3 村
ルゴックが戸を叩く。
「だぁだずげでぐでぇぇぇ」
ドンドンドンドン
「ざんぞぐでぇぁぁぁぁだぁだずげでぐでぇぇぇ」
名演技と言って良いだろう。
血まみれで必死の形相で戸を叩くルゴックは、演技だと知っている俺でも助けてやりたくなってしまうぐらいの名演技を闇夜の辺境の森の集落の一番端の誰もいない戸の前で繰り広げていた。
「だぁだずげでぐでぇぇぇ」
ドンドンドンドン
「だぁだずげでぐだぜぇぇぇ」
ドンドンドンドン
留守なのか?
あまりに迫真の演技で逆に驚かせてしまったのか?
血まみれのルゴックの迫真の演技も虚しく誰も出て来ない。
「ほえ?」
「だぁだずげでぐでぜぇやぁぁぁ」
「お前さん、ここで何やとる?」
いつの間にかルゴックの背後から腰の曲がった婆さんが近づき話しかけてきた。
「ざんぞぐにおぞわれたんだぁぁぁ」
「ああ?なにぃ?」
「やどぉにおぞわれだんだぁぁ」
「あんだって?あんれオメェさん傷だらけでねぇか!!だいじょうぶけ?」
「いでぇ!だずげでくでぇ!」
既に耳が遠くなっているだろう婆さんとルゴックの会話が咬み合わない。
「んだどもオメェさんが叩いてる家はだいぶ前から空き家になっちょる、オラの家さ来て怪我の手当しなっせ」
「ありがでぇ!たずげてぐぜぇ」
「んだ、こっちゃこい」
家に案内してくれるのだろう、振り返った婆さんの後ろ姿にルゴックが隠し持っていた短刀が突き刺さる。
ズムッ
土に頭部を軽くめり込ませながら鈍い音を立てて倒れこむ婆さん。
<婆が眷属になりました>
集落の住人で一番警戒されないだろう婆さんが眷属になったようだ。
とりあえず、ルゴックと共に一度森に呼び寄せていろいろと集落の情報を得ることする。
「婆さん聴こえるか?」
「ああ?」
「俺が誰だか分かるか?」
「主さん、もちっとおっきい声で話してくれや、もしくはもちっと近くで話してけろ」
「婆さん!集落の空き家は多いんか!?」
俺は婆さんの耳に口を付ける勢いで大声で質問した。
「あー、半分は住んでねぇだ」
「どの家が空き家かは分かるか?」
「そりゃみんな家族みてぇなもんだからな」
「それぞれの家を案内してくれ」
「主さんの頼みは断れねえだ」
「じゃぁ、ルゴックとドドリスを一緒に連れて行ってくれ」
「いいだよ」
ルゴックとドドリスが婆さんの後について行く。
トントン
「あー誰だこんな時間に?」
「オラだよ」
「あ?五郎のとこの婆さんか?また夜中に徘徊してるんか?」
扉を開けたと同時に、顔を出した家の主人を袈裟斬りで切り捨てる。
「はぐああああああ」
驚いて家人が玄関に集まる。
「あんたどおしたんだい?」
「とおちゃんどおした?」
そして、振り返った主人が衣服を真っ赤に濡らしゆっくりと床に倒れこむと同時に侵入してきた完全武装の屈強な男2人と綺麗な細剣を持った婆。
大人や青年などはドドリスとルゴックが、子供や老人は細剣の婆が始末していく。
家から逃げ出した場合に備えて野盗1〜10で家の周囲はぐるりと囲ってから戸を叩いているので、結局空き家以外の10軒を虱潰しに戸を叩いて回った中で、家の外まで逃げ出せた人数は3人。
煙突から逃げ出した少女。
床下から這い出てきた少年。
斧を振り回しドドリスを突き飛ばし出てきた木こりの男。
いずれも武装済みの野盗10人で取り囲んで眷属とした。
集落全域を殲滅するのに2時間もかからなかった。
婆 8人
爺 5人
ガキ 20人
村男 12人
村女 14人
合計 59人
2世帯で住んでいる家もあったので、新しい眷属としてはこの59人が加わった。
野盗が全部で12人なので眷属は71人になった。
ある集団の中で初の一人をどうにか鹵獲すれば、集団の残りの人々は、知り合いからの不意打ち的な攻撃を受けるわけだから、ある程度の数まではそうやって増やしていける気がしてきた。
翌朝、日が開けると共に、俺達71人は連れ立って近くの川で衣服の洗濯と身体の洗浄を行った。
老若男女入り乱れて川で素っ裸で行水する姿に驚いた通りがかりの行商人を全員で囲んで眷属化した。
眷属数に変動があった場合は、最後に一覧を載せようかと思います。
野盗 12人
婆 8人
爺 5人
ガキ 20人
村男 12人
村女 14人
行商人 1人




