第37話 ファンミーティング〜CDショップ編
ある日、事務所に4人が呼び出された。
「この前出したCDの2ndプレスが出ることになった。」
「えー!すごーい!」
純粋に喜ぶ大森さんと浅倉さん。私と杏は複雑な顔をしていた。前回のファンミーティングの時に大量購入した人たちがCDを捨てるという話を聞いたからだ。
「それに伴ってCDショップでのイベントが決定した。頼んだぞ、みんな!」
「はーい」
帰りの車の中。企画書を見ていた。
「なんか言いたげだね?」
「前回のファンミーティングで大量のCDが捨てられたって聞いて…今回もそうならないか不安で。」
「今回はCDにサインもするわけだし、なかなか捨てないんじゃない?」
「そうですかね。ならいいんですけど…」
「着いたよ。明日から激務だから今日はゆっくり休んでね。」
「ありがとうございます。」
家に入る時、まだ杏は帰ってきていなかった。荷物を置いて部屋着に着替えてお夕飯の支度をする。しばらくすると杏が帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。遅かったね。」
「高山さんと明日の会場見てきたの。意外と広かったよ。」
「そっか。定員100人だっけ」
「そうそう。結構多いよね。」
「あ、そうそう私明後日はインストアイベント欠席だから。」
「え!!」
「大学が1限からなんだよね。」
「うぅ…」
「大丈夫。次は出席するから。ね?」
「分かった…。」
「お夕飯もうすぐだから。着替えて待っててね。」
「うん。」
今日のお夕飯はお刺身だ。作るのがめんどくさかったのもある。
「そういえばさ」
「うん。」
「前回のさいたまスーパーアリーナのイベントの後さ、CD大量に捨てられてたって聞いたんだけどさ。」
「うん。」
「許せないよね。」
「そうだね。1枚位は手元に持ってて欲しいよね。」
「そういう問題?」
「でもお金出したのはリスナーさんたちだから、ね。」
さっき私が発した言葉を肯定するように伝える。悔しいといえば悔しいけど、お金出して何枚も買ってくれたのは事実だし。
「今回のCDショップファンミーティングはCDにサインするから、捨てないでしょ。1人2枚までって制限あるみたいだし。」
「そうだよね。うん、そう。」
自分に言い聞かせるように杏は肯定の言葉を口にした。ファンを信じるしか無い。
お風呂上がりの柔軟体操を手伝っていると、杏が私に問いかけた。
「結依はいつまでアイドルやりたい?」
「急に重い質問来たね。どうしたの?」
「私も将来を考えるようになったんだよ。」
「私は…出来るならずっとやりたいかな。ドラマとかにもたくさん出たいし。」
「へぇ!結依は大学まででって言うのかと思ったら。」
「意外でしょ?」
柔軟体操を終えて、しばらくテレビを眺めていた。
「私は…結依といれればそれでいいから」
「ありがとう。私も杏といれるだけで幸せだよ」
「嬉しい!」
杏が私に抱きついてきた。柔軟体操のおかげか、暖かった。
「もう寝る?」
「明日も早いしねぇ。寝よっか。」
「久しぶりに一緒に寝る?」
「寝る!」
そんなこんなでベッドに入る。杏の暖かさで布団の中が暑いくらいだ。
「もうすぐ夏なんだね。」
「衣替えしないとだね。」
「そうだね。私夏は好きなんだ。」
「そうなんだ?」
「夏生まれだからね。」
「そっか。私は秋生まれだからなぁ」
「じゃあ夏は苦手?」
「あんまりかな」
「そっか。おやすみ。」
「うん、おやすみ。」
夜が更けていく。




