第15話 夜の管理画面
カルナが消えた瞬間のことを、まだ覚えている。
コアが砕けた。光が広がった。そしてカルナの体が光に包まれて——消えた。
抵抗しなかった。怒らなかった。ただ、最後までこちらを見ていた。
「……やるじゃないか」
それだけだった。
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夜になっても、管理画面を開いたり閉じたりしていた。
補充の計算をしないといけない。DP残高を確認しないといけない。やることはある。でも画面を開くたびに、カルナの最後の顔が浮かんできた。
閉じる。
また開く。
また浮かんでくる。
「……なんなんだよ」
誰にともなく言った。
カルナは敵だった。申請してきたのも向こうだ。ルナリアが勝った。それは正しい。
でも、ダンジョンマスターが消えるところを初めて見た。
自分が倒した相手が。
あの瞬間、光に包まれていくカルナを見て、ルナリアは何も言えなかった。「お疲れ様」も「ごめんなさい」も、どちらも違う気がして。
「……本当に、いなくなるんだな」
当たり前のことだ。コアが破壊されればダンジョンマスターも消える。知っていた。
でも知っていることと、見ることは違った。
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死亡記録を開いた。
ホブゴブリン2体。シャドウバット6体。
数字だ。補充すればいい。
そこにクロが来た。いつも通りだった。足元に頭を擦り付けて、くんくんと鼻を鳴らす。
ルナリアは何気なく、その頭を撫でた。
その瞬間、ふと思った。
もし今日。ここにクロの名前があったら。
手が止まった。
視線を上げた。
アルスがいた。壁際に立っている。いつもの場所だ。こちらを見ている。
「……」
気付けば、目が覚めた日からずっとそこにいた。
もし今日。ここにアルスの名前があったら。
「……」
何も言えなかった。
シロが近くに来た。クロの隣に座った。ルナリアは3体を順番に見た。クロ。シロ。アルス。
「なんでこんなに嫌なんだろ」
独り言だった。答えを求めていなかった。
でもコアが少し間を置いてから言った。
「……分かりません」
「そっか」
「……ただ」
「ただ?」
「……ルナリアが、そう感じるということは分かります」
ルナリアはしばらく黙っていた。
コアさんが分かる、と言うのは珍しかった。
「……なんで分かるの」
「……分かりません」
「矛盾してる」
「……そうです」
ルナリアは少し笑った。
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結局、補充の計算は翌朝にした。
死亡記録は、閉じた。カルナの最後の顔は、まだ少し残っていた。でも今夜はそれでいいと思った。
クロが足元をうろついていた。
いつも通りだった。
クロがそこにいることに、ルナリアは初めて安心した。
それから、死亡記録の画面を閉じた。
コア管理画面を開く。コアレベル。拡張エリア。未解放の施設。
「……もっと強くしないとな」
誰に聞かせるでもなく呟いた。
管理画面の光が、静かな部屋を照らしていた。
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