狙うはただ一人
新年一回目。
「将軍、勇者たち門の前まで来ました!まもなく攻撃されます」
「よし、魔王様があらかじめ奴ら中にいる回復役は弱らせてくださっている。そいつを集中的に狙え!」
「しかし、そうなると他の奴らに押されます!」
「なあに心配するな、勇者は俺がひきつける。お前たちでやればいい。派手にやれ。俺だって勇者相手だと
そんなに長くはもたん。なるべく早かく、回復役の守りに集中するように仕向けんとな。ついでに魔王様から策を授けられている。『試してみろ。これで上手く行けばいいが、失敗したら後は好きにしろ』って言われているのでな、ちょいとやってみるか」
「とりあえず正面に魔族はいないな。このまま突破するか」
「そうですね、見張りもいないようですし。この門の様子なら勇者様の攻撃であれば簡単に突破できるでしょう」
「村から奪われた食料についてはどうする?」
「何処にあるかも分かりませんし、探している間に攻撃されても困ります。第一、見つけたとして我々だけで
村まで運ぶのは手が足りません。ここの魔族をせん滅した後で、村人たち自身で運んでもらうべきでしょう。
そうなると作業中の安全を確保するためにも、我々の手でこの砦を落としてしまった方が良いでしょう」
「分かった。では皆、準備は良いか?」
「はい!」
「いくぞおおおおおおおおお!」
「まてええええええええええい!」
「は?」
「お前が勇者か!」
「何だあれは?」
「さあ…とりあえずあの門の上に立っているという事は、魔族なのでしょう。それにしてもあんなふうに
堂々と立つとはバカなのでしょうか?」
「そうだ!俺が勇者だ!」
「そうかそうか、俺はこの砦を預かる魔族の将軍だ。愚かにもこの砦を攻撃しようなどと考えるバカ勇者が
いると聞いてな、せっかくだから首だけの姿になる前に声だけでも聞いてやろうと思ってな。それにしても頭もバカなら顔もバカだな」
「ふざけんな!」
「そうです!勇者様ほど素敵な方はこの世にいません!」
「なんだ、バカなのは勇者だけかと思ったが仲間もバカだったか。これは楽ができそうだ」
「舐めやがって…」
「ほう、舐められてる事が分かる程度には頭がいいらしい。まあ猿にでもわかる事だから、どうやらバカ
どころか猿並みの頭しかないらしい。こんなところで遊んでないで山に帰るんだなお猿さん?」
「ふざけやがって…!」
「何だ怒ったか?」
「当たり前だ!」
「そうかそうか、それは良かった。何しろこれで怒らない奴なら猿語で話してやらねばならんからな。キーキー!」
「殺してやる…絶対に殺してやる…」
「そうかそうか、猿に殺されてはたまらんからな、ここは逃げるとしよう。悔しかったら門でもぶった切ってくるんだな!」
「くそがああああああああああ!」
その瞬間、本当に門がぶった切られて土煙と轟音が辺りを埋め尽くした。
「本当に切りやがった…まあ、それで良かったんだがな。ほれ、やっちまえ」
「は。総員構え。撃て」




