6 騎兵隊
「主様お逃げ下さい」
「うん、俺も逃げたいけどこれ完全に囲まれてるよね…」
3日後に現れたのは商隊ではなく、騎兵隊の大隊だった。
良くもこんなに短期間に集まったものだと感心するほどに村の周囲をぐるりと囲んだ騎兵隊。
俺は獲物の山を背後に必死の抵抗を試みる。
「これは騎兵隊の皆様、本日はいかがなされましたか?」
「商人ギルドより異常な収穫をしている辺境の村があると報告があって調査に参った」
鉄仮面により表情は見えないが、冷たく底冷えする言葉に暗い未来が見えてきた。
「村総出で必死になって狩りました、設置した罠と猛獣に追い込まれた鹿が運良く罠に次々にかかったという幸運もありまして、今回は商人様が驚くような成果に本当にたまたまなっただけなのです」
「ほう、ずいぶんとスラスラと言葉が出るものだな。なぜ安全な作物の収穫を捨ててまで狩りに没頭した」
「いえ、作物の収穫もしっかり行いました、獲物の山に隠れて見えずらいかもしれませんが、しっかりと収穫もしております」
「なに?狩りだけでなく収穫もしただと?お主、先程は村総出で狩りをしたと言ったではないか!」
「はい、日中は狩りを行い、夜は収穫を行いと、偉大なるエルス王に少しでも税を納められればと思い必死に頑張った結果でございます」
「そのわりには、昼夜を問わず働き尽くしたとは思えん程に村人達の顔は健康そのものだが…」
「豊作と大きな狩りの成果により、休暇も取れましたし、なにより食料の問題もほとんどなかったので、お陰様で皆健康に過ごしております」
「確かに傷だらけの村人が目立つな…衣服も返り血なのかどす黒く汚れている者が目立つ」
「皆必死に頑張りました故に…」
「ご苦労だったな、話は分かった、確かにこれだけの成果だ、特別な褒美も与えられるかもしれん、全員首都テンレシアに同行してもらう」
「い、いえ!褒美などは結構でございます、エルス王のお役に立つ為に、作物の収穫を続けなければなりませんし…」
「遠慮するな、これだけの収穫だ、今後1年近くはこの村から税などはいらんだろうし、お前たち全員がしばらく暮らせるだけの褒美も出るだろう、何よりもこれだけの働きを短期間でこなすお前たちの労働力の秘密をエルス王に報告しなければな」
鉄仮面から除く口元に笑みが浮かぶ、どうあっても俺達を連れて行くつもりらしい。
労働力の秘密が明らかになれば訪れるのは眷属達及び俺の殲滅であろう。
「分かりました、旅の準備を整えますので、30分ほどお時間をいただけますでしょうか?」
「分かった、それまでに、この獲物や収穫した作物の積み込みは終わらせておく」
俺達は、村の中心の比較的大きな家に集まり、旅の準備ということで武装を始めた。
家の中は眷属でギュウギュウ詰めになっている。
「主様いかがなされますか?」
「包囲を破らねば、我らに明日はない。こちらの人数は俺も併せて72人、相手はざっと300人近い騎兵隊だ、普通に考えれば勝ち目はないかもしれない、だが、俺達は殺害した敵を眷属化して仲間に加えることが出来る、だからとりあえずは一点突破で敵を数人でも倒していこうと思う」
「分かりました」
「全員、武装は大丈夫か?」
「大丈夫です」
「では、ドドリスが先頭を行け!出陣!」
完全武装した眷属を引き連れドドリスが駆け出していく。
向かうはエルニアの森、森の中ならば騎兵隊の機動力も発揮できないだろう。
!!
完全にこちらの行動を予想されていたのか、騎兵隊の陣形が森を守るように組み替えられている、ドドリスを先頭に突っ込む眷属たちを包み込むようにして、槍を手にした騎兵隊が突っ込んで来る。
「こいつら!突き刺されても攻撃してくるぞ!」
「伝説の死霊使いの技かもしれん!火魔法が使えるものは焼き払え!」
「頭だ!頭を狙え!」
「負傷者は、後退!治癒術班に治療してもらい戦線復帰せよ!」
「死人は出すな!軽微な傷でもすぐに治療せよ!」
槍に跳ね上げられ、突き刺され屠られていく眷属たち。
槍のリーチと馬上からの攻撃に、騎兵隊を一人も殺すことが出来ずにいる。
攻撃を与えたと思うとすぐに後方に下がってしまい、殺害までにいたらない。
「ウオオオオオオオオ!!!!」
雄叫びを上げて突っ込んでいった俺に数本の槍が迫ってくる、一本をなぎ払い、一本を交わし、もう一本が目前に迫りブチャァァァァ
リトライ
<YES>
<NO>
ああ、ここの仕様は変わってないらしい
<YES>←
ピコッ
俺は森の中に倒れていた。相変わらずの全裸だった。
鬱蒼とした森の中、この数日狩りに駆け回った見覚えのある獣道、罠の跡、どうやらエルニアの森に再度現れたようだ。
さて、どうしたものかね…
とりあえず、野盗の洞窟にいくらかの備蓄があったはずだ。
野盗の洞窟は、騎兵隊に発見されなかったようで、出発した時のまま放置されていた。
村人達が狩りの拠点にしていた為に、武器や防具、衣類や、燻製にしている途中の獣の肉などが数点あった。
それらの中から役に立ちそうなものを選び出し袋に詰め込み、衣服を整えて港町ネシアに出発した。




