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外道の道も本能故  作者: モロモロ
第一章
14/90

14 イクイゴ

ドゴオォォグアァァァンドッガアァァン


突然の轟音に寝間着のまま窓辺によると居住区の方が火の海だった。

鳴り続ける轟音の中、火の海の中に浮かぶ恐ろしい影、天に届くかの様な巨人が髪を振り乱し暴れている。

急ぎ着替え、ルロエ様の元に向かう。


到着すると領主の館は上に下への大混乱に陥っていた。

あの冷静沈着なルロエ様がその中心で泣きそうな顔で采配を行っている。

昨日の今日でこの惨状だ、あまりにもダンジョン側からの攻撃が性急すぎる。

しかも、農業区からではなく、居住区からの突然の襲撃。

あれだけの巨大な魔物がどうやって?

様々な疑問が浮かぶが、今はクロエ様のサポートに徹するのみ。


「遅れて申し訳ありません」


膝をつきクロエ様の前に進みでる。


「おお、マネスか、待っておったぞ」


「状況は?」


「芳しくない、全衛兵をもって対処するように伝令を出したが、昨日集まった討伐者の多くが、居住区の宿にいるはずだ。その者達と協力し、あの魔物を撃退することが先決だ。とにかく、資金などの心配は後だ、打てる手は撃ち尽くし、早急にダンジョンも殲滅する必要がある。このダンジョンは危険すぎる」


「はっ!では、費用をさらに引き上げ、近隣でもトップクラスの討伐者に転移魔術師を飛ばし交渉にあたらせます」


「頼んだぞ。マネス」


俺は、夜明けまで転移魔術師の手配と、その交渉のサポートに徹した。

状況を説明すると、色好い返事をしていた討伐者達も途端に口を濁す。

それほどのダンジョンなのか?




「失礼する」


執務室にルロエ様が入ってきた。

この数日で瑞々しかった肌がボロボロだ。

白い肌ゆえに目元の隈が痛々しい。


「なんとか巨人を撃退することが出来た。あと一歩で巨人を倒せそうなところで、ダンジョンから大量の魔物が襲ってきてな、倒すまでにはいたらなかった・・・今回の被害者たちの敵討ちを果たせなかったと衛兵たちが悔しそうに報告してくれたわ」


「さようですか」


「これから、居住区の被害状況を確認に行く。資金面での援助もかなり必要となるだろう、マネスにも現状把握をしてもらいたい同行を願う」


「かしこまりました」



居住区の惨状は酷いものだった。

綺麗に整えられた町並みが見る影もなく、瓦礫と焼け跡、そして異臭がたち込めていた。

人々の表情にいつも浮かんでいた笑顔は、悲しみと絶望の表情に塗り替わっている。


治療院へと入ったところで一際大きな声が聞こえてきた。


「ミミア!ミミアァァッァ!!」


声のする方を見ると、緑の髪の美少女と金髪の美女が、傷だらけの猫耳の女性に治癒魔法を施しているところだった。

その足元で猫耳の女性に縋るように泣き叫ぶ男。


イクイゴだった。

全員が、半裸のような格好で傷だらけ煤まみれで猫耳を囲む。


「ウオオオオオッ!!!!」


イクイゴの身体が光を発する。


「それ以上は危険だよっ」

赤い髪のドワーフの女性が止めようとする。


「止めるな!約束したんだっ!」


「ダークエルフが治癒の力を使う事に無理があるのは分かるだろう?」

ダークエルフの女性が悲しげな表情でイクイゴに忠告する。


「分かってるさ、分かってるけど、俺は、一人だって欠けさせやしねぇ!ウオオオオオァアァァァア!ミミアァァァァ!!!戻ってコォォォイイイィィィ!!!」


イクイゴを包む光が強くなる。

猫耳の女性の傷が見る間に癒えていくのが分かる。


「イク…イ…ゴ…………」


ミミアと呼ばれた猫耳の女性が口を開いた。


「ミミア!ミミアァア!!良かった!ミミア!もう離さねぇぞ!」


猫耳の女性を抱きしめるイクイゴ、その顔は慈しみの眼差しが印象的だ。


「嬉しい。ありがとうイクイゴ、これからもみんなをよろしくね。私は一緒に旅を続けることは出来ないけど、今までたくさんの楽しい思い出、本当にイクイゴには感謝してるんだよ。大好きだよイクイゴ」


涙を流しながら感謝の言葉を述べるミミア。


「何言ってるんだ!なぁに、一ヶ月も休養すれば、また旅出来るようになるさ。急ぐ旅でも無い。のんびりとミミアが元気になるまで待つさ。焦らずゆっくり治せよ」

イクイゴの表情にいつもの笑顔が戻った。

その笑顔に大量の血液が振りかかる。

血まみれの笑顔で固まるイクイゴ。


塞がれた傷口が再び開き、全身血まみれで力なく横たわるミミアからは生命の息吹が感じられなくなっていた。だが、その表情は満足したかのように微笑をたたえていた。


「ウオオオオオオオオオオアアアアアアアアア!!!ミミアアアアア!!!」


次の瞬間、全身を強く発光させたイクイゴが気を失った。

ミミアは微笑をたたえ横たわり続ける。


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