第78回 全国カバーライブ「wonderful world vol.1」④
第3部が始まる5分前。志乃ちゃんが私にこう言った。
「結依さん、ain't afraid to dieだけ、ソロで歌って貰えますか?」
「え、いいけど。どうしたの?調子悪い?」
「いえ、この曲歌うと必ず私泣いちゃうんです。大好きなお兄ちゃんが好きだった曲だったので…」
「そっか…。分かった。行ってくるね。」
「はい、お願いします。」
カーテンが上がる。会場のボルテージ一気に上がる。
「本当は志乃ちゃんと2人なんだけど、諸事情で最初の曲だけ、私1人で歌います。大切な人が亡くなったら、みんなはどうする?落ち込むと思う。だけど、死は誰にでも訪れます。でも、死は怖くない。あ、自殺はだめだよ。そんなことを歌っている曲です。聞いてください、ain't afraid to die」
ピアノの1音が鳴る。会場が一気にシン…と静まった。
「君と2人で歩いた あの頃の道は無くて それでもずっと歩いた。いつか君と会えるのかな」
「なだらかな丘の上 緩やかに雪が降る 届かないとわかっても 君の部屋に 大好きだった花を今」
「ねぇ、笑ってよ もう泣かないで ここからずっと貴方を見ているわ」
舞台袖を見ると、志乃ちゃんがうずくまって泣いていた。会場からも啜り泣きが聞こえる。
1分の静寂を破るかのように、ギターが不協和音を奏ではじめバンドサウンドが入った。
「明かりは静かに 白く染め行く街の中 君が見た最後の季節色」
バンドサウンドにも負けず(この日はギターが3人入っていた)歌い上げた。
「今年最後の雪の日」
しばらくピアノが流れたあと、そっと最後の1音が終わる。
会場からは拍手喝采。泣いている人もちらほらいた気がする。
まだ、志乃ちゃんは立ち上がれないようだ。バンマスに目で合図を送り、INCREASE BLUEのギターが始まり、しん…としていたライブハウスが一気に戦闘モードに入った。
「Goodbye!?」
「Kiss me!」
客席にマイクを向ける。大きな声で応えてくれた。
「Bye Bye Miss Jerry…」
INCREASE BLUEから間髪を入れてRED…[em]へ。会場から歓声が上がった。
そしてMCである。
「みんな来てくれてありがとう!」
「結依ちゃーん!」「結依ぃぃぃぃぃ」
「志乃ちゃん体調悪いみたいだから私の1人になるよ、ごめんね。」
「大丈夫だよー!」「志乃ちゃん!」
「大阪、いいところだね。本場のタコ焼き美味しかったー。」
「ありがとう!」
「こちらこそありがとう!あと、みんなノリがいいね!INCREASE BLUEのヘドバンすごかったよ!」
「結依ちゃんさいこー!!」
「嬉しいこと言ってくれるね?嬉しい。次の曲なんだけど、バンマスから「激しい曲多すぎ!」って怒られたので、優しい曲を。準備いいですか?聞いてください。masohyst of decadance」
あ、余計にしんみりしてる。選曲間違えたかな。
1分程アウトロが演奏され、曲が終わる。と、同時にギターの音が激しく響く
「頭振れー!!」
ピンクキラーだ。鬼葬というアルバムに収録されている。会場はぽかんとしていたが、すぐにヘドバンの嵐に変わった。
「義理義理の僕!?」
「不感人体!!」
ピンクキラーから間髪入れずに最後の曲、schweinの椅子が始まる。
「叫べー!!」
「Geist!Seele!Wile!Zele!」
「もっとー!」
「Geist!Seele!Wile!Zele!」
「Geist!Seele!Wile!Zele!」
「Geist!Seele!Wile!Zele!」
「Geist!Seele!Wile!Zele!」
「eins!zwei!drei!vier!どーもありがとー!」
舞台袖へと捌ける。志乃ちゃんのところに行く。落ち着いたようだ。
「結依さんすいません…」
「大丈夫だよ。こちらこそ事情を汲み取らないでごめんね。」
「ありがとうございます。」
「無理しないでね。また後で。」
そう言って楽屋へと向かいメイクを落としていると、杏が入ってきた。
「あれ?杏来てたの?」
「バックステージパス貰ったから。」
「そうなんだ。来てくれてありがとうね。」
「結依かっこよかった!特にschweinの椅子!」
「ちょっと女王様ぶってみたんだ。そう言って貰えると嬉しい。」
杏の熱弁をメイクを落としながら聞いていると、ノックの音が聞こえた。
「結依ちゃん、入って大丈夫?」
「どうぞー!」
「お疲れ様会やるから、片付けて会場に行こう。杏ちゃんも。」
「いいの!?」
「今回の公演でかなり利益出たらしいからね。早く行こう。」
「あ、片付けはもう済んでます!」
「じゃあ行こうか。」
「はい!」
次はエスコンフィールドHOKKAIDOだ。待ってろよ北海道!




