第59話 妖怪VS怪人
「それで、いつまで続くの?」
「もう少し見たいよ」
ただ今、暗闇はそれぞれ2組に分かれて、車で目的の場所に向かった。
まずミヤト達A班は盗賊団アジトの正面付近で待機し、野田達B班&ホルはその周辺の森でアジトを見張るのだった。
「ところで、アンタ達なんかさっきから空見上げてるけど?」
「なんだよ…空を見ちゃダメなのかよ?」
「別に、なんでも良いけど」
[[どうか…気付かないでくれよ…]]
野田とホルは心配そうに空を見上げながら祈っていたがその理由は。
「良し、野田さん以外はバレてないね!」
ソロリックがアーマースタイルで上空を飛びながら、野田達の車を追っていた。
しかし始めて空を飛ぶ事もあって、色々とギコチなく墜落しそうになったりしたけど、なんとか慣れてきた。
「よし、もう少しで目的の場所に着くみたいだ…」
「そうね。全員気を引き締めてよね」
5人が緊張感高めていたその時。
「止まって!」
「えっ!?」
レーグラスがなにかに気付いたので、すぐダイゴに車を止めるように言う。
驚きながらも急ブレーキした。
「うわっ!なんだ!?」
「いきなり止まるなよ!?」
「黙ってて!降りて」
言われるままに車から降りた。
だが、車から出た途端に強い殺気と瘴気を感じ取った。
「なんだ…どこからか気配が!」
「しかも…この瘴気…」
「これが怪人特有の瘴気よ」
この瘴気に5人は警戒しながら戦闘体勢に入る。
だがそんな時、ローブを着た男が2人現れた。
「なっ、なんだ!?」
「コイツらから瘴気が…」
「まさか…」
「アンタ達、怪人ね?」
レーグラスの質問に、2人は不気味に笑いながら返事をする。
「いかにも、俺はケンタウロスを食って」
「そして俺は天狗の血を飲んだ!!」
そして2人の怪人がローブを脱いでその姿を現した。
1人はヒゲを生やして左手と左足が馬の蹄の怪人と、もう1人は顔にタトゥーを彫って鼻が長い怪人だった。
そんな怪人2名の姿に野田達の感想は
「ダサい…」
「なんか、微妙」
「ていうか中途半端な?」
「そういえば、人間が妖怪の血と肉を食べた場合、必ずもその妖怪の長所が得るわけじゃないって……」
「その噂、本当みたいね」
あまりにも中途半端な格好に5人は呆れたり引いたりしていた。
「貴様ら……」
「俺達をバカにしてるな!」
当然2人の怪人は5人の態度と反応に怒りを見せていた。
「どうやら、痛い目にあいたいようだな?
「どっちにしろ、
そのまま怪人は武器を持って野田達に襲い掛かって来た。
「はひ…」
「うげ…」
そして10秒後。
野田達は怪人2名を簡単に倒した。
「コイツら、弱いなぁ…」
「まぁ、なにもかも中途半端だったからね?」
それからとりあえず2人を木に縛っておいた。
「さてと、とりあえずどうする?」
「もちろん、目的地に向かいましょう!」
そのまま2人を置いて、全員は再び車に乗り出発した。
しばらくすると野田達B班も目的地である、廃墟から少し西側に離れた草原で、さっそく調査を開始した。
「じゃあ、探査ロボを使おうか?」
用意したのはトンボ型の、カメラを搭載した探索ロボット10機。
さっそくレーグラスが妖力で操作するリモコンを使って、探索ロボットを飛ばし町に突入させる。次にリモコンに搭載された画面で、探査ロボットからの映像を写す。
「おおっ!映った映った♪」
「少し静かにしてて…これって案外集中力と妖力がいるんだから」
レーグラスは慎重にロボットを操作する。
10機のロボットはそれぞれ、今にも崩れそうな建物の多い町を静かに飛んでいた。
しかし人の気配はなく建物の中に入っても、ネズミやらがいるだけだった。
「本当にアジトがあるのかな?」
「当然でしょ?さっきの2人組も白状したんだし」
「それも嘘かもしれないだろ?」
「うるさい!とにかく私はリーダー代理だからね!!」
レーグラスは探索ロボットを操作し続けたが、全く人の気配はなかった。
「やっぱりあの2人に騙されてるかもな?」
「既に、アジトを別の場所に変えているかも」
「んぐぐぐぐ!!」
少し焦りながらも必死で探し続けるレーグラス。
だけど、野田はこんな質問をする。
「ねぇ、これって透視機能や、サーモグラフィーはないの?」
「あるに決まってるでしょ?」
「だったらそれを使って建物内部を調べれば良いだろ?」
「あっ……」
レーグラスはその方法もたしかにあったと気付いて固まってしまう。
「あれ?俺余計なこと言っちゃった?」
「たしかに……」
野田はちょっと気まずくなってしまう。
そして10分程経ってレーグラスは正気に戻る。
「言われなくても、やるつもりだったのよ!」
レーグラスは半ヤケになりながら、すぐさま探査ロボットの半分を透視に、もう半分をサーモグラフィーの装置を作動した。
すると1機の探査ロボットは、あるデパートのよう建物の地下に、大量の人影が発見された。
「このビルか!」
「なるほど、地下に隠れてたのね!」
「そうと分かれば」
さっそくホルが腕輪型の通信端末で、ミヤト達A班に連絡する。
ミヤト達が率いるA班。
既に盗賊団のアジトがある廃墟になった町に到着していた。丁度ホルからの連絡を受け取っていた。
「はい、そうか…分かった!」
「補佐官のホルから何か?」
「さっき盗賊団の怪人らしき2名を捕獲して、盗賊団のアジトはあの建物の地下だ!」
及川が車の外でバイクに座っているミヤトに、さっき受けた連絡を説明した。
「なるほど、ではこちらもって…おい!」
勝手に車を出てその隠れ家に行こうとするギンドスを、慌ててミヤトは走って彼の肩を掴んだ。
「なんだ?」
ギンドスはヘルメットを被ったまま、ミヤトを強く睨みつけた。
「貴様、なにかって行こうとするんだ!?」
「なにって…要するにあそこにいる盗賊の奴らを、全員半殺しにすれば良いんだろ?簡単じゃねぇのか?」
なんとも単純で簡単な作戦を考えていた。
当然、ミヤトはさっきよりも大きく怒鳴り叱った。
「バカ!なにそんな考えを実行しようとしてんだ!そもそも今回の任務は盗賊の討伐で」
「似たようなもんだろ?むしろ抹殺じゃなくて半殺しでガマンしてんだぜ?成長じゃねぇのか?」
「そういう問題じゃない!」
「あ~~~あ、まただね」
「本当、この2人って相性最悪」
そのままミヤトとギンドスの、2人は喧嘩を始める。
2人のやり取りを見て、タケラキと及川はただ呆れて果てる。
実際、ミヤトとギンドスが喧嘩するのはよくある事で、暗闇メンバーはなんとか止めようとしたことが何度も。
しかし、下手に止めようとしたら逆に被害が出るので、喧嘩が終わるのを待ったりしてた。
「分かったよ。奴らが出てくるのを待てば良いだろ?」
「そうそう!分かっててくれたか」
「じゃあ、さっそく」
ギンドスはいつのまにか右手に野球ボールぐらいの球を持っていた。
「おい…お前、それって!」
「先手、必勝!!」
ギンドスは球に付いて入るスイッチを押して、上空に向かって思いっきり投げた。
そして投げた球はしばらくすると、大きな音と爆風と一緒に大爆発した。
あれは暗闇が使っている、スイッチを押すか衝撃を与えれば、爆発する強力な野球ボール型爆弾。他にも猛毒や聖水を噴出すタイプや、辺りを凍らせる冷凍タイプの爆弾もある。
「うわっ!!」
「ふへ~~~スゲェ威力だな?」
投げた本人も爆発の威力に驚く。
「なんだ!なんだ!?」
「爆発だぞ!」
そして怪人盗賊団がさっきの爆発に驚いて、次々と隠れ家から外に出てきた。
「おお!来た来た♪」
「貴様!なんて無茶苦茶な事をする!!」
「何言ってんだ?盗賊を引きずり出すことに成功したろ?」
「それとこれとは!」
またしてもミヤトとギンドスが喧嘩を始めようとした。
「テメェら!!」
「「え?」」
「お前達、俺達が盗賊団・デットファントムに何かようか?」
だけど、怪人盗賊達はこの爆発の原因が彼らのだと気付いたので、頭の右側に鬼の角が生えた怪人がミヤト達に声をかけた。
そしてすぐに負けずと返事を返す。
「我々はモンスターゾーン、隠密戦闘部隊・暗闇!貴様等を討伐しに来た!」
「討伐だと?たった4人で俺達全員と戦おうとしているのか?」
リーダーの角怪人が笑うと他の怪人もつられて笑い出す。
実際にデットファントムと名乗る盗賊団は、情報とは裏腹に軽く50人を越えていた。
しかしミヤトはすぐさま天叢雲剣を抜こうとした時。
「もちろん、そのつもりだけど?」
ギンドスがミヤト達の前に出てきた。
「良いね…久しぶりに暴れそうだ」
「ギンドス!」
「下がってろ…もう一年半も出動してなかったから暇でもう仕方なかったんだ♪」
ヘルメットを外し地面に置いた。
その素顔は不気味におもちゃを楽しもうとする、子供のような笑みになり始める。
「さぁて…パーティータイムだ!!」
そして全身から刃を出すと盗賊団に向かって突っ込んできた。
「バカめ!たった1人で死に行くように」
角怪人が笑いながら銃を構えるので、他の怪人もそれぞれ武器を構えてギンドスに攻撃してきた。
だが、ギンドスは怪人の攻撃を避けながら、猛スピードで突進しそのまま敵勢を突き抜けた。
「斬破闘!!」
「「「「「「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」
いつのまにかは盗賊団の怪人達は、全員体を斬られて血まみれになりながら全滅した。
ギンドスは全身を敵の血で真っ赤になりながらも、身体から出た刃を引っ込めた。
「さすがだ…あれだけの人数を全員狂いもなしに」
ギンドスとは犬猿でいつも喧嘩しているミヤトだけど、彼の刃の切れ味や瞬発力といった戦闘力を認めていた。
そして体から血を流しながらも、辛うじて起き上がる角怪人。
「まさか…アンタ!最狂の殺人鬼の、伝説の切り裂き魔!」
「ご名答♪」
ギンドスはまた不気味に笑いながら右腕を刃にし、大きく振りかざす。
「まっ、待って!」
「無理」
そのまま角怪人の角を切り落とすと、失禁しながら気絶する。
「これで任務完了か?」
「……まぁな。ただ、やり過ぎだろ?」
「なに言ってんの?ちゃんと手加減してるんだぜ」
「そうだけど…はっ!危ない!!」
「え?」
飛んできたロケット弾に気付いたミヤトが、素早くギンドスを離れさせて、天叢雲剣で一刀両断した。
「……すまねぇな」
「気にするな。貴様は死刑囚だが、今は一応私達の仲間だからな」
「そうかよ……」
まさか助けられたので、ギンドスは少し戸惑いを見せていた。だが、ミヤトはどこからロケット弾を撃ち込んできたのか、辺りを徹底的に探し始める。
[しかし、レーグラス達は探査ロボの透視とサーモグラフィーを使った筈だ!ならなぜ引っ掛からなかった?]
敵はどんな方法で隠れてか、考えている時に及川がなにか提案をする。
「リーダー!私に探させてください!」
「え?…そういえば、お前らサトリは相手の心を読める妖怪だったな」
「そのとおり、どんなに上手く隠れても、サトリの耳は誤魔化せない!」
及川は能力を十分に発揮するために、本来の姿のサルと狸を合わせた獣に戻る。
そして耳を済ませると、何かが聞こえてきた。
[良し、もう一発!]
「あそこだ!」
及川が心の声を聞こえて指を刺したのは、さっきの盗賊達の隠れ家とは逆の方向にある、まるで5階建てのマンションみたいな建物だった。
しかも最上階の一室には人影の姿も。
「あれか!」
すぐにギンドスがまた爆弾を片手に大きく振りかぶって、ピッチャーのごとく目標のマンションに向かって投げ飛ばした。
[なにっ!?]
そのマンションにいた男性らしき人影は、爆弾が飛んでくる事に慌てて、5階から外に飛び出した。しかも爆弾が当って、マンションはさっきと同じくらいに爆発し男は爆風で吹き飛ばされた。だが、男は体勢を整えて見事に着地した。
そしてその姿は、両腕に包帯を巻いて、カウボーイハットに顔の傷と髭が特徴の大男。しかもなぜか蓑を纏っていて、さっきのロケット弾を撃った、バズーカ砲を片手に持っていた。
「ふ~~~危ない危ない」
「貴様はまさか」
「ああ、俺様がデットファントムリーダー、ロクロス・ナット」
男はロクロス・ナットと名乗るけども、彼のしている蓑を見てミヤトは気付く。
「それは、天狗に伝わる隠れ蓑か!」
ロクロスが羽織っている蓑が、民話に出てくる天狗の隠れ蓑であり。着れば姿を消すことが出来るので、たとえ透視やサーモグラフィーにも反応しない程の宝具だった。
「まぁな。昔盗んだ奴さ…おかげで色々と役に立ってなぁ♪」
ロクロスは自慢するかのように、隠れ蓑を使って自分の姿を消したりと見せびらかした。
「にしてもまさか俺の手下共を全滅させるとは、さすが伝説の切り裂き魔だけあるな?」
なぜかギンドスを見ながら、不気味な目で微笑むロクロス。
されに続くのかギンドスも笑いながら返事した。
「なんだ?お前は俺のファンか?」
「別に…ただ戦ってみたかっただけさ。伝説の切り裂き魔と呼ばれたギンドスと」
「俺と?」
「ああ、その為に俺はこの両腕を手に入れた!!」
ロクロスが隠れ蓑を脱いで、さらに包帯を取り始めると、その両腕に全員は驚愕した。
なぜならそれは鋭い爪をした狼の腕で、右は銀で左は赤の体毛だった。
「それって、フェンリルとガルムの腕…」
「移植したのか?」
「そうさ!ただ妖怪を喰えば力が手に入るなんてバカのやる事だ!こうやって移植すりゃ、望んだ力が手に入るんだ!!」
両腕を大きく振り下ろすと、そのまま突風が吹き出して、ギンドスの体を斬りつけた。
「ギンドス!!」
「心配ねぇよ」
そして両手を刃にしたギンドスは、さっきのとは全く別人のように真剣な顔になる。
「テメェ…俺を本気にさせたようだな?」
「おお!随分といい顔になってるじゃねぇか!そうこなくっちゃ♪」
狂気に満ち溢れたロクロスの顔に、ミヤトは確信する。
[心が完全に邪悪となっている…これが怪人になった者の末路か……]
これまでミヤトはさまざまに怪人と戦ってきた。
その殆んどの怪人が妖怪を食べて、中途半端になった者が多く。ロクロスのように妖怪の一部を移植した怪人は、まさに邪悪で凶悪な化け物になってしまう。
「さぁ、来いよ…アンタの実力を」
「いひひひひひひひ!初めからそのつもりさ♪」
ギンドスとロクロスが構え始めたけど、ミヤト達はただ2人の勝負を見守るしかない。
そして2人が時間が止まったかのように動かず、全身の力を溜めていた。
「「はっ!!」」
ついに2人が同時にジャンプした。
「刃塵!」
「ダブルネイル!」
それぞれの必殺技を出して着地する。
最初は2人共、何事もないようだが
「ぐおっ!?」
しかしギンドスは体の前と後ろに大きな爪の傷が出来て、大量に血を流した。
「うっ……がはっ!!」
だが、ロクロスは左右のフェンリルとガルムの腕が切り落とされて、さらに全身も斬られた。
そのままギンドス以上に血を流したロクロスは倒れる。
「うう…テメェ……俺の目でも、確認出来ないほどに…!!」
瀕死の状態になりながらギンドスに尋ねた。
「そりゃあ、人を呆れる程殺してきたからな…素早く正確に……」
「お前……絶対俺と一緒に…地獄に落ちるな?」
「そんなの、初めから知っているさ」
「なる…ほど…な」
質問に答ええるギンドスに、納得して笑うロクロス。
「じゃあ、先に……待ってるぜ」
「そうかよ」
ギンドスは無表情になりながら、ロクロスの頭を右手の刃で突き刺した。
するとミヤトがボロボロのギンドスに近づいて、缶コーヒーを渡しながら。
「お疲れさん」
「……ありがとよ」
ギンドスはお礼を言うと缶コーヒーを受け取った。
怪人には妖怪を食べるタイプと妖怪の一部を移植するタイプ。移植タイプが1番危険。
次回は野田達に新たな危険が迫ってきます。




