第4話 復活②
「なんで斎藤さんは独断で行動するんですか!おかげで私殺されそうになったんですよ!」
「あー、悪かったよ。はいはい悪かった、反省してまーす」
「してない!全く反省してないです!」
「悪かったって。じゃあ俺捜査行くからな。」
「あ、待って!私も行きます!」
「はーいカット!いい調子だよ結依ちゃん!」
「ありがとうございます!」
「良かったよ、結依ちゃん。」
「あ、ありがとうございました。武田さんの演技もすごく上手かったです。」
「そうかな?ありがとう。」
引き続き撮影中である。私は武田さん演じる独断刑事のバディ役をしている。武田さんとは相性が良く、今のところNGを出したことがない。それだけは自慢だ。
「じゃあ休憩挟んでラストシーン行くよ!」
「はーい」
「死ぬなよ…!お前が死んだら俺のバディはどうなるんだよ!」
「斎藤…さん…寒いです…暖…め…」
「おい!暖かくしてやるから!だからしっかりしろって!」
「…」
「おい!柴田!おい!」
「はーいカット!」
「やっぱり結依ちゃん演技上手いよ。役者目指しなって」
「そんなにですか?」
「そんなにだよ。武田が証明する。」
「ありがとうございます!」
「はい!という訳で平塚結依ちゃんクランクアップでーす!!」
監督が花束を渡してきた。小袋と一緒に。毎回思うが、なんでクランクアップすると花束を渡すんだろう。
「じゃあ結依ちゃんから一言!」
「えっと、演技は初めてで緊張してたんですが、皆さんのおかげで楽しく演技に没頭出来ました。ありがとうございました。私はここで終わり…あ、ラストシーンだから私で最後か。」
現場に笑いが広がる。私は続けた。
「ドラマ放映楽しみにしてます。もし他の現場で見かけたら是非声掛けてください。ありがとうございました。」
弾けるような拍手。私は監督に一つのお願いをした。
「監督、ドラマ撮影の合間のメイキング映像ありましたよね?DVD発売された時用の。あれ、焼いてもらえませんか?」
「あぁいいよ。帰り際に渡すね。」
「ありがとうございます。」
最後のシーンまで見てっていいよと言われたので、私演じる柴田の敎育係役の山﨑さんの隣でラストシーンを見ていた。山崎さんは私のことを何かと可愛がってくれて、隣で見ていいよと、歓迎してくれた。このドラマの出演者の皆様方はとても優しい。
ラストシーンの撮影が終わった。あとは編集するのみらしい。私は監督からDVDを受け取り、山崎さんと一緒に帰路についた。
「結依ちゃんはさ」
「はい」
「後悔してない?アイドル辞めて。」
「後悔は…無いですね。卒業を決意した時点でもういいかなって。」
「でも今は俳優としてやってる訳じゃない?」
「俳優とアイドルはまた別です。俳優で生きていこうと思っても、元wonderって言う見出しが付いちゃう訳ですが、それはそれでいいかなって。」
「大人だねぇ。尊敬しちゃうわ。」
「尊敬に値する人間じゃないですよ。」
駅で山崎さんと別れる。山崎さんは副都心線、私は半蔵門線だ。
家に帰ると、まだ杏は帰っていなかった。荷物を置いて着替え、フローリングに寝転がった。
「疲れたなぁ。あ、洗濯物入れなきゃ…」
睡魔が襲う。3・2・1というカウントがされた瞬間、目の前には杏が泣きながら座っていた。
「あ、寝ちゃってた…どうしたの?杏、何泣いてるの?」
「結依が!!また襲われたのかと思って!!」
「あぁ、ごめんね。」
「ばかぁ…」
杏を抱きしめた。ぎゅっと抱きしめ返される。
「ごめんね、心配かけたね。」
「うぅ…」
「ちょっと散歩しよっか。」
「え…うん…」
まだ日差しが強かった。とりあえず近くのコンビニまで行くことにする。杏にも日光を浴びさせないといけない。
「暖かいね。」
「そうだね。気持ちいいね。」
「んーんっ最近日光浴びてなかったから気持ちいいなー。」
「ね。杏?私は杏の前からいなくならないからね。それだけは安心して。」
「うん…」
「大丈夫だよ。だから元気出して。」
「…うん!」
3時間しっかりと日光を浴びて家に帰る。もう夕飯の時間だ。
「そういえば今日杏早かったね?」
「意外とスムーズに終わったの。」
「そっか。あ、頼まれたメイキング映像もらってきたよ。」
「わ!見たい見たい!」
「じゃあお夕飯の時に見よっか。」
「うん!」
今日の夕飯は豚キムチだ。キムチが余ってたんだよね。
「わー!ほっぺた膨らませてる結依可愛い!」
「えー、あざと過ぎない?」
「全然あざとくないよ!むしろ可愛い!」
「ありがとう。あ、」
「あ?…この男誰?」
「刑事役の荒牧さんだよ。」
「馴れ馴れしく結依の肩に手ぇ掛けて…○す」
「アイドルが吐いていい言葉じゃないよ。大丈夫、特に何も無いから」
肩を怒らせている杏を宥める。この豚キムチ美味しいな。また作ろう。
「はー!面白かった!本編が楽しみだねぇ。」
「楽しみにしてて。いいドラマだよ。」
「明日は大学?」
「そうだよ。杏明日休みだよね?私2限までだから明日渋谷行こっか。」
「ほんと!?行く!」
今日のお皿洗い当番は杏なのだけれども、渋谷に行く事が優先になったので、洋服選びに夢中になっている。洗い物終わった後に言えばよかった。
「杏?明日お皿洗いだからねー?」
「はーい!」
ちゃちゃっと洗い物を済ませて明日の大学の支度をする。明日はレジュメが配られるだけで教科書は要らないから軽いカバンで行こう。
さて、今日は寝られるかな。




