第2章 第2話 ミッション
朝、管理画面を開いてまずモンスターの状態を確認した。
ホブゴブリンの小隊長2体が1層目を巡回している。進化してからしばらく経つ。戦力としては十分に機能している。でも——
「おはよう」
2体はこちらを向いた。でも何も言わなかった。低く唸って、また巡回に戻った。
アルスだけだ。言葉を話すのは。
改めて確認すると、やっぱりそうだった。同じホブゴブリンなのに、アルスだけが違う。進化の仕方も、動き方も、目の奥にあるものも。
「……本当に何者なんだろうね、アルスは」
アルスは巡回中だった。ゴブリン小隊を率いて通路を歩いている。その背中に向けてつぶやいた。
アルスは振り返らなかった。でも耳が少しだけ動いた。
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管理画面に新しい通知が来ていた。
《ミッションを受信しました》
《ダンジョン対戦を1回行え》
《報酬:SP15・DP500》
「……来た」
昨日DコアLv3を解禁してから、ずっと来るだろうと思っていた。新人ダンジョンマスターへの対戦ミッション。ダンフェス後の活性化期間中に出るやつだ。
SP15とDP500。
今のSP残高は5だ。クリアすれば20になる。DコアLv4が視野に入る。DP500も素直にありがたい。
でも今すぐじゃない。
「コアさん、対戦って相手のダンジョン構成って事前に分かる?」
「挑戦状を送るまで詳細は分かりません。ただしランキングとダンジョンランクは閲覧可能です」
「……ランクだけか」
情報が少ない。相手のモンスター構成も、罠の有無も、層数も分からない。ランクだけで判断しないといけない。
自分より下のランクを選べばいい。でも下だからといって弱いとは限らない。1章でそれは身に染みた。
「もう少し戦力を整えてから動く」
管理画面のメモ欄に書き込んだ。
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別の通知も来ていた。
《コアネット:フォロー数が増加しました》
《現在フォロー数:12》
「……12人」
ダンフェス前はほぼゼロだった。ダンフェスで顔が出て、少し増えた。でもまだ12人だ。
「コアさん、フォロー数って何かミッションに関係する?」
「……一部のミッションはフォロー数を条件としています」
「どんなミッション?」
「……現時点では非公開です」
「そっか」
頭の片隅に置いておく。フォロー数が増えると何かが解禁される。それだけ分かれば十分だ。
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今日のメインはこれだった。
管理画面の召喚リストを開く。
Fランクになってから、リストに新しい種族が追加されていた。ウルフ。ホーンボア。インプ。プチエンジェル。アンデット系。
一つずつ確認していく。
ホーンボア。猪系。突進力が高い。でも取り回しが難しそうだ。今は後回し。
インプ。悪魔系。魔法攻撃ができる。でもピクシーとエリンがいる。今は後回し。
プチエンジェル。天使系。見た目は可愛い。でも精霊系と役割が被る。後回し。
アンデット系。スケルトン、ゾンビ、ゴースト。雰囲気の幅は広がる。でも今のダンジョンの方向性とは少し違う気がする。後回し。
最後にウルフ。
狼系。すばしっこい。群れで動く。前衛として使える。ゴブリン隊とは違う動き方ができそうだ。
「ウルフ、5頭買おう」
消費DP:15×5体=75DP。
承認する。
召喚エリアに光が集まった。5頭のウルフが現れた。体高はゴブリンより少し低い。でも筋肉の質が違う。素早そうだ。
ゴブリンたちがざわめいた。ウルフたちはそれを無視して、互いに鼻を突き合わせている。
その中で、1頭だけ毛並みが真っ白なウルフがいた。もう1頭は逆に、他より明らかに黒い。
「……コアさん、あの白いのと黒いの、なんか特別?」
「……他のウルフと同じです」
「そっか」
でも目が離せなかった。白いウルフは群れの中でも少し落ち着いていて、黒いウルフはやけに鋭い目をしている。
アルスが近づいた。ウルフたちがアルスを見た。一頭が低く唸った。アルスはそれを見て、短く唸り返した。ウルフたちがおとなしくなった。
「……また自分でやってる」
ルナリアはため息をついた。呆れてはいない。もうそういうものだと思っている。
管理画面を閉じた。
洞窟の奥で、ウルフたちが低く鳴き交わしていた。
黒い毛並みのウルフが先頭を歩いていた。白い毛並みのウルフは、少し後ろからついて歩いていた。
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