絶体絶命
死を目前にすると、人は、過去を思い出すという。
――最後に、お姉ちゃんに会いたかったな――
お父さんのいない家の中で、唯一の私の理解者だったお姉ちゃん……。
何も言わなくても、い
いつも、私の気持ちを察してくれて、
いつも、優しくしてくれたお姉ちゃん……。
この明和の体には、お姉ちゃんとの想い出は刻まれてないハズだけど、思い出す事は、お姉ちゃんの事ばかり……。
「魂」に、刻まれてる、という事なのだろうか
最後に、お姉ちゃんに会いたかったな……。
もう、叶わぬ願いだと理解していた。
だけど、強く、深く、そう思った……。
そう願わずには、いられなかった……。
――強く大きな声が響いた――
「めぐみ!!」
ハッとした。
現実に呼び戻された。
改めて、声の方を見る。
お姉ちゃんだ。
大好きな、私のお姉ちゃんだ。
私のお姉ちゃん「明石 晶」だ。
なんでかわからないけど、装甲車に乗ってたようだ。
そして、隣には、明石めぐみの姿もあった。
なんで、こんなに危ないところに……。
お姉ちゃんたちは、
はじめてみる金髪の男性と、
長身の黒服の女性と、
明石めぐみ……の4人だけだ。
4人は、こちらに向かって駆けてくる。
正直、この状態を覆せるとは思えない。
でも、すごく、ホッとした。
そんな時、物陰に隠れていた男が銃を乱射した。
加地さんが、私に覆いかぶさるようにしてかばってくれた。
でも、相手は、連射していたので、私にも数発の弾丸が当たり、肌を抉った……。
その瞬間、ふと「世界」が、まるっと変わってしまうような感覚を覚えた。
そして……
――急にあたりが静かになった――
衝撃的な出来事に遭遇すると、それ以外は感じなくなると、何かで聞いた事がある。
これは、そういう事だろうか?
いや、違う……。
本当に静かになったのだ……。
ヤツらの姿が1人も見えなくなった。
ヤツらが乗って来た車や、バイクも無くなっていた。
上空を飛んでいたハズの、ヤツらのヘリでさえ……。
「やりすぎだ……」
「ごめん、わたしもそう思う……」
金髪の人と、お姉ちゃんが、そんな会話をしていた。
あ、そう言えば、お姉ちゃんは?
私と同じ方向にいたから、流れ弾が当たっていたかも……。
だけど、無傷だった。
お姉ちゃんも、
金髪の人も、長身の女性も、明石めぐみも……。
でも、加地さんは……
たくさんの弾を受け、完全に虫の息だった。
お姉ちゃんは、私に近づくと言った。
「今日は、元の体に、戻ってあげて!
あのコ、ちゃんとお別れをしたいみたいなの」
お姉ちゃんが、加地さんと、明和の事を言っているのだろうと察した。
「うん」
私が、そう言うと、お姉ちゃんが、私の肩をポンと叩いた。
途端、私の意識は、明石めぐみの体に戻っていた。
「あ、れ…!?」
そして、橘 明和は、自分の体で、加地さんの遺体の上に覆いかぶさり、大きな声で泣いていた。
思えば、私が、予定にない出社をしてなければ……
こんな事には、ならなかったかもしれない。
申し訳なさで、胸が苦くなった。
今夜、同乗してくれてた、私のボディガードは、全員死亡した。
今になって思えば、私の顧問解任は、こういう事にならないようにする為の処置だったのだろう。
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