第23話 カウントダウン
「二人とも準備はできた?」
セレスナは布由とフェルアにそう聞いた。
「いつでもいけますよ」
フェルアはうなずき、布由はそう言う。夏祭りが終わり森の喫茶店クロネコに帰って来た布由たちはキリカの処刑を阻止すべく魔法界へ向かう準備をしていた。
「布由、ちょっとこっち来て」
キリカが手招きして布由を呼ぶ。その手には何か黒い布を持っていた。
「どうしたのキリちゃん」
「このローブ着て欲しいの。人間の布由が魔法界に行くなら、必要になると思うから」
布由はキリカの手に持っていた黒いローブを受け取り着てみた。
「着方これであってる?」
「あってるよ。このローブはね攻撃魔法から身を守る効果があるの。でもある程度しか防いでくれないから注意してね」
「うん、分かった。ありがとねキリちゃん」
「ねぇ、私の分は無いの?」
「フェルは自分で何とかできるでしょ?」
「確かになんとかできるけど……」
そうキリカに言われたフェルアはどこか不服そうにしていた。そんなフェルアを見たキリカは杖を取り出し頭上に円をなぞるとそこから布由に渡したものと同じ黒いローブが降って来た。
「冗談だよ。ちゃんとフェルアの分もあるよ」
「キリ!信じてたよ!」
ローブを受け取りフェルアはキリカに抱き着いた。それを見た布由はフェルアに嫉妬の眼を向けていた。
「仲がいいのは良いけど、そろそろ魔法界に行くよ」
セレスナはそう言って喫茶店の扉を開け外へ出た。それに続くように布由とフェルアも外に出る。
「今回は箒で飛ばずに魔法陣でのワープで行くからこの円の中から出ないでね」
セレスナは地面に三人が入れるくらい大きな魔法陣を描き始めた。そしてその魔法陣に一滴水を落とすと魔法陣は蒼く光る。次に炎を落とすと赤く光った。最後に風を纏わせると翠色に光り、魔法陣が起動した。
「さぁ、出発するよ」
セレスナが言う。
「行ってくるねキリちゃん」
「いってらっしゃい布由」
「……絶対助けるから!」
「うん……」
そして魔法陣の上に立っている三人を包みこむ様に風の柱が出現し、一瞬のうちにして三人は姿を消した。
「行っちゃった……」
三人を見送ったキリカは静かにそうつぶやいた。
————
「ほら、着いたよ」
そう言われ目を開けた布由の視界の先には見たこともない様な植物や空に浮かぶ島々があった。
「ここが魔法界……」
「こんな状況じゃなかったらもっとゆっくり魔法界を観光してほしかったけど、今は時間がないからまた今度ね。まずはセリルアが待ってる場所にいこう」
三人が降り立った場所は何の変哲もない山の中。そこから少し歩くとある建造物が見えてくる。処刑場だ。そして処刑場の周りにはたくさんの魔法警備隊がいる。三人はその処刑場を横目に見ながら山の中を進み一軒の小屋にたどりついた。
「セリルア、私だ。入るぞ」
小屋の扉をノックし、開け中へ入っていく。そこには椅子に座ってティーカップを持った年老いた姿の魔女セリルア・ケリロがいた。
「遅かったねぇ、待ちくたびれたよ。おや?そこにいるのは……」
そう言ってセリルアは持っていたティーカップ机に置き、ジッと布由のことを見る。
「この前話した私の孫の布由だ」
「は、初めまして、泉布由です」
布由はセリルアに自分の名を名乗る。するとセルリアはどこか思い出したような顔をした。
「あー、思い出した。キリカから話はよく聞いてるよ。初めましてわしはキリカとフェルアの師匠。セルリア・ケリロじゃ」
互いにあいさつが終わった布由とセルリアは握手を交わした。
「さぁ、二人とも挨拶は終わったし、早速これからの話をしよう」
セレスナは即席で椅子を三脚創り出し三人はそこに座った。
「まず処刑場に貼ってある結界じゃが、破壊するには三地点からの詠唱魔法が必須じゃ」
詠唱魔法。その名の通り魔法を発動させるまでに長文詠唱が必用で詠唱中は無防備かつ時間がかかるため通常では使われることのない魔法だ。ただその分威力は協力で、過去には軍事利用されていたこともある。
「詠唱魔法……どれくらい掛かりそう?」
「大体十分ほど時間がかかるぞ」
「そうか、なら急いだほうがいいな。その三地点はどこになるんだ?」
「処刑場を三角形に囲んである山のてっぺんさ。そこから詠唱を始める」
「なら早めに移動しないといけないな。それと布由、君には処刑場の中へ入ってもらう。もちろん私の偽造魔法を掛けるから怪しまれることはないだろう」
セレスナは布由の眼を見て言う。
「分かりました。でも処刑場の中に入って何をすれば良いのですか?」
「処刑場中央にある処刑台へ向かって、転送されて来るキリカちゃんを浮遊魔法を使って救出して欲しい。出来るかい?」
「やります」
布由は迷う事なくそう答えた。
「流石、私の孫だ。さっ、時間がない。今すぐ準備を始めよう。布由、これを渡しておく」
布由はセレスナから水晶玉を受け取った。
「水晶玉?何でこれを?」
「これは離れた場所からでもコミュニケーションを取ることができる魔水晶の玉さ。使い方は魔力を込めた手で触れながら喋るだけだ。何かあったらすぐに連絡するんだ」
そして布由はセレスナから偽造魔法を掛けてもらい、処刑場へと向かう。セレスナたちもそれぞれ山のてっぺんへ向かい詠唱の準備を始める。




