表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/40

第11話 森の奥

お読み頂きありがとうございます。

続きが気になる方は【評価】や【ブックマークに追加】を是非とも宜しくお願いします


翌朝、管理画面を開いてまず2層目を確認した。


アルスは未探索エリアの手前で止まっていた。昨夜からそこにいたのか、今朝また向かったのか、分からない。ゴブリンたちはアルスの後ろに並んで、同じ方向を見ていた。


「……待ってたの?」


独り言だった。でもなんとなく、そう聞きたくなった。


管理画面を閉じて、ルナリアは立ち上がった。


今日は自分で降りることにした。アバターではなく、本体で。準備期間が終わって以来、外には出ていないが、ダンジョン内は自由に動ける。


2層目の森に降りると、空気が変わった。


洞窟とは違う匂いがする。土と葉と、魔素が混ざった独特の空気だ。木々の間から魔素の光が差し込んで、地面にまだら模様を作っている。


「……思ったより広いな」


管理画面で把握していたつもりだったが、実際に立ってみると感覚が違う。天井が高い。通路じゃなくて、本当に森だ。


アルスがこちらを見ていた。


「……案内してくれる?」


アルスは振り返って、歩き始めた。


ゴブリンたちがついていく。ルナリアもその後を歩いた。


---


ピクシーが配置されているエリアを過ぎると、木々の密度が上がった。


足元に根が張り出している。枝が低く垂れている。管理画面の地図では「未探索エリア」と表示されている場所だ。


アルスは迷わず進んでいく。


「……本当に知ってるみたいに歩くね」


アルスは答えない。


しばらく進むと、木々が開けた。


小さな空間だった。岩に囲まれた、丸い広場のような場所。天井の岩肌から魔素の光が滲み出ていて、他の場所より少し明るい。


そして奥に、小さな洞があった。


「……洞窟?」


近づいてみると、岩の窪みの中に何かが置いてあった。


丸い、球体の宝石だ。


握りこぶし大ほどの大きさで、透明に近い。でも内側に何かが揺れている。光、というより、もっと深いもの。眺めていると、引き込まれそうな感覚がした。


「コアさん、これって何?」


「……分析できません」


「分析できない?」


「はい。既存のデータに該当する素材がありません」


ルナリアはしばらく宝石を眺めた。綺麗だ。でも何なのか分からない。


手を伸ばしかけたとき、アルスが先に動いた。


宝石をそっと拾い上げて、ルナリアに差し出した。


「……私に?」


アルスは低く喉を鳴らした。


受け取る。思ったより軽かった。でも手のひらの中で、かすかに温かい気がした。


「……ありがとう、アルス」


アルスはそのまま、広場の真ん中に立って周囲を見渡した。何かを確認しているような立ち方だった。


ゴブリンたちも散らばって、周囲の気配をうかがっている。


「……ここ、何かあるのかな」


管理画面を開く。《新規エリアを発見しました》という通知が来ていた。


《採取可能素材:なし》

《モンスター出現:なし》

《特記事項:魔素濃度が局所的に高い》


「魔素濃度が高い……」


周囲の空気が少し違うのは、そのせいかもしれない。でもなぜここだけ高いのか、分からない。


ルナリアは手の中の宝石をもう一度見た。


内側で何かが揺れている。光ではない。でも確かに、何かがある。


「……倉庫に入れておこう。後で使い道を考える」


管理画面のアイテム欄に収納した。


---


帰り道、ルナリアはふと気づいた。


アルスが先導していたとき、探索の速さが普通じゃなかった。どこに何があるか分かっているように進んでいた。でも管理画面の地図では未探索エリアのはずだ。


「コアさん、ジャイアントラットってどんな特性があるの?」


「偵察・索敵能力が高い種族です。未探索エリアの先行調査に向いています」


「……偵察」


アルスを見る。アルスは黙って歩いている。


「アルスがジャイアントラットと一緒に偵察したら、どのくらい範囲が広がる?」


「試算できません。ただし偵察範囲は大幅に向上すると予測されます」


「……なるほど」


頭にメモしておく。ジャイアントラットの召喚を検討する。


---


3層目の住居エリアに戻って、ルナリアはベッドに腰を下ろした。


アルスが入り口で立ち止まった。今日はここまでだ、という意思表示のように見えた。


「今日はありがとう、アルス」


アルスは低く喉を鳴らした。


「……あの宝石、何なんだろうね」


アルスは少しだけ、首を傾げた。


知っているのか、知らないのか。分からない。


でも確かに、アルスがあの場所に連れていってくれた。あの宝石を、自分に渡してくれた。


理由は分からない。

 でも今は、それだけで十分だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ