第83話 結依と杏、旅行する①
なんだかんだで2ヶ月に渡る全国カバーライブが昨日の東京ドームで終わり、私たちは1週間の休みを貰った。
「あー、そこそこ。気持ちいい」
「後で変わってよ」
「分かってるって。それにしても杏は肩揉みが上手いねぇ。」
「もっと褒めて頂いてよろしくてよ?」
「上手い!上手い!上手い!上手い!」
「そういうことじゃなくて」
「うん、だいぶ楽になった。ありがとう。替わるね。」
「うっわ、杏の肩硬っ」
「肩使わないのにね。」
お互いの肩を揉み合っていると、杏の携帯が鳴った。相手は杏の叔父さんからだ。
「もしもし?」
「おー、杏か。元気してるか?」
「うん、元気してるよ。」
「たまにはこっち帰ってこいよ。涼しいぞー。うちに泊まればいいよ。な?」
「結依ー、叔父さんがたまには帰ってこいって。」
「じゃあ旅行だと思って、お言葉に甘えよっか。」
「うん。叔父さん、帰るよ。」
「お、じゃあ色々支度しとくな。」
「結依、明日から行くの?」
「そうだね、叔父さんがいいなら。」
「明日帰ってもいい?」
「おう!待ってるぞ…じゃあな。」
電話を切ると、もう結依は明日の支度をしていた。
「早くない?」
「忘れ物したくないから。」
「えらいね。じゃあ私も支度しよ。」
2人で黙々と準備をしていく。あ、充電器と安定剤入れとかないと。
「今日夜ピザにしようか。なんか荷造りで疲れちゃった。」
「いいね!ピザ食べたい!」
こんな他愛ない話が出来るようになったんだな、としみじみ思う。前に私の母親に刺された時、海に行く約束を果たせなかったので、今回の旅行は特別な、杏にとっていい影響を与える旅行にしたい。
結依はピザ屋のチラシを見ていた。
「サラミとコーンのマヨピザにしようかな。」
「私、新鮮!アスパラとベーコンのチーズピザにしよ!」
「「Lサイズでね!」」
同時に発言したことに、2人で笑いあった。
「んー、安定剤効いてきたかな。ちょっと横になるね。」
「うん、お休み。」
すぅすぅ寝息を立てる杏の頭を撫でる。
「色々あったね。最近構えなくてごめんね。」
熟睡しているようだ。私は旅行の支度の続きをする。あ、そうだ。何泊するんだろう。まぁ、いいや。起きてきたら聞こう。今は杏の寝顔だけを見ていたい。




