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wonder! とある2人の恋愛事情  作者: かなたん


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85/87

第85話 結依、覚悟を決める①

旅行から帰って1週間後、私はレコード会社の会議室にいた。目の前には持田さん。


「結依ちゃん、本当にいいんだね?」

「はい、私が決めたことなので。悔いはありません。」

「そうだよね、結依ちゃんはそういう人だったもんね。分かった。手続き諸々やっておくね。」

「ありがとうございます。」


 そう言って私は、会議室を後にした。


「もったいないなぁ…」


 翌日。公式サイトに1件のお知らせが更新された。それに1番最初に気づいたのは志乃ちゃんだった。LINE通話が来た。


「結依さん!どういうことですか!」

「志乃ちゃん、落ち着いて。説明会開くから、それまで待って?」

「待てません!!!結依さんはそれでいいんですか!?」

「それも含めて説明するから」

「…分かりました。」


 そう言って通話が終わった。次が問題だな…。

公式サイトに更新された記事のタイトルが、


「平塚結依 卒業のお知らせ」


 だったからである。杏は公式サイトを見ないからな。多分気付かないだろ。杏は隣ですやすやと眠っている。その間に朝食でも作るか。


 私がお味噌汁を作っていると、杏の叫び声が聞こえた。


「何これ!?」


 ため息を吐き、出来上がったお味噌汁の火を止め、杏の元へ行く。


「結依これどういうこと!?」

「杏、そこに座って。説明するから。」


 むすっとしながら杏が私と向かい合う。私は続けた。


「…って理由があるの。私の夢。そこは理解してほしい。」

「わかんない。わかんないよ、そんなの…」


 杏が涙を流す。私は杏を抱きしめ、言った。


「今の関係が変わる訳じゃない。ただ、志乃ちゃんと沙耶香ちゃんが入ってきた今がチャンスなの。6人でも充分にやり遂げてきた。軌道にも乗ってきた。だから。ね?」


 杏は無言で涙を拭き、着替えてどこかに行く支度を始めた。


「どこ行くの?」

「事務所。持田さんに話しに行く。」

「持田さんは関係ないよ。持田さんを巻き込んじゃだめ。」

「だって…」

「今回は私の一存なの。お願い。杏には分かって欲しい。」

「…」

「それに、これから私は杏だけの物になるんだよ?それってかなりお得じゃない?」

「…うん。」

「ね。とりあえず朝ごはん食べよう。それで一緒に事務所に行こう。」

「うん…」


 事務所。そこにはwonderの全員が集まっていた。


「みんな、公式サイト見たかな?」

「はい…」

「見た通り、結依ちゃんはwonderを卒業します。」

「なんで、何ですか!?」

「その件については結依ちゃんから」

「えっとね、何から話していいか分からないんだけど、とりあえず、卒業します。理由としては、wonderを嫌いになった訳じゃない。むしろ愛してる。だからこそ、杏、志乃ちゃん、沙耶香ちゃん、浅倉さん、大森さんにはもっと活躍して欲しい。」


 志乃ちゃんが泣いていた。浅倉さんも、大森さんでさえ。私は続けた。


「別れってものはいつか来るもので。それが、卒業公演だっただけ。私がいなくてもwonderが輝くように。それを期待して、卒業します。」

「…」


 杏だけが難しい顔をしていた。ミーティングが終わり、杏と帰ろうとしたらもういなかった。今日の夕食の相談したかったのに。


 今日はエビフライにしようと、材料を買って家に帰る。空いていた。不用心な。


「杏?」


 杏が泣いていた。私はそっと杏を抱きしめる。


「ゆ、結依!?」

「杏、必死に我慢してたんだよね。ごめんね。ありがとう。」

「結依ぃぃぃぃ」


 泣きじゃくる杏の頭を私はずっと撫でていた。今だけはこうしていてあげよう。

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