第20話 東名阪 3.5
「えーいよいよバンテリンでのライブです。モニター見る限り満席です。この満席の観客をどう喜ばせるか。それは3人にかかってます。私たちは飽くまでもサポート役。楽しまなきゃ損なので、お客さんを楽しませつつ、3人とも楽しんできてください。以上。」
これが私の今の気持ちだ。3人には楽しんできて欲しい。それは私の本音だ。
「wonderさーん出番でーす!」
「浅倉さん、慌てないでいいからね。緊張したらゆっくり深呼吸してね。」
「うん!」
「大森さん、ビブラートが多い曲ばっかりだけど、大森さんなら出来るから、自信持って。」
「分かった!」
「杏…杏はいいか。」
「何でよ!」
「嘘嘘。会場のお客さんを見惚れさせる力が杏にはあるから。全員を杏の虜にさせて帰って来るんだよ。」
「分かった。」
「さ、行ってらっしゃい」
「行けるか名古屋ー!?」
「うおおお!」
一曲目はBlossom 私たちが初めてもらった曲だ。活動初期からの曲なので、知らない人は知らない曲だ。
「盛り上がってるな」
「それ以上に古参なファンが多いんだよ、きっと。」
「めっちゃ頭振ってるな。Blossomって激しい方ではないのに」
「激しくないけど頭振りたくなる曲らしいよ」
「そうなのか…」
2曲目 パレードは進む
「あ!浅倉さん振り間違えた!」
「立ち直るか…?」
「…何とか持ち越したかな。危ない危ない。今日社長きてるんだよ。」
「え、そうなの?早く言ってよ。」
「昨日言ったぞ?」
「あれ?そうだっけ?」
「そうだよ。」
3曲目 あの葡萄を取ったのは誰だ?
「やっぱりこの曲の市川はいきいきしてるな。」
「作曲家が案の定ために作った曲だからね。」
「そうなのか?」
「そうだよ。私は何とも思わなかったけど、浅倉さんがしょんぼりしてた。」
「そうなのか…」
MC
「みなさんこんにちわー!wonderです!」
「よろしくお願いします!」
「東名阪の名古屋公演、楽しんでますか!」
\いえーーい!/
「声が小さいなー?楽しんでますか!」
\うおおおおお!/
「名古屋最高です!今まで3曲、歌って踊ってきた訳だけど、初期から私たちを応援してきてくれた人たちには懐かしかったんじゃないかな!」
「ありがとー!!」
会場から声がする。喜んでくれたようで何よりだ。
そこから新旧入り混じった曲を激しく、時に妖艶に歌い踊って、最後の曲「Nocturne」を歌って袖に帰ってきた。
「お疲れ様。」
「平塚さんありがとー!」
「どういたしまして。」
「次結依だよ。転換中だから早く着替えなきゃ」
「…忘れてた。着替えて来る。」
5分で衣装を着替えて袖に戻る。
「結依かっこいい!」
「平塚さんカッコいい…」
「ありがとう。行ってくるね」
ステージに立つ。私の名前を呼ぶファンたち。私は客席を煽った。
「かかってこれますか!」
「うおおおおお」
「その覚悟、ステージ上の私にぶつけてください、LOVE SONG!」
3曲目に入る前にMCが入る。
「今日はみなさん見にきてくれてありがとうございまーす!!」
「実はいまひょんな事からwonderのプロデューサーやってるんですけど。マネージャーは別にいますよ。マネジメントはマネージャー、プロデュースは私って別れてるんだけど、今日はプロデューサー業に集中し過ぎて、本来のアイドルの仕事を忘れてました!」
会場が笑いで包まれる。笑ってくれて良かった。
「今日は一日楽しんでくださーい!3曲目!festival!」
ドラムが難しいこの曲はファンの人気投票で2位だった。ちなみにボーカルも難しい。作曲家を恨んだこともある。
6曲目、私の時間はこれで最後だ。東京ドームでは私の曲数は多かったが、バンテリンドームのマネージャーは私の曲数を大幅に減らした。wonderを多く見せたいからだろう。ま、私は構わないけど。wonderが好きだから。
「ありがとうございましたー!また京セラドームで!」
「えー!」という声を後ろにステージを去る。髪をポニーテールに纏める。
「杏!短くない!?」
「バンテリンのプロデューサーの意向らしいよ。wonderを多く見せたいんじゃない?」
杏がマネージャーを睨む。マネージャーは目を逸らした。




