↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
wonder! とある2人の恋愛事情  作者: かなたん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
84/87

第84 結依と杏、旅行する②

「さ、帰るよ!」

「杏の地元ってどこだっけ?」

「三崎口だよ。京急線。」

「じゃあ品川まで出なきゃいけないね。まず渋谷まで出て…」

「とりあえず渋谷まで出ようか。」

「そうだね。」


 秋を思わせる空気に私はホッとする。秋生まれだからだろうか。


「涼しいね。金木犀の香り、いい香り。」

「お、風情ある一言」

「私だって学ぶんですー。」

「はいはい。鍵閉めた?」

「閉めたよ。出発!」

「出発!」


 杏がナチュラルに手を繋いできた。私はその手を優しく握り返した。


 品川駅はひどい混みようだった。私ははぐれないように杏の手を強く握った。


「快速・三崎口行き、まもなく到着いたします。」

「泉岳寺から座ればよかったね」

「そうだねぇ。まぁ座れなかったら景色を楽しもうよ。」


 電車が到着する。席を確保した。


「座れてよかったね。」

「そうだね。」


 1時間と20分後、電車は三崎口に着いた。海の香りがする。入り口で叔父さんが待っていてくれた。


「叔父さん!」

「おー、良く来たな。結依ちゃんもここまでご苦労さん」


 私はぺこりと頭を下げた。


「よっしゃ、車乗りな。家行くぞ」

「はい。」


 車に乗り込む。相も変わらず手を繋いでいた。叔父さんはこちらを一瞥した後、車を発進させた。


 叔父さんの家は三崎口駅から車で40分のところにあった。綺麗な部屋だ。私は仏壇に手を合わせる。


「結依ちゃんありがとうなぁ、手ぇ合わせてくれて。」

「信心深いので」

「ほら、杏。そんな顔するな。りんごジュース。冷えてるぞ。」

「…ありがと。」

「今日はどうするんだ?」

「んー。久しぶりだし散策でも行こうかな。」

「そうだな。それがいい。」


 杏が私の服を引っ張る。着いてこいということだ。

 私はあえて問う。


「何?」

「いや、その」

「ん?」


 キスができる距離まで顔を近づける。


「一緒に…来て欲しい…」


 そう言う彼女の顔は真っ赤だ。私は頬にキスをした。


「よく出来ました。」


 頭を撫でる。あ、叔父さんの前だった。振り向くと叔父さんがニヤニヤしていた。


「まぁ、仲良くな、やってくれや。」


 そう言われちゃあしょうがない。仲良くやるしかないね。杏の手を引いて外に出る。


「んー!潮の香り懐かしい!」

「杏、18年ここにいたんだっけ?」

「私の家は金沢八景にあったから。」

「じゃあここは?」

「小さい頃によく来てたの。従兄弟と一緒にいっぱい遊んだなぁ。」


 そう言う杏の顔は、郷愁に満ちていた。


「ちょっと歩こっか。」

「うん。」

「手、繋ぐ?」

「スキャンダルになったらまためんどくさいから我慢する…」

「はい、了解」


 街を歩いていると、声を掛けられた。


「あの!wonderの平塚結依さんと市川杏さんですよね!?サインください!」

「あ、はい。はい、結依」

「…はい、どうぞ」

「わー!ありがとうございます!嬉しい!ずっとファンだったんです!」

「ありがとうございます!」


 笑顔で手を握る杏。こう言うところが上手くなって来たなぁと実感する。


「結依ちゃんも握手いいですか!?」

「いいですよ。ありがとうございます。新譜出すので聞いてね。」

「はい!」


 女の子2人はきゃいきゃい言いながら去っていった。こういうのを経験すると、改めて自分はアイドルなんだなぁと自覚する。


「ね、ねぇ、結依。ちょっと、人気のないところ行きたいな」

「何?どうしたの?」

「…キス、したくなっちゃった…」


 私の心が射抜かれた音がした。必死で人気の無い道を探す。あった。


「あそこ、人気ないよ?」

「うん…」


 人影に隠れると、いきなりキスをしてきた。


「んっ…ふっ…」

「んっ、ちょ、激しい…」

「結依が欲しいの…!叔父さんちじゃ出来ないから…」


 何度も激しいキスをする杏。そんなに欲求不満だったんだろうか。杏の手が私の下半身に近づいてきたので、流石に止めた。こんなところでやったら痴女である。


「それはだめ。やるなら屋内で。」

「じゃあホテル…」

「ここら辺無いでしょ」

「むぅ…」

「ちょっとの我慢だよ。ね?」

「うん…」


 叔父さんの家に戻ると、お寿司が2皿用意されていた。


「結依ちゃんにも三崎の寿司の美味しさを知って欲しくてね。ちょっと多めに出前取っちゃった。」

「ありがとうございます。お寿司大好きなので嬉しいです。」


 三崎の魚は確かに美味しかった。流石水産の街だ。

 美味しいお寿司に舌鼓を打った後は、杏待望のお風呂だ。


 服を脱ぎ浴室に入る。広くないか?どうなってるんだこの家。

 そしていきなり抱きしめられる私。そんなに欲求不満なのか?押し倒される。野獣の顔をした杏が目の前にいた。

 ――――――――暗転―――――――――――


「…私体洗うから。」

「うん!」


 さっきと違って生き生きとしている。人の気も知らずに。

頭と体を洗い、湯船に浸かる。湯船も広い。足が伸ばせて2人が入れるとかどんだけ豪華なんだこの家。


 お風呂から出て大広間でのんびりしていると、猫がやってきた。


「にゃあ」

「あら猫ちゃん。こんにちは。」


 猫が私の膝に乗る。


「結依、とらちゃんに気に入られたね。」

「この子とらちゃんって言うの?」

「そうだよ。」

「とらちゃん、こんにちは」

「にゃー」

「可愛い。杏みたい。」

「にゃにおう!」


 とらちゃんが去っていく。もうそろそろ寝る時間だ。


「さ、寝るよ。杏。」

「うん。眠くなってきた…」


 布団を敷いて中に入る。杏が入ってきた。


「一緒に、寝よ?」

「いいよ。」


 杏の体温がダイレクトに私の身体に伝わる。私は杏をぎゅっと抱きしめた。


「おやすみ」

「おやすみ…」


 今日はゆっくり眠るとしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。