13 イクイゴ
南の地で「ダンジョン落とし」のイクイゴの名は知れ渡っている。
ダンジョン攻略の依頼を多くこなし、数々のダンジョンを攻略、だが、その二つ名の由来は、ダンジョン攻略をきっかけに様々な手練手管で依頼側の地域にいる美女達を虜にする美男子のダークエルフがいるとの事だった。
その漆黒の髪と鋭く光る目線、冷たい印象とは裏腹に女性の扱いに長け、数々の女性を魅了してきた。
その南の地のスケコマシ代表のような男が今、この町に来た。
「突然、無礼な事を言ってすまなかったな。ちょっと、あんたの器量を試させてもらったぜ、ダンジョン攻略は危険な仕事だ、報酬だけじゃなく、後方の地域支援など的確に行われるかも確認しておきたくてな。領主のあんたの器量も合わせて試させてもらったってわけだ。それにしても、噂に違わぬ堅物っぷりだな。若くして領主になる厳しさ、その中で洗練された心の持ち方、たいしたもんだゼ。だが、そんなに肩肘張ってると見えるもんも見えなくなるし、苦しい時に頼る相手も離れていっちまうゼ」
「ご忠告痛み入る」
「ま、報酬の件は、全部が試すためって訳じゃなく、本気であんたと一晩過ごしたいとは思っている。正式に申し込みさせてもらう、返事は急がない、俺はしばらく町に滞在するから、気が変わったらいつでも声をかけてくれ」
とんでもない事を言っているが、どこか少年らしさの残るダークエルフの笑顔は、こちらの毒気を抜くほど爽やかだった。
「気が変わることは無いと思うが、町に滞在するのであれば、ゆっくりと過ごすが良い」
ルロエ様は、イクイゴの揺さぶりにもまったく動揺せずだ。
ん?
若干、良く見ると耳が赤くなっている。
無礼な言動に表情や態度は動揺を抑えられた様だが、わずかばかり心が揺れたのだろうか?
こういう無礼を働く輩が、過去ルロエ様に近づく機会は無かった、こんな非常時でなければ対面すら許されるわけも無い、免疫無き故のささいな動揺かもしれん。
「情報によれば、200匹ほどの魔物の斥候だが、衛兵も苦戦するような強さだったらしいな。俺の経験から忠告だけはしておくが、今回のダンジョンはかなりの深度と強さを有しているだろう。斥候を殲滅せず、帰してしまったって事は、必ず回復してまた攻撃をしてくるな。一番多いケースとしては、斥候は衛兵に殲滅されて、入り口を発見されたダンジョンは数百人の攻略者による数で攻略するか、俺のような熟練の攻略者が少数精鋭で攻略するかのどちらかだ。ところが、斥候がその強さってことは、正直なところ、ちと俺たち6人でも厳しいダンジョン攻略になるかもしれん。報酬が見合うものでなければ命がけで潜るのは考えちまうというのも本当の話だ」
「それほどの状況なのか?」
「まぁ、俺の短い経験による推測だがな」
人よりは長寿のダークエルフ。
その短い経験というのも数十年数百年に及んでいる可能性も充分にある。
ギルドを通して出す攻略依頼の報奨金を引き上げる事も視野に入れねば。
「忠告、しかと聞き受けた。まずは、数と体制を整え万全の攻略体制を整えようと思う」
「ああ、用心に越した事はないぜ。俺はこれからコイツらに、俺からの報酬を前払いしなくちゃならねぇ、居住区の一番大きな宿屋にいる」
「そうだよ、ま・え・ば・ら・い」
小柄な赤い髪のドワーフ女性がイクイゴの後ろから抱きつく。
「よろしくねぇ。楽しみだわ」
緑の髪の儚げな美少女がイクイゴの手を引いて退出を促す。
「じゃぁ、気が変わったら連絡くれよな。この町の夜の薬、南の地でも大人気だゼ。今夜は存分に飲まさせてもらうゼ」
美女達に囲まれながら退出していくイクイゴが、ネコ耳のしなやかな身体の女性を抱き寄せながら言い放ち退出していった。
「夜の薬?何の事だ?」
「さぁ、何の事でしょう?」
ルロエ様の質問に、俺はそう答えるしかなかった。
例の治療薬、健康体で摂取する事により、生殖能力が異常に増すという話を思い出しながら。




