第47話 グレス再び
野田達とトムらは、ギバドンに案内されて、もう使われていない闘技場に行き。そして心の鎧甲を懸けた決闘が行なわれようとしていた。
「大丈夫なの?さっきもアンリュウさんと戦ったばっかりだし」
「心配するなって!もう回復したから」
余裕な笑みを見せるが、じつは心の鎧甲に力を奪われた上、アンリュウとの決闘もあって、最早歩くだけで精一杯な状態だった。
[ヤバイなぁ…心身ともにズダボロなのに、決闘だなんて。でも心の鎧甲を奪われるのはヤダし、ソロリックが見ているからな]
だが、そんな状態でもソロリックの期待に答えなきゃならないからだ。
「とにかく、もし負けたら取られちゃうんだよ!」
「大体、魔人のアタシに勝っておいて、人間に負けたな承知しないよ!」
さらにホルとアンリュウも応援して来た。
[仕方ない!やるっきゃないか!]
ここまで来たからには、本気で戦わなきゃいけないと、腹を潜った。
それからトムの方はというと、真面目に準備運動とストレッチをやっていた。
「んで、本気でやるつりか?」
「もちろんです!何事も本気でやるのが、私のポリシーですから」
「しかし、相手は心の鎧甲の装着者。本当に大丈夫?」
「心配要りません。私の見たところ、彼は装着者になってまだ日も浅いようですね」
トムは、3人と話し合ったりする野田を観察する。
「だがな、もしも負けた時はどうするつもりだ?」
「その時には、私の実力がまだまだって事になりますので…」
「相変わらずの真面目だな?」
ヴァルベンはそんなトムに呆れるけども、彼に強い期待を持っていたのだった。
ちなみに、ミオーズとギバドンはというと。
「ねぇ、なんでこんな事になったんだ?」
「さぁ…でも、しばらく待ってあげましょうよ」
「だけど、あの伝説の心の鎧甲が目の前に!」
「私だって驚いたけど、それは後にしようね?」
ミオーズがやってきたと思ったら、突然の決闘という状況になって戸惑うギバドン。
だけどミオーズはなんとかフォローする。
それからアーマースタイルになった野田と、心の鎧甲・悲劇を左腕に装着したトムの、勝負が始まろうとした。
「では、参りましょうか」
悲劇からレーザーの剣を出して構えた。
「心の鎧甲・“悲劇”は特殊能力こそないが、その代わり攻撃力や破壊力は一番です!」
さっそくレーザーソードで攻撃してきたので、野田はすぐさま盾を出したけども。
「え?」
スパッと盾が綺麗に切られてしまう。
そのまま切ったり突いたりとトムの攻撃が続き、野田はただ避ける事しかできないが。
「この!!」
すぐに右腕をドリルにして、パンチを決めようとしたので、トムも負けずにレーザーソードを解除し、そのままパンチを放った。
そして2人の拳が交じり合った瞬間。
「えっ?!」
「言ったはずですが、これの攻撃力は桁外れです!」
トムの放った悲劇の拳が、野田のドリルを砕いて、見事なストレートパンチが決まり。
[嘘!だろっ!?]
野田は数メートルまで吹っ飛んでしまう。
[なんだよコイツ!アンリュウ以上じゃないのか!?]
なんとか立ちがって体制を整えたけど、最早完全に立っているだけであった。
「どうしよう…野田さん苦戦してるよ!」
「たしかに、そもそも野田くんの体力はボロボロだし!」
「さっきのアタシとの戦いで、大分エネルギー取られたし。というより、まだ装着者と認めてないから、心の鎧甲にパワー吸い取られてる!」
[野田さん……お願い無事でいて!]
見学のソロリックら3人は、野田が前より体力がなくなっているのに気づいた。
そしてソロリックは必死に願っていた。
「逃げ回ってないで、反撃したらどうなのですか?」
「今の俺は、したくても出来ないだよ!!」
「それなら仕方ない……では、これで終わりにしましょう」
するとトムが左腕を振り構えるような体制を取り始める。
[ヤベェ!確実に必殺技の構えじゃねぇか!?]
野田はなんとか逃げようとしたが、もうすでに遅かった。
「tragedyブレード!」
そして大きく悲劇のレーザーブレードを、横に振り払ったその瞬間に、衝撃波とレーザーが混ざり合った斬撃が飛んだ。
[これは!クソ!!]
少ない体力ながらも必殺技の、wishバスターを放ったが、弾もミサイルも跳ね除けてしまう。
[ここまでかよ!]
野田が諦めようとしたその時。
突然トムの放ったレーザー斬撃が、まるで岩で押し潰されるような感じ
に、地面にたたきつけられて消えてしまった。
「なっ!?」
「「なにっ!?」」
「嘘っ!!」
「一体何が!?」
「さっきの斬撃が!?」
「打ち消した!」
「まさか…野田さんのさっきの技が!!」
この場の全員は驚いて声を上げてしまっていた。
しかし野田はすぐに理解した。
[これって…まさか!]
「そうさ」
そして空から地面に降り立ち。彼らの前に現れたのは
「グレス……ドラー!」
かつて一度、野田と戦った事もあり。さらに2つの心の鎧甲の装着者でもある、高熱精霊のグレス・ドラー。
「うっ!」
だけどホルはグレスの発する熱気に、その場に倒れてしまった。
「大変!このままじゃあホルさんが溶けちゃう!!」
「仕方ない。ちょっと彼を、地面に置いて」
「え?なんでっ?!」
「良いから!そしてアンタは離れる!」
「はぁ?」
キッカに言われるまま、ソロリックはホルを地面に寝かせて、少し距離を離れた。
そしてキッカは両手で印を結び。
「忍法…雪獄!!」
キッカの手のひらからホルに向かって、雪の突風を発射した。
それによって見事、ホルは雪に埋まって大きな、雪の山が完成した。
「どう?これなら大丈夫?」
キッカが尋ねると雪の山からホルの顔が出てきた。
「ありがとうございます!これならしばらくは大丈夫です!」
「それは良かった。でも、万が一の為にしばらく出してあげる」
ホルがすぐにお礼を言うと、親切にも桜刃も雪を出し続ける。
だが、トムは勝負の邪魔をされて腹立っていた。
「アナタ、戦いに割り込んでどういうつもりですか!?」
「……悪いが、貴様らの都合とかは知った事ではない。ただ、私は全ての心の鎧甲を頂くだけだ」
「「「ッッ!!?」」」
グレスの言葉に人間組の3人は
「そうですか、ならば私は…アナタを危険因子として倒すまで!!」
すぐに悲劇のレーザーブレードで、グレスに斬りかかる。
だが、トムの攻撃を軽く避け続ける。
「どうした?貴様の力はそれだけか?」
「おのれ!」
トムは悲劇のレーザーブレードを展開したまま、左腕を真っ直ぐに横に伸ばして、身体を回転させて攻撃してきた。
しかしグレスは鎧甲を装着した右足で、片足ジャンプをすると、まるで彼の周りの重力が少なくなったかのように、高く飛び跳ねた。
「なんだと!?」
「終わりだ!」
「ぐおっ!!」
最後に落下したグレスのかかと落としが見事に決まり、トムの顔面は地面にめり込んで倒した。
「これぞ“傲慢”の能力、重力操作だ!」
「重力操作…なるほど。つまり自分や相手の重力を重くするも軽くするも、自由自在ってわけか」
グレスが所有する心の鎧甲の1つ、傲慢の能力にアンリュウは納得した。
それからアーマースタイルを解除して、立てないほどに疲労した野田を見たグレスは、なんだか情けないような眼差しをする。
「全く…認めて貰ってない癖に、こんなボロボロになって」
「うるさいなぁ!お前には関係ないだろ!!」
「……とりあえず、これは一応借りを作ってやるだけさ」
グレスは右腕の鎧甲アーマーの指から、コードを伸ばすように出して、野田の額に突き刺した。
「野田くん!アナタ、いきなり何を!?」
「心配いらん。すぐに終わる」
するとアーマーからコードを通じて、野田に何かエネルギーのようなものを、注入するのが分かり。
野田も段々、体力が回復してるのも分かる。
「あれ…力が!?これって…」
「“歓喜”……能力は全ての物体からエネルギーを吸収し奪い。逆に自分のエネルギーを相手に与え、相手の回復も可能だ」
グレスは右腕の心の鎧甲・“歓喜”の説明と同時に、野田の回復も終わった。
「お前……なんのつもりで?」
「それよりも、コイツらはどうする?」
「「「「「え?」」」」」
その台詞に野田もソロリックもホルもアンリュウも、さらにミオーズもガドバンもどういう意味か不思議がる。
「なるほど、私とした事が…戦いに夢中になって気づけませんでした!」
「俺はすでに、感知していたがな」
「さっさと姿を現したらどうなの!」
トムがヴァルベンに身体を支えながらも、なんとか起き上がって、キッカが大声で叫ぶ。
すると周りからたくさんの、鳥人とロボットの軍団が、いっせいに武器を持って現れた。
「「「「「どっひぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」」
野田達5人は声を上げてしまい、グレスと人間組は戦闘態勢に取った。
「ミオーズ…たしか危機管理高いはずじゃあ?」
「ゴメン……私も2人の決闘に夢中で」
「同じく…」
気づけなかったミオーズとギバドンの2人は、野田達に謝った。
野田のライバル、高熱精霊グレス・ドラーが再び現れました。
そしてトムの所持する、破壊力の高い心の鎧甲・“悲劇”と、グレスの持つ2つの鎧甲、重力を自在に操る“傲慢”とエネルギーを奪い与える“歓喜”の、能力はどうでしたか?




