第57話 殺人鬼と宇宙の敵
六方連会議から次の日。
「という訳で、暗闇補佐官の氷真ホルです」
前回でも言ったが、ホルは妖魔将軍改め麻井から暗闇補佐官に任命されて、メンバー全員に自己紹介した。
「へ~~~意外と可愛いなぁ?」
「ちょっとクールな真面目さんって感じだね?」
タケラと片桐が低めの声でホルの印象について会話する。
「言っとくけど、そいつは男だ」
「「「「えっ!!?」」」」
ミヤトの言葉に野田達3人以外全員が大声を上げると同時に、ホルはやっぱりかとため息を吐く。
「まじで、男なの!?」
「嘘!本当に!?」
「つまり男の娘なの!?」
メンバーはいっせいにしてホルに話しかけたり質問したりして来た。
「そうだったんだ…ホルさんって男だったのですね」
「スミレは初めて知ったんだよな?」
どうやらスミレも今までそれなりに会っていたのにも関わらず、ホルが男だってことに気付かなかったらしい。
それからレーグラス達も。
「まさか、男の娘キャラだったとは…」
「なんか驚きですね」
「あれ?レーグラスさん、どうしたの?」
なにやらレーグラスはこんな発言をして来た。
「あれはキャラ作りね?」
「え?」
「キャラ作りって…」
「だから、あれはキャラ作るよ!男の娘キャラなんて…明らかに受けを狙ってる証拠でしょ!!」
どうやらホルが男の娘キャラで人気取ろうと勝手に思い込んでいた。
しかし、このままでは話が進まないので
「お前らっ!彼が男の娘だと騒ぎたいが、話はそれだけではない事忘れるな!」
「「「「は、はいっ!!」」」」
「そんなはっきりと…」
ミヤトが無理やり本題に入ろうとした。
「ふむ、では早速なんだが、“アイツ”を使う」
「え?“アイツ”って…」
「まさか!」
「良いから、“アイツ”を呼びなさい!」
周りの空気がいきなり重くなり始めるので、野田はすぐに倉山にこの状況を尋ねてみる。
「倉山?なんだこの空気?」
「さぁ、俺もこんな事初めてだし…」
「当然ですよ…倉山さんも初めて会うのですから」
ここでスミレが割って入ってきた。
「ミヤトの言っていたアイツって事か?アイツって言うのは?」
「それは…ん?」
その時、突然基地全体から警音が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「侵入者か!」
「でも、なんだか懐かしい感じだな?」
かつて倉山も歴史館から地下基地に迷い込んだときに、この警音が鳴りミヤト達に囲まれてしまい。
そのまま半強制的に暗闇エージェントにされたのであった。
それはともかくすぐに全員が警報のする所に向かう。
「警報の先は?!」
「もう少しだ!」
そしてついに辿り着いて彼らが見たのは。
「なっ!」
「ええっ!?」
「「「痛たたたたた…」」」
なんと大きく床に身体を叩きつけられたのか、腰や尻を押さえたりするソロリックと秋とホロの3人だった。
「ソロリック…秋?」
「ホロ……なんでここに?」
「なにって、今日は休日で…」
「私も…バイト休みだし…」
「そうじゃなくて、なんでここに!」
「じつは……」
ソロリックはさっそく事情を話し始めた。
それは今野田の新しい職場はどこなのか知りたくて、そこでソロリックは秋とホルを連れて、こっそりと後をつけたらしい。
そして彼らが歴史館に到着した後は、秘密の抜け穴にかかってしまい現在に至る。
「まさか…俺と同じようにして…」
「彼ら、どうしますか?」
「おいおい、まさか…記憶を消すんじゃあ?」
基地に迷い込んだ3人に対して、ミヤトが下す決断とは
「お前達、今回の事を」
「はい!もちろん」
「誰にも言いません!」
「秘密にします!」
「そうか…では、邪魔をしなければここに来ることを許そう」
「「「「え?」」」」
という訳で3人は暗闇の出入りを許可されるのであった。
当然暗闇のメンバーは納得しなかった。
「ちょっとリーダー…なぜ彼らを!」
「そうですよ!万が一彼らがここの情報を」
「おいおい!ソロリックと秋がそんな事するわけないだろ!」
「それに万が一ここの秘密を喋ってしまったら、僕が責任を取りますよ!」
レーグラス達はすぐさま認めようとはせずに、そのまま野田とホルと口論となった。
そしてこんな事になった張本人である、ミヤトの本当の考え。
[元々、スパイロボの狙いはこの女らしいからな。野田と一緒に居るべきだな]
これがなぜ彼らを受け入れた理由であった。
ソロリックが何者かに狙われている上に、心の鎧甲を自在に出し入れ出来るので、こうしていれば安全だと思った。
「別に構いませんけど、たった今“アイツ”を呼び出しましたけど」
「え……ああっ!?」
「責任はアナタが負ってくださいね」
やっちまったって感じに頭を抱えてしまうミヤトに、つい忘れていた事を思い出して他のメンバーもさっきと同じ空気になった。
「野田さん、一体何が?」
「俺にも分からない…だからさっきまで言ってた“アイツ”って一体?」
「…野田くん。アナタは覚えていない?モンスターゾーンの伝説の切り裂き魔?」
「伝説の切り裂き魔ってあの?」
伝説の切り裂き魔とは、歴史上最悪の殺人鬼の通り名である。
妖怪はもちろん、観光とかで入国してきた人間と魔人と獣人が、無差別に殺される事件があり。
その被害者は軽く四桁を超えるものだった。
特徴といえば男性の場合は単純に首を切り裂くか、顔をズタズタにして殺したりするものであり。そして女性の場合は攫っては遊ぶかのように、全身をバラバラにした後どこかに捨てられるのだが、その時に髪の一部を持ち帰ったりする。
後に犯人である伝説の切り裂き魔は、騎士隊と武者組と巨兵隊を何十人か殺害し重傷を負わせながらも逮捕される。
そして現在どうなっているのか。
その頃、ここは周りが渦潮と雷雲だらけで、全て機械仕掛けの人工島で超巨大な刑務所が存在した。
その名も大獄プリズン。
世界中の凶悪犯罪者を収容する大監獄であり、看守も医務も調理師も囚人以外全てがロボット。しかもスーパーコンピューターが所長として、全てを24時間管理している。
そしてこの刑務所には、地下深くに存在する超特級危険犯罪者用の特別牢獄もあって、そこに1人の銀髪の妖怪がいた。
「クソ…近頃任務が来ないから暇だな…」
その妖怪は網きりであり。全身鎖の付いた妖力を押さえる封印の文字が刻まれた、鉛の杭を打ち込まれていて、両腕も封印術入りグローブで封印されていた。さらに首輪型の装置か何かも付けられた状態で、置かれたソファーで横になりながら愚痴をこぼしてた。
すると数体の看守ロボがやってきた。
「起きろ!出勤だ」
「お?ようやく来たか!ほんと、暇で暇で仕方がなかったんだぜ」
「言っとくけど、もし貴様が余計な殺しや命令無視をしたら、お前の命は一瞬で終わる事を忘れるなよ!」
「はいはい、何度も聞いてるから分かってるよ」
牢屋の扉を開けて、鎖付き杭に繋がれたまま牢獄から出された。
「全く…なんでこんな危険な殺人鬼が必要になるんだ?」
看守ロボが警戒する、この網きりの名はギンドス。
この男が伝説の切り裂き魔と異名を持った、妖怪史上最強最悪の殺人鬼である。
その頃、高く天空・宇宙から地球を見守る4つの月。
この月は、かつての時空融合によってそれぞれの世界の月が、融合して出来たとされている。しかし、その4つの月の内の1つが全てが機械で出来ていた。
その機械星の表面は何もない殺風景に見えるのだが、じつは唯一巨大な建造物が聳え立っていた。
それは宮殿や神殿のような雰囲気であると同時に、見る人にとっては不気味な印象を感じさせるものであった。そして建造物内部の中心に、まるで礼拝堂のような巨大部屋には、男女9人が集まっていた。
「たく…いつまで待たせんだ?」
「まぁまぁ、気軽に待ちましょうよ…」
スキンヘッドな黒人風の大男が待たされて苛立っているけど、ピンク髪のゆるふわな感じの美女が彼を宥める。
「しかし、彼の気持ちも分かりますよね…呼び出しておいて待たせるとは」
「ほんとほんと!」
「私達だって暇ではありませんし」
それから金髪で見るからにナルシストな雰囲気の男と、肥満体で髭を生やした男と、ボサボサ髪のメガネをかけた少女も文句を言う。
「だが、ここは待っているのも武人というものだ」
「だったら、私のミニコンサートを開始しよう♪」
「いいねいいね!やろやろ!」
「全く、君たちは…」
顔に多数のキズを負った武人肌な男が呟くと、水色でサイドテールのアイドル風の格好をした少女がマイク片手に歌おうとした。
さらに小柄で見るからにショタって雰囲気な茶髪の少年もノリ始めるので、赤髪だけど真面目そうな青年はそんな2人に呆れてた。
だがその時、目の前の巨大な扉が開いた瞬間、9人はいっせいに横一列になって跪く体制を取った。
そして扉から出てきたのは3人の男女だった。
「アナタ達、よく集まったね?」
「我らの…神の命だから、当然だろ?」
「たしかに、コイツらは普段自由だからな」
それは紫の露出の高いドレス姿で翡翠色の長髪をした妖艶な美女と、短めのウェーブヘアーに全身黒い服装の無口な女性と、そして目つきの悪い銀髪の男だった。
「さて、我らの神のお知らせですよ。はい整列」
妖艶美女の掛け声に、12人は縦二列に並ぶ。
「「「「「「機神様!機神様!我ら12王集結!!」」」」」」
そして今度は12人全員の掛け声と共に、扉から黒髪に無精ヒゲを生やして、黒い服と黒ローブの全身黒一色の青年だった。
「全員、ついにこの時が来た」
機神と呼ばれる青年が手をかざすと、目の前に地球の立体映像が大きく映し出した。
「この地球は、本来我らのものだ」
「「「「「「そうだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」
「しかし、今地球は…旧人共と、異物人がのさばっている」
「「「「「「そうだ!そうだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」」」
「故に、我々で地球を取り戻すのだ!本来の持ち主であり、人間を超えた我ら…“ギガメカス”が!」
「「「「「「おおおおおおおお!!」」」」」」
青年の演説に12人全員が大声で返事をし続ける。
そして演説が一通り終わると、妖艶美女が青年に声をかけ始める。
「それにしても、本当に長かったですねぇ」
「ああ、たしかに…今までは諜報員…スパイを何度か地球に向かわせたが、もうそんなのは終わった」
地球の立体映像を一度消すと今度は天井が変形し始める。
そして天井が畳んで上空の星と本当の地球が見えるようになった。
「地球を取り戻す。その為にも旧人共と異物人を排除するのだ」
「もちろん、我らもそのつもりです」
「それについ先ほど、我が配下を2名ほどギガソルジャーと一緒に送らせております」
「そうか…さぁ、我らの戦いは始まったのだ!地球を…絶対地球を我らに!」
「「「「「「うおおおおおおおお!!」」」」」」
そして12人の雄たけびを上げると共に、全員異形の姿をした機械怪人に姿を変えたのであった。
ソロリックと秋とホロが暗闇で仮メンバーになりましたが、新キャラは殺人妖怪の網きり、ギンドスです。
そして宇宙の機械怪人達が地球に攻めようとしていますので、これからどうなるか待っていてください。




