第65話 カバーライブ当日!①
あっという間に本番の日を迎えた。チケットは全て完売で、味の素スタジアムは満杯だった。
「嘘でしょ…」
「4万人も集まったの…?」
私と杏が呆然としている横で志乃ちゃんが硬直している。私は彼女の肩を叩き励ました。
「志乃ちゃん、志乃ちゃんは今から4万人のファンの前に立つの。緊張してるかもしれないけど、リラックスして。」
そう言って肩を揉む。少し解れたようだ。
「志乃ちゃん出番だよ」
「は、はい!」
会場にSEとしてDeityが流れる。私は袖に立つ志乃ちゃんに言った。
「東名阪やったでしょ。大丈夫。」
「…はい」
Deityが流れ終わりそうな段階でステージへ立つ志乃ちゃん。Deity効果か会場からは歓声が上がった。会場にオルゴールの音が流れてcageが始まる。観客のボルテージは最高に達している。
「行けるか味の素ー!」
「うおおお!!」
歌いながら縦横無尽に走り回る志乃ちゃん。若さってすごい。
「最後の君まで壊した僕はサド?」のとこで首を傾げると、大きな歓声が上がった。
間髪入れず披露されたのは、cageのテンションを下げる蛍火だ。一気に会場が静かになる。志乃ちゃんは声色を変えながら歌う。私はその姿を尊敬していた。
「みなさんこんにちは。wonder新入生の三矢志乃です。楽しんでますか!」
「すごいね。志乃ちゃんステージに立つと変わるね。」
「期待大ですね。」
「セットリストは結依さんと決めたんですが、2曲だけシークレットがあるんです。シークレット、やっていいですか?」
会場から拍手が上がる。
「じゃあ聞いてください」
最初の1音を聴いた瞬間、私もファンも凍りついた。
「Erodeだ…」
「そんなにレアな曲なの?」
「MISSAってアルバムに収録されていて、近年全くやってない曲なんです。シークレットってこれか…」
「貴女は最後まで気づかないふりをしていた」
Erodeが終わる。会場が拍手と歓声で包まれた。
その次に演奏されたのは鬼眼-kigan-だ。かっこよすぎるでしょ。低音から高音に上がっていくのがかっこいいこの曲は
「卑怯だ…」
鬼眼-kigan-が終わり、しばらくの沈黙の後、ドラムから始まった時には私は崩れ落ちていた。
「完璧すぎる…」
始まったMACABRE-揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-で彼女はただの新人からライバルとなった。負けられない。
「そっちがMACABREならこっちはVINUSHKAで勝負だよ志乃ちゃん」
今彼女はTHE FINALを歌っている。これが最後のステージということか。
志乃ちゃんのステージが終わり、志乃ちゃんがはけてきた。
「圧巻のステージだったよ。」
「ありがとうございます。一気に緊張が来ちゃった。」
志乃ちゃんの体は震えていた。私はそっと抱きしめてあげる。ライバルを称えるために。
さぁ次は私の番だ。




