第17話 東名阪②
「結依ちゃんコール止まらないけど」
「うわ。やば。」
「歌える?」
「2曲位なら…wonderもあるし…」
「あ、あの曲なら盛り上がるんじゃない?」
「あー、From 住人 to イロ。」
「聞いた事ないな私」
「私が好きなバンドなんだよ。じゃあそれと紫陽花は燃ゆやりたいかな」
「バンド隊の方も大丈夫だと。行ってこい!」
持田さんが私の背中を押した。客席からは割れんばかりの歓声が上がる。杏ごめんね。
「みんなアンコール?アンコールなのかな?ありがとう!2曲しか歌えないけどごめんね」
「えー!」
「ほら、時間もあるからさ。一曲目激しい曲だけど頭振る準備いい?」
「いいよー!」「蔑んで!」
「じゃあ一曲目、私の好きなバンドの曲です。From 住人 to イロ」
イントロが流れ始める。
「頭振ってよー!!」
ギターソロでバンド隊のギターの人が2人隣に来た。それぞれソロを弾いて帰っていった。
2曲目もつつがなく終わり、袖に捌ける。次はwonderだ。
「wonderって何歌うんだっけ?」
「えっと「青信号」と「パレードは進む」と「world wonder!」だね。」
「3曲かぁ。」
「踊れる?」
「大丈夫。練習したから。」
「さっすが結依!」
「出番でーす!」
「はーい!」
2曲はあっという間だった。最後は4人で手を繋いでお辞儀をした。なんか懐かしい。
「ほんとにみんなどうもありがとう!最後の曲です、みんなの声を聴かせてください!ラスト!world wonder!」
world wonder!が終わり1人ずつはけて行く、最後に私だけが残った。
「今日はみんな本当にありがとう!久しぶりの舞台だけどすごく楽しかった!あと名古屋と大阪が残ってます。来る人はまたお会いしましょう。残念ながら来れない人はこれからに期待してください。ありがとうございます!またねー!」
そう言って会場に手を振りながら袖にはけた。杏がニヤニヤしていた。
「どうしたの?」
「いや、ほんとに杏と対バン出来たんだなって嬉しくて!」
「名古屋は1週間後だから、あしたから合同リハだからな。」
「はーい!」
撤収はスタッフさんがやってくれるそうなので、私は持田さんの車に乗り込んだ。
「お願いします。」
「From 住人 to イロ。良かったよ。バンド隊も楽しそうだったよ。」
「CD貸しましょうか?」
「今度貸してくれる?ちょっと気になってたんだ」
「え!!そうなんですか!CD3枚あるので全部貸しますね!」
「う、うん?よろしく。あ、着いたよ。」」
「ありがとうございました。また明日。
「ただいま…ぐえっ」
「結依ーーー!!今日のライブめちゃくちゃ良かったよ!!!」
「う、うんありがとう?」
「結依かっこよかったなぁ。結依のかっこよさには勝てない。」
「そんなことないよ。杏だってかっこよかったよ。」
「じゃあ2人ともかっこよかったってことで!」
「そうだね。今日はピザにしない?何か疲れちゃった。」
「いいよ。私いつものね。」
「いつものが分からないよ」
そう言うと杏が笑う。その笑顔が、好きだった。
「そろそろ同棲始めて1年?」
「そんな経つの?!」
「うん。明日でちょうど1年だよ。」
「1年かー。早いね。」
「そうだね。」
私はおもむろにキスをした。杏は顔を真っ赤にして私を見た。
「な、何を」
「え、今日のご褒美」
「そんないきなり!キスするのに覚悟がいるのに!」
「ウブだねぇ」
頭を撫でる。相変わらず顔が真っ赤だ。
「さ、ピザ食べちゃお。冷めちゃうから。」
「うん!」
ピザを食べ終えて歯磨きをしていると、杏がスマホの画面を見せて来た。
「wonder完全復活か!?」
目を引く見出しである。杏が続けた。
「ねぇ、やっぱりwonder戻ろ?ソロも楽しいかもしれないけど、wonderには結依が必要なんだって。」
「でも私は一度脱退した身だし、大学もあるし…」
「wonder嫌いになった?」
「wonderは大好きだよ。でも脱退した身でまた、よろしくお願いしますは言えないでしょ?」
「…」
「怒った?」
「…別に。先に寝るね。」
寝室に行ってしまった。ありゃ完全に怒ってるな。
「さ、私も寝ようかな。明日も早い。」
寝室に向かう。杏の泣き声が微かに聞こえた。




