第20話 ダンフェス前夜
ダンフェスまで、あと一日。
管理画面に事前通知が来ていた。
《明日正午、ライブリンク・フェスティバル・オブ・ダンジョンが開催されます》
《開催中は管理画面の一部機能が制限されます》
《強制投影が実施されます。拒否はできません》
「……拒否できない、か」
分かっていたことだ。でも改めて見ると、少し気が重い。
「コアさん、担当神って具体的にどんな存在なの?」
「ダンフェスを管轄する神です。この世界のダンジョンマスター制度を運営している存在とされています」
「神が運営してるんだ」
「はい。担当神の詳細はダンフェス当日に告知されます」
「……当日まで分からないんだ」
ルナリアはしばらく管理画面を眺めた。
明日、初めて他のダンジョンマスターの存在が見える。どんな人たちがいるのか。どのくらいの規模のダンジョンを持っているのか。ランキングで自分がどこにいるのか。
何も分からない。でも明日には分かる。
「ランキングの発表って、何位まで見せてもらえるの?」
「全員分が公開されます」
「全員……何人いるの?」
「現時点では非公開です。ダンフェス当日に告知されます」
「……何人いるか分からないのに順位だけ発表されるんだ」
「はい」
「……一番下じゃないといいんだけど」
ため息をついてから、管理画面を閉じた。
考えても仕方ない。明日になれば分かる。
---
2層目の森を見回った。
ピクシーたちが木の間を飛び回っている。エリンは進化してから、他のピクシーと少し距離を置いて行動するようになっていた。魔素の扱い方を練習しているらしく、木々の間で小さな光の渦を作っては消している。
「エリン、明日ダンフェスがあるから」
エリンはこちらを向いた。鈴の音のような声で一声鳴いた。
「その間は少し管理画面が使いにくくなるけど、よろしくね」
エリンは羽を一度広げてから、また光の練習に戻った。
1層目を確認した。
アルスが通路を巡回している。ホブゴブリンの小隊長2体がその後ろについている。ゴブリン隊が配置につく。ラット隊が壁際を走る。シャドウバットが影に潜む。
全部、自然に動いている。
ブレイブは入口付近に立っていた。いつもの定位置だ。動かない。ただそこにいる。でも昨日の侵入者戦で、また体を張って小隊を守った。傷は塞がっている。
「……ブレイブ、明日もよろしくね」
ブレイブは答えない。でも立ち方が少しだけ、堂々としているように見えた。
---
3層目の住居エリアに戻った。
ベッドに腰を下ろして、ぼんやりと考えた。
目覚めた日のことを思い出した。岩肌の洞窟。47DP。誰もいない。「……誰か」と呼んでも返事がなかった。
今は違う。
アルスがいる。エリンがいる。ブレイブがいる。ゴブリンたちがいる。ピクシーたちがいる。ラット隊がいる。コウモリが飛んでいる。洞窟が賑やかになった。
「……ここまで来たんだな」
誰に言うでもなく、つぶやいた。
アルスは巡回している。ブレイブは入口付近で立っている。エリンは魔素の光で遊んでいる。
「……大丈夫」
ルナリアは小さく呟いた。
ダンフェスまで、あと一日。
お読み頂きありがとうございます。
続きが気になる方は【評価】や【ブックマークに追加】を是非とも宜しくお願いします。
もうルナリアは一人じゃありません。




