第7話 攻略訓練
まず罠とモンスターを整えることにした。
管理画面で罠の購入欄を開いた。
矢罠を3個追加した。消費DP:45。通路の中盤と奥に仕込む。
「当たらなくてもいい」
反応させれば十分だ。矢が飛んでくれば、相手は必ず動きを止める。その隙にモンスターを動かせばいい。罠は直接倒すためだけにあるんじゃない。
拘束罠を1個追加した。消費DP:30。コア手前の最後の防衛ラインに置く。ここまで来た相手を完全に止める。
「……守りはこれでいいか」
次にモンスターを確認した。
「コアさん、進化できる個体は?」
「クレイゴーレム2体が進化条件を達成しています」
クレイゴーレム2体の進化先をストーンゴーレムに設定した。承認する。
光が包んで、2体がストーンゴーレムになった。体が一回り大きくなって、表面の質感が硬くなっている。ブレイブと同じ種族になった。壁役がさらに厚くなる。
その瞬間、管理画面に通知が来た。
《進化数が一定数に達しました》
《自動進化機能を解放しました》
「……なに、これ」
「モンスターの進化先をあらかじめ設定しておくことで、条件達成時に自動で進化します。設定していない個体は従来通り通知が来ます」
「……便利だな」
次に召喚を追加した。
コウモリを3体召喚した。消費DP:6。かく乱役の数が増える。矢罠と組み合わせれば、上からも下からも相手の視線を乱せる。
ウルフを3体召喚した。消費DP:45。これでウルフ隊は黒いウルフと白いウルフを含めて8頭になる。攻め込む際の突破力が上がる。
「……これで少しはましになるか」
DP残高を確認した。かなり減った。でも必要な投資だ。
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罠とモンスターを整えてから、攻める側の練習を始めた。
相手のダンジョンに入る。罠をかいくぐる。モンスターを倒す。コアを破壊する。
言葉にすれば簡単だ。でも実際にやったことがない。
「……試してみるしかないか」
まずラットシャドウを先行させた。
1層目の通路を進ませる。罠の位置を確認させる。ラットシャドウは影に潜りながら進んでいく。落とし穴の手前で止まった。罠を感知している。
「……ちゃんと機能してる」
次にウルフを動かした。ラットシャドウが示したルートを通らせる。黒いウルフが先頭だ。木の陰から飛び出して、通路を駆け抜ける。速い。罠を避けながら進んでいく。
でもそこで止まった。
通路の先に、ホブゴブリンの小隊がいた。自分のモンスターだ。でも攻略側の視点で見ると、壁に見えた。
黒いウルフが低く唸った。どう突破するか迷っているように見えた。
「……突破できないな」
ウルフの速さは活きる。でも正面突破はできない。数が多すぎる。
アルスを呼んだ。
「アルス、攻め側で動いてみてくれる?」
アルスはしばらくルナリアを見た。それからゆっくりと、通路へ向かった。
アルスが動くと、黒いウルフがすぐについていった。白いウルフがその後ろだ。ラットシャドウが先行する。自然とそういう隊形になった。
「……誰が指示したわけでもないのに」
アルスが通路の中程で止まった。罠の位置を確認している。ラットシャドウが先に進んで、安全なルートを示した。アルスがそれを見て、動き方を変えた。
ホブゴブリン小隊の前に出た。
小隊がアルスを見た。一瞬だけ、動きが止まった。
アルスが短く唸った。
小隊が道を開けた。
「……え」
自分のモンスターだから道を開けたのか。それともアルスだから開けたのか。どちらか分からなかった。でも確かに、通路が開いた。
「……これ、実戦だったら通用しないな」
相手のダンジョンのモンスターは道を開けない。当然だ。
でも何かが分かった気がした。
アルスが先頭に立てば、後ろがついてくる。黒いウルフが側面を取る。白いウルフが補佐する。ラットシャドウが情報を取る。それぞれが役割を持っている。
「……形は見えてきた」
でも相手の罠が分からない。相手のモンスター構成が分からない。穴だらけだった。
黒いウルフが訓練を終えてルナリアの方に歩いてきた。くんくんと鼻を動かしながら、足元をうろついている。
「……今日はお疲れ様」
黒いウルフが顔を上げた。尻尾が揺れた。
白いウルフがその後ろからついてきた。黒いウルフを一瞥して、小さく唸った。
「……ふたりとも、ありがとう」
白いウルフは答えなかった。でもその場を離れなかった。
ルナリアはしばらく2層目の森を眺めた。
攻める側の動きが、少しだけ見えてきた。でもまだ足りない。
「……もう少し準備してから受けよう」
管理画面を閉じた。
やることはまだある。
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