第17話 海に行こう
遂に始まった夏休み。布由はいつも通り喫茶クロネコへ来ていた。
「キリちゃん、お店の前に何か手紙落ちてたよ」
店先に置かれていた手紙を拾い、布由はキリカに渡した。
「誰からだろう?」
キリカは手紙を受け取って中身を読んでみる。その手紙は魔女フェルアからの物だった。手紙には今週末海へ遊びに行かないかと書かれていた。
「海……ねぇ、布由、海って実在するの?」
「いきなりどうしたの!?全然実在するよ。ここから電車で一時間くらいかかるけど」
「そうなんだ。人間界にはあるんだ」
「魔法界には無いの?」
「うん。私の住んでるところからはすごく遠くておとぎ話にしとか冒険譚にしか存在しない場所だったからあまり実感がわかなくて……」
キリカはフェルアからの手紙を眺めながらそう言った。その後布由とキリカのスマホにも凛から四人で海に行こうとメッセージが送られてきた。
「なんでキリちゃんには手紙なんだろう」
「フェルはスマホも持ってないからね」
そう言ってキリカは手紙を杖から生み出した炎で燃やした。
「海、楽しみだねキリちゃん」
「うん。でも海って何がいるんだろう。水着とか持ってないよ」
「じゃあさ、今から買い物に行かない?」
この布由の提案で二人は隣町のショッピングモールへ向かった。
「まずは水着からだね」
二人はショッピングモール二階にある水着が打ってある店に立ち寄った。お店の中には目を引くような水着がたくさん展示されていた。
「キリちゃんは水着どんなのが良いの?」
「なるべく露出の少ない物が良いな。露出が多いと恥ずかしいから」
「じゃあワンピース系の水着かな。あと、上から羽織れる大き目のラッシュガードがあればいいかな」
布由はさっそくキリカに似合う水着を探し始める。
「あっ、これとかいいんじゃない?試着してみる?」
無数にある水着の中から水色のワンピース型の可愛い水着を手に取り、キリカに見せた。
「うん、ちょっと着てみるよ」
布由から水着を受け取り、試着室へ入っていった。
「布由、着てみたけど、どうかな?」
試着室のカーテンを開き布由に自分の水着姿を少しは恥ずかしそうに見せる。
「最高だよキリちゃん。とっても似合ってるよ」
「ちょっと恥ずかしいけど布由がそう言うならこれにするよ」
そしてキリカは布由に勧められた水着を購入した。その後、二人は服屋へ向かった。というのもキリカは外出用の服が少ないためこうして布由と出かけた際に服屋へ寄るようにしているのだ。
「今日はどんな服を見るの?」
「海に行くから、それ用の服かな」
「じゃあ、色々見てみるね」
そして布由は悩みながらもキリカの服を見繕い始めた。
「ねぇ、布由これはどうかな」
キリカが持ってきたのは白のワンピースだった。
「お!いいじゃん。キリちゃん着てみる?」
「いや、私じゃなくて布由に似合うかなって……」
「ふぇっ!?」
突然のことで思わず変な声が出た布由。一方キリカは照れくさそうな顔をしている。布由は驚きながらもキリカからそのワンピースを受け取った。
「着てみて」
「うん」
布由は試着室へ入りキリカの選んだワンピースを着た。そしてそれをキリカに見せる。
「ど、どうかな」
「可愛いよ布由」
キリカはニコッとした笑顔を布由に向ける。その笑顔に布由はドキッとした。
「ずるいよキリちゃん……」
布由はポロッと言葉を漏らす。
「どうしたの布由?」
「なんでもないよ。キリちゃんが可愛いって言ってくれるならこれ買おうかな……」
うれしそうな布由はそのまま白いワンピースを購入することにした。
「次はキリちゃんの服だけどこれ着てみて」
そう布由が手渡したのはオフショルダーブラウスを渡し、試着してもらった。
「ねぇ、布由。この服、肩が出て恥ずかしいんだけど」
「そういう服だからね。それに水着だって肩からいでるじゃん」
「水着は上から羽織ってるからいいの!」
「まぁ、可愛いからいいんじゃない?それに、キリちゃんにはもっとこういう服を着て欲しいな」
「……じゃあこれにする」
二人はそれぞれ服を買いショッピングモールの中を歩いていた。
「ねぇ、キリちゃん。あれってあそこにいる人ってもしかしてフェルアさん?」
「あ、本当だ。フェルだ」
「あ、奥の方に凛ちゃんもいる」
布由の視界の先にはフェルアがアクセサリーショップの前に居た。そして店の中には布由の親友、坂本凛も居た。
「二人も何か買いに来たのかな」
「まさかこんなところで出会うなんて」
「なんか楽しそうだし邪魔しないように帰ろうか」
「うん、そうしよう」
こうして布由とキリカの二人は買い物を終え、森の中の喫茶店クロネコへ帰っていった。
「結構色々買っちゃった」
布由とキリカは自分たちの服や水着以外にもビーチボールや水鉄砲などを買っていた。
「海、楽しみだね布由」
「うん、楽しみ。海行った後も二人でどこか行ってみたいね」
「それなら今度魔法界に行ってみない?」
それは布由にとって思いもよらない提案だった。
「行きたい!行ってみたい!」
「分かった。でもそれまでにやらなきゃいけないことがあるの。それに布由にもやってもらうことがある」
「キリちゃんと魔法界に行くためなら何でもやるよ」
「じゃあ、布由にはこれから魔法界に行くまでにくさん魔法を覚えてもらうから頑張ってね」
「うん!頑張るよ」
こうして布由はキリカと魔法界へ行くために魔法を覚える決意を固める。そしてその日の夜、喫茶クロネコでキリカとその使い魔の黒猫クロが話をしていた。
「あなた本当にあの人間を魔法界に連れて行くつもりなの?」
「うん。一度お師匠様に紹介しておきたいの。その方が何かあった時頼りやすいからね」
「そう。あの人間をこちら側に引きずり込むのね」
「布由に魔法を教えるって決めたときに、一緒に覚悟も決めたからね。布由を守るって」
こうして夜は更けていき一日が終わるのだ。




