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第12話 偵察


ジャイアントラットを5体召喚することにした。


理由は単純だ。アルスが昨日、未探索エリアを迷わず進んでいた。偵察能力の高い種族と組み合わせれば、もっと広い範囲をカバーできる。


以前は使い方が思いつかなかった種族だ。でも今は違う。


管理画面の召喚リストを開く。消費DP:5×5体=25DP。承認する。


召喚エリアに光が集まった。5体のジャイアントラットが現れる。体長はルナリアの膝くらい。灰色の毛並みで、鼻をひくひくと動かしながら周囲の匂いをかいでいる。


「……思ったより大きいな」


ゴブリンたちがざわめいた。珍しい種族が来たからか、少し距離を置いている。


でもアルスは違った。


ラットたちの方へ歩いていって、一体一体の前で立ち止まった。ラットたちはアルスを見上げて、それからおとなしくなった。


「……もう指示系統に入れたの?」


アルスは振り返らなかった。でも低く喉を鳴らした。


ラットたちがアルスの周りに集まった。


「コアさん、ラットの偵察能力ってどのくらい?」


「未探索エリアに先行させることで、地形・素材・モンスターの有無を事前に把握できます。アルスと連携させることで索敵範囲が大幅に向上します」


アルスはもうラットたちを連れて2層目へ向かっていた。指示を出した覚えはない。でも動いている。


「……ほんとに何者なんだろう」


ルナリアはその背中を見送った。


---


ラットたちが偵察に出ている間、アイテム欄を開いた。


宝箱から取れた精霊石が入っている。「ピクシーに合成することで能力向上が見込まれます」という説明文があった。


「……試してみようか」


ピクシーたちを呼んだ。8体が天井近くからふわふわと降りてくる。鈴の音のような声で鳴き交わしながら、ルナリアの周りを飛び回った。


精霊石をピクシーたちの前に差し出してみた。


最初は誰も近づいてこなかった。様子を見ている。


でもしばらくすると、1体が近づいてきた。他のピクシーより羽の輝きが少し強い個体だ。


精霊石に近づいて、くんくんと鼻を動かす。それから小さな手で触れた。


その瞬間、精霊石が一瞬だけ光った。


「……え」


他のピクシーたちが一斉に距離を取った。でもその1体だけは離れなかった。精霊石をじっと見つめている。


「コアさん、今の」


「……素材との反応を確認しました。詳細は把握できません」


「反応はした、ってこと?」


「はい」


ルナリアはそのピクシーを見た。精霊石をまだ触っている。欲しいのか、気になっているのか、どちらなのか。


「……あげる?」


ピクシーがこちらを見た。鈴の音のような声で一声鳴いた。


合成を試みる。管理画面で対象のピクシーを選択して、精霊石を合成素材に指定する。承認する。


光が、ピクシーの体を包んだ。


派手な演出はない。ただ、さっきより羽の輝きが少し強くなった気がした。体のサイズも変わらない。見た目はほぼ同じだ。


「……何が変わったの?」


「魔力量が微増しています。それ以外の変化は確認できません」


「微増か……」


大した変化じゃない。でも精霊石は消えた。合成は成功したらしい。


そのピクシーはしばらくルナリアの周りを飛び回ってから、他のピクシーたちの元へ戻っていった。


「……名前、いつかつけようかな」


まだ早い気がした。もう少し一緒に過ごしてから、決めよう。


---


夕方、管理画面に通知が来た。


《偵察完了》

《新規素材:薬草×4・木材×6を確認》


アルスとラット隊が戻ってきた。5体とも揃っている。


「……お疲れ様、アルス」


アルスは低く喉を鳴らした。ラットたちもアルスの周りに集まって、鼻をひくひくさせている。


「コアさん、木材って罠に使えるって言ってたよね」


「はい。木材を素材に加えることで罠の耐久性と威力が向上します」


「……じゃあ全部使おう」


管理画面を開き直した。


「……便利だなあ」


誰に言うでもなく、つぶやいた。

 アルスは短く喉を鳴らした。

 まるで当然だと言うように。

お読み頂きありがとうございます。

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