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自分が大嫌いで人生詰んでた私、超御曹司と入れ替わって価値観がバグる  作者: 秋月心文


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長い夢

その日の私は、とても長い夢を見た。今まで見たことがないくらい長い長い夢だった。

まるで、何年も眠り続けたかのような…、それほどに長い夢だった。


夢の中の私は、この国で5本の指に数えられるほどの大財閥タチバナ・ホールディングスの総帥の御曹司として生を受けた。

名前は、(たちばな) 明和(ともかず)。山羊座のO型。


多忙な両親と合う機会は少なく、赤子の頃からはじまり、大学卒業までの学校生活を経て、社会人になるまで、乳母や、執事、ボディガードといった人たちと過ごした時間がほとんどだった。


お父さんは、大財閥の総帥で、仏頂面の強面な上、口数が少ない事もあり、何を考えているのかよくわからない感じがする。


お母さんは、女優をしていて、演技力の素晴らしさはもちろんだが、とても愛らしい姿と声で、とても有名だ。

私は、そのお母さんに似たらしく、男でありながら、とても愛らしい顔つきをしていた。

声も、男の子の声にしては、少し高めで、少し甘い感じのする声をしていたので、よく女の子と間違えられた。

お母さんは、そんな私に、女の子っぽい格好をさせたがった。最初は嫌がった。

もう、何度も何度も続いたので、いつしか、私の髪型は、男の子とも、女の子ともとれるような髪型が定番になっていった。


社会人になった今でも、お屋敷のような実家で暮らしていた。

最近の私は、子供の頃から、面倒見のよい専属の執事と、ボディガードがいて、彼らを伴い目立たない車で送り迎えを受け、週に2回だけ所属する会社に顔を出すだけで給料が出る…という生活をしていた。

会社は、大財閥タチバナ・ホールディングスの系列の中小企業だが、いずれの会社でも、会社での肩書は、特別顧問らしい。

大学を卒業して三年も経っていない私が…!?。


こうして24歳までの人生を過ごしてきた。…という夢を見た。


とてもリアルで、実体験のように感じられた。

何もかも恵まれている訳ではなかったが、今までの自分とは、全く違う出来事の連続は、全てが新鮮だった。

さっきまで、死んでしまいたいと考えていた気持ちは、自然と、どこかに行ってしまった。


・ ・ ・ ・ ・


夢から覚めた私の眼の前は、どこかで見た事があるような部屋の中にいた。

さっきまで見ていた夢の中で見た部屋…のような気がする。

いや、もしかすると、まだ夢の中なのかもしれない…。


モノトーンで、とても、シンプルな部屋だ。

家具は少ないが、必要最低限なものが揃っていて、細かいものがキッチリ収納に収まっている。

部屋の中は、ホコリもほとんど見当たらないほど、キレイに掃除されている。


部屋にある姿見には、とても可愛い子が映っている。夢の中で見た私だ…。

よく見れば、昨日、学校に行く途中に見かけた可愛いコだった。

鏡の中の、その子は、私の体の動きに合わせて動く…。

おそらく、これが、今の私なのだろう…。


でも、不思議と違和感はなかった。

そう、夢の中で、私は、ずっとずーっと、このコだったのだから…。


あれ?、確か、夢の中では、男のコだったハズ…。

股間を覗いてみると、いつもの自分になかったモノがあった。

(うわっ…。)

思わず、赤面してしまった。


目が覚めてから、そんなこんなで、内心、驚きから冷めきらないのもつかの間、なんだか体が自然と動いていく。

意思に反して動いている訳ではないのだが、なんだか、そうしなきゃ…という意識が強く湧いて、自然と体を動かそうとしてしまうのだ。

この体の持ち主は、とても几帳面らしく、毎日、同じ時刻に起きて、毎日、いつも決まった流れで身支度をしているのだろう。

何年間も毎日、毎日行われたルーティン作業が完全に体に染み付き、体が覚えている…そんな感じなのだろうか。

ずぼらな私でも、抵抗なく、面倒なほど細かい身支度までこなしていく…。

体が自然に動いて気がついたら、ものすごくキッチリとした身支度が完了していた。


まるで、それを見ていたかのような丁度よいタイミングで、ドアがノックされる。

「どうぞ」

「おはようございます、明和ともかずさん」

そう言って部屋に入ってきたのは、12歳位年上でダンディな渋さが漂うイケメン執事の新崎(にいざき)さんだ。

執事というと「お坊ちゃん」と呼んできそうなイメージがあるが、実際は、そんな呼び方はしないものだ。

私自身は初対面だが、夢の中で一緒に過ごしてきた出来事はハッキリ覚えている。

おそらく、昨晩、夢と思っていたのは、この子の記憶なのだろう。

この子が、どうなったのかは知らないが、必要な記憶は、脳に記録されているから、何も不自由はなかった。


「お食事の用意が整いました」

「ありがとう」

そういって、私は、初めて歩くはずのタチバナ邸の中を記憶の通りにダイニングへと向かった。

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