第6節 お母さんは誰
再び帰り道についた、似萍はすこし疲れたから、お母さんに抱っこされるまま寝込んだ。お母さんは依然として喜んでやみません、ずっと歌をつぶやきながら、時々似萍の顔や髪、白い首にキスしている…お母さんにどうされても、娘の似萍はいつも微笑んでいる。
馬は朗らかに走っていて、数本の河を渡って、ジャングルを出て、もうすぐ家に着くよとお母さんは言った。
そう言われた途端、似萍は突然体が震えて、硬くなった。
戸惑うお母さんは似萍の目線に沿って前を見ると、陳新がいるとわかった。人影を見かけない荒野に、彼は幽霊のようにひっそり現れ、馬に乗っているが、微動だにせず、木の陰に隠れて、背後にある坂の怪石と一体になって、近付かないとなかなかわからない。彫刻のような彼は、とても冷たい目付きでその2人を見つめている。
似萍は本能的に怖くなり、お母さんの手を繋いで、「母さん、早く行こう」とつぶやいた。
しかし意外とお母さんは似萍に怖くないよと言って、陳新に向かった、近付いて馬をとめた。お母さんが話す前に、無意識に散乱した髪を整えていたと似萍は気づいた。しかし、陳新はずっと2人を見つめていたが、2人が近付いてきたことがわからないように陳新はお母さんをむいてこない。
「おっ、ここで会えると思わなかった、どこから来たの?姉に会いに行くなの?」とお母さんは聞いた。お母さんの話が終わっていないうち、陳新は目をかっと開いた。その様子を見て、お母さんは話を続けなかった。その一瞬、お母さんがほとほと困り果てた表情をしたが、機嫌を取ろうと笑っているのを似萍は見た。
陳新は冷たい目付きを似萍に向けた、似萍もどきどきして、頭をさげて手にある花をいじっている。
お母さんは話題を変えて、今日にあったことを陳新に話したが、陳新は依然として話さない。
陳新はお母さんを相手にする気がない。しかし、お母さんがどうしてその空気を読んで去っていかないのかは似萍にわからない。お母さんは去らないどころか、話をしようとして、気分が高まったら、自分を母さんと呼んでくれたことも話したら、恥ずかしく頭を下げ、似萍の顔と触れた。似萍はお母さんの顔は再び赤くなり、朝の雲のようだ。
陳新はそれを聞いて、顔色が急に変わった、馬をかけて2人に向かった、眉を顰めていた顔に血色がもっとなくなっている。
似萍は本能的に避けようとしていたが、馬の上に、お母さんに抱かれているから、動けなかった。
陳新は2人の前に来て、パチッと鞭の音がして、似萍が持っていた花が半分落ちた、再び音がして、手に残った花も落ちた。
「悪い人、どいてっ」似萍はあまり怒った。
しかし、似萍は悲鳴を上げたが、むちに散々打たれて、もっと大きな声を上げた。
「陳新、何をしてるんだ」不意打ちされたお母さんは驚きのあまりに叫んで、馬の立つ方向を変えて、体で似萍を守った。
「陳新、どうしたの、あなたのむすめだよ」とお母さんは叫んだ。
黙りこんでいる陳新はそれで止まない、むちが左から右へと、毎回、間違いなく似萍の身に落ちて、彼女は痛くて叫び続けている。悲惨な場面は馬を驚かして、急に前の馬蹄を引き上げて、2人を転がした。
陳新は再びむちを振ってきた。しかしお母さんは今度こそ、怒って、陳新を馬から引っ張った、むちを奪って、ひざでふといむち棒がぱかっと折れた、それは一般人ができないことだ。
お母さんはむちを遠く捨てて、陳新に似萍が間違っても、無辜だ、お父さんとしてそんなことをできるのかと言いつけた。あまりにも怒っていて、お母さんは話しを続けられなかった。
ひどく転んだ陳新が痛みを我慢して、ゆっくりと立ち上がった、お母さんをびっくりした目で見て、先のひどい目付きがなくなった。とぼとぼと自分の馬に向かって、頑張って馬に上ったら、再び凶悪な顔付きを表した、お母さんをしばらく見つめたら、「お前のカンフーが俺より強い、お前と戦っても負けるとわかってる。でも俺にわからないのは、お前どうして結婚しないか、あいつがお前を母さんと呼んでもらえたら、俺がお前を嫁にすると思ってるか。覚悟しろ、俺は今も永遠もしないぞ。早く方法を考えて、早めに結婚して自分の子供を生めば?あいつは…」と陳新は似萍を指しながら、言った、「あいつにはお母さんがいるぜ、まだ生きてる、遠い山の上に」と指が遠い山を指した。「本当のお母さんは来てないのもあいつのせいだ。だから、あいつはお母さんを怒らせちゃだめだぜ、少しでも。だから、あいつがまた他人を母さんと呼んでると聞いたら、一声でも、許さんぞ。わかった?」最後の一言を似萍に言いつけた、話が終わったら向こうの答えも待たずに、馬に乗って去っていった。
「陳新、陳新…」お母さんは慌しく叫んで、追いかけようとしたが…
去っていった影を見て、お母さんは呆れた。
どのぐらい立ったかわからないが、お母さんは動かなかった、目が陳新が消えたところを見つめている。
しばらくして、冷たく感じた似萍はゆっくりとお母さんの前に近付いた、頭を上げてお母さんが正気を取り戻すのを待っている。お母さんは長く立っても、彫刻のようにいた。
似萍は我慢できず、小さい手でお母さんを揺らして、「母さん、家に帰ろう、いい?」と恐れ恐れに聞いた。
2人は再び帰り道についた。
今度は歌声が消え、単調な馬蹄の音しかない。
突然、一滴の水が似萍の首に落ちた、そしてもう数滴が。
似萍は頭を上げて、お母さんが黙々と涙を流しているのを見た。
お母さんはどうして泣くの?その人は悪いから、去って行ってよかったじゃない、その人のために泣く必要がないだろう。お母さんを慰めようとしたかったが、なにを言ったらかがわからない。
「似萍…似萍…」どれぐらい立ったかわからないが、お母さんはようやく話し始めた。
「かあさん、私、聞いているよ」
「似萍、これから、う母さんと呼ばないで、張おばさんと呼んでもらっていい?あなたは私の生まれ子じゃない、私も似萍ちゃんの実母じゃない」とお母さんは泣きながら言った。
「おう、かあさん」似萍は悲しく泣いて止まなかった。
目の前の人は誰なのか、どうして前の両親は肉親じゃない?どうしてその人も自分の本当の母さんじゃない?自分が一体誰の子供だろう…
どうして昔の家にいたのか、昔の両親はどうして育ててくれた?育ててくれて、愛してくれて、どうして他人につれてもらった?自分が何か間違いして、嫌がられたのだろうか、どうしてそのすべてのことを教えてくれないのか。
自分の実父がどうして自分のことを恨んでいるか。初対面のときに、彼女が実父を噛んだからだろうか。子供だから、許してくれないのか。一体、その人は本当の実父だろうか。どうしていつも凶悪な顔を見せてくれるのか。どうしていつも彼女を食おうとする表情だろうか。その人が言ったように、自分が何か間違いしたのか。彼女が子供だから、何か許せない間違いできるのか。
どうして実母はその女性じゃないのか、その女性は彼女に優しくしてくれているのに。母さんとよんでくれと聞かれ、彼女も本当の実母かどうかにも関わらず母さんと呼んだ。自分に優しくしてくれるなら、実母となるのだ。しかし、陳新は女性を母さんと呼ぶのを止めたら、その女性も彼女に呼ばせないのか。どうしてその女性はそんなに早く変わったのか。女性はどうして陳新の話にしたがっているのか。女性は陳新のことが大好きみたいで、本当にそうだったら、いつも陳新の前に彼女のことを守ってくれるのか。ある日、守ってくれなくなったらどうしよう。
実母から守ってもらいたかった。そうじゃないと…
しかし、実母は誰だろう。どこにいるのだろう。実母がまだ生きていると陳新は言ったが、どうして自分と会いにきてくれないだろう。どうしてみんなから話してくれないだろう。
どんどん戸惑ってくる彼女は自分が必ず何か間違いをしたと信じた。そうじゃないと、本当のお母さんは構えてくれるのだ。こぼれた涙から、積雪の山を見て、心から本当のお母さんを叫び出している「母さん、どこにいるの、どこ?」
「母さん、どこにいるの」
自分はお母さんがいなければ、死んでもいい。
「母さん、早く来て、母さん…」
それから、彼女は自分の実母をその積雪の山と繋いだ。




