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理想の孤独死【完結済み21.5万文字】  作者: Shimizu Atsushi


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第七話 LPTの成り立ち 三

 「孤独死対策法案」の成立にともない始まった、生体チップ「LGI」を用いた「独居者の見守りサービス」は、事前に懸念された事故などはなく、順調だった。契約者の数は国内はもちろん、一部の海外でも、予想以上に増えていた。

 四年が過ぎた頃、堤は驚くべきことを世間に発表した。

 堤は、初めてマスコミに現れた時とほとんど変わらない風貌で会見に現れた。彼は詰めかけた報道陣を前に、感じの良い微笑を浮かべたまま、穏やかに話し始めた。そこには、メディアを通して映る自分の姿が、よく分かった人間だけができる独自の抑制があった。

「人には自分がどう生き、そして、どうやってこの世から去るのかを決める権利があります」

 彼はそう語り始めた。

「私は皆さんが最後の瞬間まで、自分の人生を味わい尽くすために、『何ができるのだろう』と、常に考え続けてきました。生きることは素晴らしいことです。ですが、より重要なのは、『どう生きるか』ではないでしょうか? そしてその問いは、『どう旅立つのか?』ということでもあると思います。これらはいずれも、他の誰でもない、ご本人にとって大事なことでしょう」

 ここで彼は、聞き手に、自分の言葉が染みるのを確認する間を置いた。そして、それに満足したように続けた。

「例えば本人の望まぬ延命処置によって生きる人生は、果たして誰のためのものでしょう? 自分以外の他者が強要する生とはいったいなんなのでしょう?」

 効果的な反語だった。

「もちろん私は、できるだけ多くの方が、自分の人生を楽しむべきだと思っています。私自身も、そう思っている一人の人間です。私にとって大事なことは皆さんと同じく、『どう生きるか』であり、同時に『どう死ぬか』なのです」

 堤の声は穏やかだった。だが、どこかに不遜な成分が混じっていた。後にネットで「きれいなギレン」と揶揄されたのも分かる。

「そして私が望むのは、その時が来たら、『旅立ちに身を任せよう』と。その時に望むのは、私を含む誰もが、その尊厳を何者にも傷つけられず、安らかに旅立つためのケアであると」

 声のトーンを少し落とした。

「これは、私がこの仕事に就くよりずっと前から考えていたことです。そして――私は今、皆さんに責任を持って、新たなサービスをご提供する準備が整ったことを、ここに発表させていただきます」

 ここで再び彼は、聴衆が自分の次の言葉を待ち侘びているのを確認した。続く言葉は力強かった。

「我々が開発した独自のテクノロジーが、お一人であっても、全ての方に、心安らかな旅立ち――『尊厳のある孤独死』を迎えられることを、LPTがお約束させていただきます」

 この言葉を、多くの人が、まるでそれこそが、長い間自分が望んでいたことのように受け止めた。

「私どもは、この新しいサービスに必要となる二つの法案を、さきほど政府に提案させていただきました。それは、事前蘇生拒否指示の保護法案(ADNR:Advanced Do-Not-Resuscitate)法、そして、尊厳死法案です。これらの法案が通った時、私たちは、充実した、実りある、そして、その最後まで尊厳のある人生を、生きることができるのです」

 堤がずっと浮かべていた微笑をさらに深めてこう言った時、私は前の会社でSEをしていた。遅れた進行表を眺めながら、見るともなしに開いていた動画サイトから、流れてきたその声をぼんやり聞いていた。その時は考えもしなかった。まさか何年か先に、自分が画面の中の男の仕事に関わるとは。

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