」
「分かった、がんばるよ」
「じゃあ早速、着替えてきて。お店開ける準備するから」
「はーい」
こうしてフェルアは喫茶クロネコの二階にあるキリカの家に住むことが決まった。それと同時にクロネコで働くことになったフェルアだが、なんだかうれしそうだった。




