第6話 挑戦状
《対戦申請を受信しました》
《送信者:カルナ(440位)》
《ダンジョン名:牙砦》
《ランク:F》
「……来た」
詳細を開く。相手のランクはF。自分と同じだ。ダンジョン名は牙砦。ダンジョンマスターの名前はカルナ。ランキングは440位。自分より10位下だ。それだけだ。構成は何も分からない。
「コアさん、牙砦って何か分かる?」
「……ランクとダンジョンマスター名以外の情報はありません」
「そっか」
受けるか、断るか。
断り続けるとランキングポイントが下がる。でも今すぐ受ける必要もない。ミッションは「1回行え」だ。相手はカルナじゃなくてもいい。
でも申請が来た以上、いずれ返事をしなければいけない。
「……保留にしておこう」
管理画面のメモ欄に書き込んだ。
「カルナ・牙砦・Fランク・440位。調べる」
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翌日、アバターで街に出た。
ギルドに向かって、さりげなく聞いて回った。
「牙砦って知ってますか?」
受付のエリカが首を傾げた。
「牙砦……聞いたことありますね。確か北の方にあるダンジョンだったかと」
「どんな構成か分かりますか?」
「報告書を確認してみます」
しばらくして、エリカが薄い記録を持ってきた。
「……1件だけありました。モンスターが多いタイプ、とだけ書いてあります。詳細は冒険者が撤退したので不明です」
「撤退した理由は?」
「数が多すぎて押し切られた、と」
「……数が多い」
それだけしか分からなかった。でも少し分かった。罠重視ではなさそうだ。モンスターで押してくるタイプ。
「ありがとうございます」
書棚に向かった。他に手がかりがないか探す。でもダンジョンマスターの内部情報は一切ない。
「……やっぱりこれだけか」
モンスターが多い。数で押してくる。それだけを持って帰った。
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帰還してから、管理画面を開いた。
「コアさん、進化条件を達成しているモンスターは?」
「ピクシー5体・ホーンラビット2体・ジャイアントラット2体です」
「全部進化させよう」
ピクシー5体を承認する。光が包んで、スプライトになった。エリンの部隊が厚くなる。
ホーンラビット2体を承認する。ソードラビットになった。角が鋭くなっている。
ジャイアントラット2体を承認する。ラットシャドウになった。偵察能力が上がる。
「……戦力は上がった」
でも、ふと気づいた。
今まで考えていたのは防衛のことだけだった。相手が攻めてきたらどう守るか。罠をどこに置くか。モンスターをどう配置するか。
でもダンジョン対戦は違う。
「……こっちが攻め込む場合はどうなるの?」
「相手のダンジョンに侵入し、ダンジョンコアを破壊することが勝利条件です」
「……つまり冒険者と同じことを、相手のダンジョンでやる」
「はい」
ルナリアはしばらく黙った。
守ることは考えてきた。冒険者がどう突破してくるかも見てきた。でも、自分たちが突破する側になることまでは考えていなかった。
「……そこまでは考えてなかった」
攻めに使えるモンスターは誰か。ラット隊で偵察できる。ウルフで突破できる。でも相手の罠を踏んだら?相手のモンスターに囲まれたら?
分からないことだらけだった。
管理画面のメモ欄を開いて、書き込んだ。
「攻撃側の動き:ラット先行→罠確認→ウルフで突破→アルスが指揮→コア破壊」
書いてみたが、穴だらけな気がした。
「……もう少し考えないといけないな」
管理画面でカルナへの返信欄を開いた。
「条件を確認中です。少しお時間をください」
送信する。
しばらくして返信が来た。
《カルナ:待たされるのは好きじゃない》
「……」
短い一言だった。でも雰囲気は伝わった。余裕がある。急かしている。こちらが悩んでいることを、たいしたことだと思っていない感じがした。
「……そういう相手か」
管理画面を閉じた。
やることが増えた。守りだけじゃない。攻めの動きも考えなければいけない。
まだ受けない。でも、いつか受ける。その時までに、答えを出す。
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