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第3話 古参と新参


Fランクになってから、来る冒険者の質が変わった。


以前はGランクだった。動きが読みやすくて、罠にかかりやすくて、アルスが前に出れば大抵は引き返した。


でも今は違う。


「……強い」


管理画面越しに見ていた。3人組のパーティ。全員Eランク。装備が違う。動き方が違う。罠を踏んでも体勢を崩しにくい。毒針の効きも遅い。


ゴブリン小隊が前に出た。でも押されている。ホブゴブリンの小隊長が割って入った。それでもじりじりと後退していく。


「アルス、右から——」


指示を出す前にアルスが動いた。でも3人のうちの1人がアルスに集中して、残り2人が小隊を崩しにかかっている。アルスが1人を相手にしながら全体を見るのは限界がある。


「……ブレイブ」


ブレイブが入口付近から動いた。ゆっくりと、でも確実に。2人の前に立ちはだかる。剣が当たる。岩肌に傷が走る。でも動かない。


「くそ、固い」


「押せ!」


2人がブレイブを押そうとした。でもブレイブは一歩も退かない。その間にゴブリン小隊が立て直した。


「エリン、今」


エリンが木の陰から飛び出した。光弾が走る。1発が侵入者の剣を弾いた。2発目が足元に当たる。3発目がホーンラビットの突進と重なった。


体勢が崩れる。


そこにウルフが走った。


黒いウルフが通路の側面から飛び出して、崩れた体勢の侵入者の間を抜けた。体当たりではない。ただ走り抜けただけだ。でも2人の足がもつれた。


白いウルフが続いた。後退させる。退路を塞ぐ。


「撤退だ!」


3名が引き返した。


——侵入者が撤退しました。DP:+44。


「……勝った」


辛勝だった。アルスが疲弊している。ブレイブに傷がある。エリンの魔力が落ちている。


「コアさん、開始時点の勝率って何%だった?」


「……41%でした」


「41か……」


まだ足りない。アルスへの負担が大きすぎる。もっと層を厚くしないといけない。


「ウルフって、ああいう使い方するんだな」


突進じゃなくて、崩す。体勢を崩して、他のモンスターに繋ぐ。ゴブリン隊とは違う役割だ。


管理画面にメモを打ち込んだ。


---


夜、管理画面を整理していると通知が来た。


「進化条件を達成しているモンスターが複数います」


「……何体?」


「ゴブリン5体・ピクシー5体・コウモリ3体・ホーンラビット2体・ジャイアントラット2体です」


「……全部は今日じゃなくていいか。ゴブリンとコウモリだけ進化させよう」


ゴブリン5体を承認する。光が包んで、次々とホブゴブリンになった。小隊長の数が一気に増える。アルスの指揮系統が厚くなる。


コウモリ3体を承認する。翼が黒く染まって、シャドウバットになった。影への潜伏能力が上がる。


「残りは様子を見てから」


管理画面でモンスター総数を確認した。


アルス(ホブゴブリン):1体。ゴブリン:3体。ホブゴブリン:7体。ピクシー:13体。エリン(スプライト):1体。クレイゴーレム:4体。ブレイブ(クレイゴーレム):1体。シャドウバット:5体。コウモリ:3体。ホーンラビット:6体。ジャイアントラット:8体。ウルフ:5体。


合計57体。


次に召喚エリアの項目を開いた。


「コアさん、召喚エリアって追加で購入できる?」


「はい。1日1体召喚エリアの購入が可能です。ゴブリン用は消費DP250、ピクシー用は消費DP150です。それぞれ通常召喚コストの50倍になります」


「……高いな」


今のDP残高は725だ。2つ買えば400DP消える。残り325になる。


「毎日1体補充されるってこと?」


「はい。設置したエリアで対象種族が1日1体自動召喚されます」


50日で元が取れる。でも今すぐ400DPが消える。もし強い侵入者が連続で来たとき、罠のリセット費用も出せなくなるかもしれない。


「……やめておくか」


でも、さっきの戦闘を思い出した。ゴブリンが押されていた。アルスに負担が集中していた。消耗戦になるたびに補充に費用がかかる。毎日自動で増えるなら、長期的には絶対に正しい。


それに、今日みたいな戦闘がまた来る。必ず来る。


「……買う。ゴブリンとピクシーで2つ」


ゴブリン用:消費DP250。ピクシー用:消費DP150。合計400DP。承認する。


DP残高:325。


「……減った」


手が少し止まった。325しかない。でも後悔はない。明日からゴブリンが1体、ピクシーが1体補充される。消耗しても翌日には戻ってくる。


しばらく管理画面を眺めた。


アルスが3層目の入口で待っていた。


「……今日も頑張ってくれたね、アルス」


アルスは低く喉を鳴らした。


「主」


「そう、私が主。……明日からもよろしくね」


アルスはそのまま、静かに入口の前に立った。


今日も、いつもの場所に。


お読み頂きありがとうございます。

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