第49話 お休みの日①
「んー…寝過ぎた…」
時計はヒルの12時を指していた。自室を出ると、結依がパソコンで何やらやっていた。
「おはよ、結依」
「おはよ、ねぼすけさん。お昼ごはん出来てるよ。」
「うん…結依は何やってるの?」
「大学の課題。溜めに溜めまくったから。」
「ふーん」
結依がパンをかじる音を聞きながら課題に勤しむ。あと1科目だ。
「食べ終わったら置いといて、あとでまとめて洗うから。」
「これくらい洗うよ。」
「お、杏成長したねぇ」
「これくらいはしないとね。」
成長したものである、うんうん。と頷いていると、高山さんからLINEがあった。昨日の公演の様子がテレビと新聞に載ること、グッズの売り上げが過去最高だということ、DVD化することなどが長文で流れてきた。
「だってさ、杏。はぁ終わった。買い物行くけど、杏も行く?」
「行く!」
「自分のバンド事情には興味無いんかい」
「だって昨日のライブ最高だったじゃん。メディアに載ってもおかしくないし、DVD化も当たり前じゃない?」
「すごい自信…」
「自信家ですから。支度するね。」
2人とも支度を終え、部屋を出る。快晴だ。
「歩く?バス乗る?」
「バス乗ろうか。今日は2件はしごするから体力は残しておきたい。」
「分かった。」
バスに揺られて30分。駅前に出た。まずは食料品の調達からだ。
「バターと牛乳…重いかな。ん?運んでくれるんだ。でも家バレるのは嫌だなぁ。」
すると、スマホが鳴った。
「もしもし?」
「あ、持田だけど。」
「持田さん。どうしたんですか?」
「今日ソロ企画の打ち合わせだよ。」
「…あ!すっかり忘れてた!」
「だよね。大丈夫。先方も納得してくれて明日になったから。」
「すいません…」
「今何してるの?」
「買い物です。」
「重いでしょ。迎えにいくよ」
またとない幸運である。
「でも持田さんは大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。駅前?」
「そうです。」
「じゃあ買い物終わったら連絡ちょうだい。」
そう言って電話が切れた。
「誰?」
「持田さん。買い物してること伝えたら迎えに来てくれるって。」
「ありがたいね。」
「そうだね。牛乳3本位あればいいよね?」
「そうだね。あ、私のフルグラ!」
なんだかんだたくさん買って、トータルで7568円だった。
「重いね。」
「もうすぐ持田さんくるから、あ、来た。」
「お待たせ。たくさん買ったね。」
「買い過ぎました。」
「乗って。送るよ。」
「ありがとうございます。」
持田さんからも昨日の話があった。グッズの売り上げ、SNSの反応――これは意外だったが、セットリストの事が話題になったらしい。
「飛ぶ鳥を落とす勢いだね。」
「まだまだいきますよ!目指せ武道館!」
「武道館は目標だよね〜着いたよ。」
「ありがとうございました。」
荷物を置いて持田さんは去っていった。
「これから事務所行くんだって。」
「大変だね。ユンケルでもあげれば良かったね。」
「そうだね。さて、帰ってきたわけだけだけど、私小物買いに行きたかったんだよね。杏まだ体力ある?」
「任せて!」
「じゃあまたバスに乗ろう。」
私たちはまた駅前に出向いた。お気に入りの小物屋さんがある。
「あ、結依さんいらっしゃい。杏ちゃんも。」
「ご無沙汰してます。」
「今日はお付きです。」
「あら、ゆっくり見てってね。」
「はい。ありがとうございます。」
この店には私好みの可愛い小物がたくさん揃っているのだ。店主のお姉さんも私を特別扱いしないで、一般のお客さんとして見てくれる。そこが好きなのだ。
「これ可愛くない?」
「可愛いね。猫ちゃん。買おっか。」
「うん。」
それぞれ気に入ったものをレジに持っていく。お姉さんは丁寧に梱包してくれて、優しく渡してくれた。
「中にプレゼント入ってるからね。」
「あ、ありがとうございます。」
「ライブ成功記念ってことで。」
「来てくれてたんですか?」
「行ったよ。すごい興奮した。」
「ありがとうございます。頑張ります。」
「うん。またね。」




