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喫茶クロネコへようこそ  作者: うなぎタコ


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第20話 布由の杖

「はい、これ布由の杖。セレスナさんから預かってたの。布由のための特注品なんだって」


 そう言ってキリカは布由に杖の入った箱を渡す。布由はキリカから箱を受け取りその中にある一本の杖を取り出した。


「おぉ、これが私だけの魔法の杖!」

「その杖は布由の少ない魔力量でも威力が落ちずにちゃんと魔法が発動するみたいだよ」


 それを聞いた布由は早速物を浮かせるための基礎魔法ルワトルをカウンターに置かれた、ビー玉にかけた。するとビー玉は天井付近まで浮かび上がった。


「すごいよキリちゃん!こんなに高くまで浮かせられたの何て初めてだよ」

「これなら次の魔法を教えてもいいかも……」

「本当!?やったー!」

「フフッ、じゃあ次は外に出て箒を浮かせてみようか」


 二人は箒をもって店の外へ出た。


「いい?布由、ルワトルは物を浮かせる魔法だけど飛ぶための魔法じゃないの。飛ぶために必要な魔法はルワトルにフワルトって言う魔法を重ねて唱えるの。そうしたら箒に乗って、あとはどう飛びたいかをイメージして体を動かすだけだよ」

「分かった。やってみるよ」


 布由はルワトルとフワルトふたつの魔法を唱えた。すると箒はふわりと浮かびそして、その箒が勢いよく飛んで行ってしまった。


「どうしよう!キリちゃん、箒だけ飛んで行っちゃったよ!」

「落ち着いて魔力を弱めて、こうやってゆっくり杖を降ろすんだよ」


 キリカは布由の杖を掴んでいる手を上から握りゆっくりと杖を降ろす。すると勢いよく飛んでいった箒は布由の目の前まで戻ってきた。そして布由は気を取り直してもう一度今度は少し魔力を抑えて魔法をかける。ふわりと浮いた箒布由を待つようにその場にとどまっていた。


「さぁ、乗ってみて」


 キリカに背中を押され布由は箒に乗る。そして布由はイメージする。あの日、キリカと一緒に乗った箒から見た景色、肌を伝う風の感覚、そのすべてを思い出し、一呼吸おいてから布由は地面を蹴る。布由の身体と箒はまるで風を纏ったかのように浮かび上がり布由の意のままに飛び回ることができた。


「見て見て、キリちゃん!私、飛んでるよ!」


 箒に乗ることができた布由は興奮気味になってキリカに手を振っている。

 

「あんまりはしゃぎすぎてると制御効かなくなっちゃうから気をつけてね」


 キリカは箒で空を飛ぶ布由を見上げながらそう軽く忠告する。そしてしばらく空を飛んだ布由はゆっくりとキリカの待つ場所へ降りた。


「どうだった?キリちゃん」

「意外とちゃんと飛んでて驚いたよ」

「やっぱりこの杖のおかげなのかな?」

「……そうかもね」


 布由は自分の持ってる杖を見ながらワクワクしていたが、それを聞いていたキリカはどこか遠い場所を眺め、あることを危惧していた。それは布由が自分の魔力の強さを自覚せずに布由の魔力が暴走する事だ。今となって分かる。布由の魔力の強さは異常だ。本来ならば僅かしかない布由の魔力量では空を飛ぶことは不可能だ。それなのに箒に乗って空を飛べてしまったのは、あの杖のせいだ。あの杖が布由の本来の魔力を引き出しているに違いない。それに、きっと布由は極位魔法を使えるようになってしまう。


「そうだ布由、体調は大丈夫?長い時間魔法使ったけど……」

「うーん、ちょっと疲れたかな。なんかこう何か吸い取られた感覚があるというか、なんというか」

「あー、それは魔力切れを起こしてるね。ちょっと休憩しようか」


 二人は店に戻り、キリカは布由のために冷たいカフェオレを用意した。この甘いカフェオレを嗜んでいる時間は癒しのひと時を与えると同時に、二人が物思いにふけるには十分な時間だった。


「ねぇ、キリちゃん」

「なぁに、布由」

「急にいなくならないでね」

 

 布由は空になったグラスの中の氷を回して心配そうに言う。


「急にはいなくならないよ」

「でも、あと二週間もしたらここからいなくなっちゃう……」

「でも布由が助けに来てくれるんでしょ?」


 そんな不安そうな布由を見たキリカは静かに微笑む。二週間後に迫ったキリカの魔法界への強制送還。そして処刑。それを回避するために建てた作戦。その要となるのは布由なのだ。その責任感から普段明るく振舞っている布由でもこうして不安感に陥ってしまうことがある。それをわかっているキリカは布由の頭をなで「私はここにいる」ということを布由に伝えている。


「絶対に助けるけど、もし私が失敗しちゃったら……キリちゃんは……」

「大丈夫。セレスナさんも一緒にいるんだし失敗なんてしないよ。それにわたしは布由に笑っていてほしいの。だからそんな寂しそうな顔しないで」

「うん……そうだよね」


 キリカの優しい笑顔を見た布由はパチンと自分の頬を叩き気合を入れ直す。


「よし!もう大丈夫!キリちゃん、魔法教えて!あなたを助けられるくらいすごい魔法を!」

「それならもう教えてるよ。後は布由が魔力を制御するだけ」

「じゃあ早く魔力制御できるようにならなきゃ!」


 布由は元気に杖をもって立ち上がった。そして二人はもう一度店の外に出て布由の魔法の練習を再開した。後に散歩から帰ってきたキリカの使い魔の黒猫クロは今日の森の中はいつもよりきれいで温かい魔力であふれていたと語る。


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