第21話 第1回ダンフェス
20260717改稿
正午の、通知が来た。
《ライブリンク・フェスティバル・オブ・ダンジョン、第1回を開催します》
管理画面が、切り替わった。
いつもの画面じゃない。広い空間のような映像が広がって、その中に、光の粒が無数に浮かんでいる。
「……これが、強制投影」
《回答:はい。現在、全ダンジョンマスターに同時投影されています。なお、ダンフェス期間中は、コアネットの掲示板機能が一時的に解放されます。期間終了後は、再び使用不可となります》
つまり、今この瞬間、これと同じものを見ている誰かたちが、世界のどこかにいる。どこにいるのか、何者なのか、まったく分からない。でも、確かに、いる。
浮かんでいた光の粒が、集まり始めた。何かが、形を成していく。
声が、聞こえた。
「はいはい、お疲れー。第1回ダンフェス、始めるよー」
無機質では、ない。でも、人間の声でも、ない。どこか遠いところから響いてくるようで、それでいて、妙に、軽い。
「私が担当神のニルムでーす。今後もよろしくー」
「……担当神」
もっと、厳かなものを想像していた。全然、違った。
「今回も死んだ子多かったねー。新人ちゃん、50人来て30人残りかー。まあ、そんなもんか。じゃ、ランキングいこっか」
50人来て、30人。
今期だけで、20人が、いなくなった。
20のダンジョンが消えて、20のコアが砕けて——うちで言えば、アルスもエリンもブレイブも、全部が消えた場所が、20箇所ある、ということだ。
それを、「まあ、そんなもんか」と言ってのける存在が、この世界を、管轄している。
忘れないでおこう、と思った。この軽さを。この世界の、この温度を。
「あ、そうそう。現時点の総数はねー、新人ちゃん含めて、ぜんぶで453人でーす。それじゃ、ぱぱっといくよー」
453人。
昨日から引っかかっていた数字が、埋まった。埋まった瞬間、別の問いが、胸の奥で音を立てた。
453人の、何位なんだろう、私は。
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画面に、順位が表示され始めた。
1位。
《エルラド》
名前だけ、だった。顔も、ダンジョン名も、何も出ない。ただその名前だけが、他と違う色で、表示されていた。
「……エルラド」
説明は、何もなかった。なのに、画面越しに、分かった。この名前には、誰も挑まない。1位という数字より、その名前の「出し方」の方が、異様だった。
順位が、続いていく。2位、3位——名前が出て、顔が映る。どの顔も、何かを持っている顔をしていた。
100位台。200位台。300位台。
自分の名前は、まだ、出ない。
398位。
《シエル》
銀髪の、鋭い目つきの子だった。プライドの高さが、顔に出ている。でも、弱さを隠すためのプライドには、見えなかった。強さを、当然のものとして持っている。そういう顔だった。
《Eランクに昇進》のテロップが、名前に重なる。
「あ、新人ちゃんの中でEランク昇進はシエルちゃんだけかー。おめでとー」
「……同期で、トップ」
同じ時期に目覚めた30人の中の、一番上。同い年くらいに見える、知らない女の子。
画面は、続く。
420位。425位。428位。429位——
430位。
《精霊の遊庭:ルナリア》
自分の名前が、出た。顔も、映った。小柄な少女が、429人の後ろに、並んでいる。
453人中の、430位。
一番下じゃないといいんだけど、と昨日、言った。
一番下では、なかった。でも、前から数えるより、後ろから数えた方が、ずっと早い場所だった。
自分でも不思議なくらい、静かに、その数字を受け取れた。悔しさが、ないわけじゃない。でも、それより先に、思ったことがあった。
50人来て、30人。私は、残った30人の中に、いる。
後ろから数える順位でも、この順位表に、名前がある。うちは、ある。アルスがいて、エリンがいて、ブレイブがいて、みんながいて、誰も欠けずに、今日まで来た。
順位は、これから上げればいい。命は、取り返せないけど、順位は、取り返せる。
《Fランクに昇進》
名前に、テロップが重なった。
「……あ」
Gランクじゃ、なくなった。
後ろから24番目で、Fランク昇進。ちぐはぐな二つが並んで、少しだけ、笑ってしまった。世界は私を後ろの方に置いて、それでも、一段だけ、上がっていいと言っている。
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「はい、次ー。新規のダンジョンマスターちゃんたちの紹介ねー」
画面に、今期の新規30人が映し出された。自分も、その中にいる。シエルの顔も、あった。
「最後にコアネット解放だねー。ランキング・掲示板・マスター間通信が使えるようになるよー。掲示板はダンフェス期間中だけだから気をつけてね。新人ちゃんたちは、初めてだと思うから、色々触ってみてー。それじゃみんな、良いダンジョン経営を」
ニルムの声が、消えた。
画面が、いつもの管理画面に戻る。左上に、新しいアイコンが増えていた。《コアネット》。
開いてみる。ランキング一覧。掲示板。マスター間通信。
掲示板を、開いた。もう、いくつかの投稿が並んでいた。
《Aランク昇格おめでとう》
《今期の新人、生き残り少なすぎでしょ》
《コアレベル上げてる人いる? 意味なくない?》
最後の投稿の前で、指が、止まった。
意味、なくない?
……似た問いなら、知っている。自分で、自分に聞いたことがある。SP10を全部使って、返ってきたのが一文のテキスト機能だけだった、あの夜に。
コアさん、意味あると思う?——返事は、なかった。
だから、自分で答えた。私は、あると思う、と。
世界中の誰が意味ないと言っても、あの答えは、もう出してある。
無駄だと、言われても。
ルナリアは小さく笑って、管理画面を閉じた。
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3層目の住居エリアに戻ると、アルスが、そこにいた。
「……終わったよ、ダンフェス」
アルスは、低く喉を鳴らした。
「453人中の、430位だった。……後ろのほうだけど、最後尾じゃなかった。Fランクにもなった。前より強くなった。それは、本当だと思う」
アルスは、じっと、ルナリアを見ていた。
順位の数字に、この子は、何の興味もないらしい。その目は昨日と同じで、明日も、たぶん同じだ。それが、少しだけ、心強かった。
「……これからも、よろしくね、アルス」
アルスは低く、短く、喉を鳴らした。
それから、言った。
「主」
ルナリアは、笑った。
洞窟の奥で、エリンの鈴の音がした。ブレイブは、入口の定位置に立っている。ゴブリンたちが、ぎゃーぎゃーと騒いでいる。
430番目の、コアレベルを上げる変わり者。
精霊の遊庭は今日も、静かに、動いていた。
——第1章 完——
お読み頂きありがとうございます。
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これで1章おわりですね。
以下コメントで書いていただければ、この先に登場するかもしれません。
今一番困ってますので
・ダンジョンマスター名
・ダンジョン名
・属性
・~系の魔物が多い、こういう戦術を使うとかも記載していただけると嬉しいです。




