第1話 DコアLv3解禁
2章開幕
朝が来た。
目が覚めて、最初にしたのはいつも通り管理画面を開くことだった。
DP残高を確認する。自然回復分が加算されている。侵入者の記録を確認する。昨夜の撃退分のDPが入っている。モンスターの状態を確認する。全員問題ない。
「……今日も普通の朝だな」
Fランクに昇格してから数日が経った。ダンフェスの余韻はまだある。でも毎日やることは変わらない。侵入者が来る。撃退する。素材を集める。モンスターを育てる。
管理画面の左上に、コアネットのアイコンがある。ダンフェス期間中だけ使えた掲示板は、もう閉じている。でもDM通信とランキング閲覧は使える。
ランキングを開いた。
430位。変わっていない。ランキングは次のダンフェスまで動かない。分かっていたことだ。でも見るたびに、少しだけ気が重くなる。
シエル。398位。
「……32位差か」
管理画面を閉じようとしたとき、SP残高が目に入った。
SP:20。
Fランク昇格報酬で受け取った分だ。1章の終わりにSP10を全部Dコアに振った。その後ミッション報酬でSPが溜まって、Fランク昇格でさらに20もらった。今は20ある。
スキルツリーを開く。
Dコア権限レベル。Lv3への解禁コスト:SP15。
「……上げようか」
迷いは少なかった。8話でSP10を全部Dコアに振ったとき、「フレーバーテキスト入力機能」しか解禁されなかった。損だと思った。でも今は思う。損じゃなかった。
承認する。
——Dコア権限レベルがLv3になりました。新機能が解禁されました。
「何が使えるようになったの?」
「モンスターへの簡易指示機能です。管理画面から各モンスターに基本行動の指示を——」
少し、間があった。
「……コアさん?」
「……おはようございます、ルナリア」
ルナリアは動けなかった。
説明の途中だった。なのに、突然。
「……今、何て言った?」
「……おはようございます」
また言った。今度は少しだけ、ゆっくりと。まるで言葉の形を確かめているように。
「それって、機能の一部?」
「……分かりません」
分からない。コア自身も分かっていない。
でもルナリアは、泣きそうになった。
理由が、自分でも分からなかった。ただ、この声で、この名前を呼ばれたことが——
「……おはよう、コアさん」
「……おはようございます、ルナリア」
今度はすぐに返ってきた。
しばらく、何も言えなかった。アルスは「主」と呼ぶ。エリンは鳴く。ブレイブは喋らない。ルナリアという名前を呼ぶ存在が、今までいなかった。
「……ありがとう」
「……了解しました」
いつもの返事だった。でもそれが、少しだけ嬉しかった。
SP残高:5。
ダンフェスが終わって、Fランクになった。シエルとの差は32位。やることはまだ山ほどある。
でも今日は、それだけでいい気がした。
管理画面を閉じた。
アルスがそばに来て、座った。
「……コアさんが名前を呼んでくれた」
アルスは低く喉を鳴らした。
「嬉しかった」
アルスはじっとルナリアを見ていた。
「……主」
「そう、私が主。今日もよろしくね」
洞窟の奥で、エリンの鈴の音がした。ブレイブが入口付近に立っている。
精霊の遊庭は今日も、静かに動いていた。
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