試作品
コンコン…。
部屋がノックされる。
「どうぞ」
「失礼します。回路開発の明石です。」
「お呼び出ししてすみません。先程のプレゼンを拝見させてもらって、あなたの技術をこれに搭載出来ないかと思いまして…。」
そういって、先日「アンサラー (Answerer)」から借りてきた「エアマスク」を見せた。
「これは…?」
「うちと同じくタチバナ・ホールディングス傘下のアンサラー (Answerer)という会社で試作したエアマスクです。」
お父さんに、エアマスクの事を説明した。
「なるほど、単なるマスクとしては高価だけど、これをスマホにしてしまえば、高くは感じないかも…と言う事ですね。」
「えっ?」
そこまで考えてなかったわ…
「ちょっと見せてくださいね。ふむふむ…。あー、こうなってるのか…。」
お父さんは、エアマスクを手に取ると、いろいろな角度からシゲシゲと観察し始めた
「う~ん、1ケ月、いや、2週間、これをお借りできますか?。」
「えっ?、そんなに早く?」
「ハリボテみたいな感じになりますけど、とりあえず、組み合わせてみましょう。」
「お願いします。」
なんだか、面白そうなものが出来上がって来そうな気がした。
・ ・ ・ ・ ・
お父さんは、昔から、いろいろなモノを組み合わせて、見た事もないモノを作ってしまうのが得意だった。
家の中でも、いろいろなものを見せられてきた。その度に、驚きと、ワクワクに、ときめいたものだ。
だから、今回も、そんな驚きがあるような気がしてワクワクしていた。
・ ・ ・ ・ ・
2週間後、試作品が出来上がってきた。
装置を肩にかけ、スクリーンを強力な磁石でパチっと貼り付ける。
首元のスイッチを押すと、正面に「Start」と書かれた大きなボタンが浮かび上がってきた。
「眼の前に「Start」ってボタンが、宙に浮かんでいるのが見えるかと思います」
「はい、浮かんでます」
「それを、空中で指でタッチしてみてもらえますか?」
指で空中に浮かんでいるボタンに触れる操作をしてみた。
押した感触までは味わえなかったものの、
カチッとボタンを押したような音がして、画面が変わった。
画面の端の方にいくつかのボタンが浮かんでいる。
「先日の視力矯正アプリも入っていますので、メガネの代わりにも使えますが、
顧問は目がよろしいようですので、他の機能をデモンストレーションします。」
「近くにあるモノの前で、二本の指を使って、拡大するような操作をしてもらえますか?」
やってみると、その場所に丸いウインドウが現れて虫眼鏡のように眼の前のモノが拡大された。
「わぉ!」
なんか、おもしろい
「次は、両手で筒のようなカタチを作って、そこを覗き込んでもらえますか?」
やってみると、手で作った筒が望遠鏡のようになっていて、遠くの景色を大きく見る事が出来た。
「おぉ!」
おもしろい、おもしろい
「そのまま、両手の間隔を前方に離してみてもらえますか?」
両手の筒の間隔を離してみると、動かした量に合わせて更に景色が大きくなった。
まるで、望遠鏡を操作してるみたい。
「へぇ…」
「今度は、この真っ白なノートを手に持って、ノートの上をトントンと叩いてもらえますか?」
やってみると、ノートの上に、タブレット端末のような画面が表示され、そこに表示されているアイコンをタッチすると、普通に使う事が出来た。
「うわぁ!」
ちょっと予想外。なんか、すっごく、おもしろい。
紙のノートがタブレット端末になったような感じだ。スマホ用に作られたゲームを、普通にプレイする事が出来た。反応速度も悪くない。
「いろいろなサイズのノートを用意しておきましたので、それぞれで試してみて下さい。」
やってみると、ノートの上に表示される画面には、周囲に一定の大きなの額縁が出来ていて、
大きなノートだと大きな画面、小さなノートだと小さな画面になった。
大きなスケッチブックのようなノートを使うと、めちゃくちゃ大画面で使う事が出来た。
ただ指の周囲の画像が少し薄くなっていたのが難点だろうか…。
「TPOに応じて好きな画面サイズで使う事が出来るという訳です。これで、今まで、スマホやタブレット端末で出来ていた事は代用出来ます。
ただ、使って頂いて感じられたかと思いますが、この映像は、目の前のスクリーンに投影されているものですので、
指の周囲を淡く表示させないと、自分の指が見えなくなるという問題があり、指の周囲だけ淡く表示させています。
そういうところが、今までとは、同じに出来ない部分と言えるかと思います。
最終的には、この端末ならではのUIを用いたアプリが増えてくれる事が望ましいでしょう。」




