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紅残光 〜散りゆく花は神をも斬る〜  作者: 柚子胡椒
紅残光 一刀流 異聞録 第二章 城下町と残光の歴史

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第28話 震えるも 証言の声 堂々と

〜証言の声〜

廿楽幕府の一室には、朝から多くの人々が集まっていた。

広間の中央には、今回の件を審理するための席が設けられている。その正面には幕府の役人たちが並び、左右には関係者が座る場所が用意されていた。

桜花、こはく、白夜の三人は、役人たちと向かい合う位置に座っている。

そして、その反対側には、余戸屋小左衛門の姿があった。

小左衛門は身なりを整え、余裕のある表情を浮かべている。隣には、彼が今回の申し立てに用いた書類がいくつも置かれていた。

「それでは、これより小黒茶店に関する申し立てについて、審理を始める」

役人の声が広間に響いた。

「今回の件は、茶店の店主であった玉藻前が妖怪であったこと、ならびに同店で発生していた盗難事件に関する調査の過程で明らかになったものである」

役人は手元の書類に目を落とす。

「その後、余戸屋小左衛門より、小黒茶店の所有権について申し立てがあった。余戸屋は、同店に小黒小豆を卸していたことを根拠として、店の所有権が自身にあると主張している」

「その通りでございます」

小左衛門が、すかさず口を挟んだ。

「私は長年にわたり、あの店へ小黒小豆を卸しておりました。あの店の名物菓子に使われていた小黒餡子も、私が納めた小黒小豆を使って作られていたものです」

「それは提出された書類にも記録されている」

「ええ。こちらが、その納品記録でございます」

小左衛門は書類を役人へ差し出した。

そこには、小黒茶店へ小黒小豆を納めた日付や数量が記されている。複数年にわたる記録もあり、少なくとも彼が店へ小黒小豆を卸していたこと自体は、疑いようがなかった。

「これだけの取引があったのです。店との関係は浅いものではありません。私は店を支えてきたのですから、当然、相応の権利があるはずです」

「それで、店そのものの所有権があると?」

「はい。あの店は私が支えていたようなものですからな」

小左衛門は、さも当然だと言わんばかりに頷いた。

役人たちは書類を確認しながら、互いに小声で話し合っている。

桜花たちにとっては、納品記録があることと、店の所有権があることはまったく別の話だった。しかし、提出された書類が事実である以上、最初から小左衛門の主張を退けるわけにもいかない。

「では、桜花殿たちにも確認する。そなたたちは、玉藻前が店主であったことを知っていたか」

「はい。私たちが小黒茶店を訪れた際、店を取り仕切っていたのは玉藻前でした」

桜花は落ち着いた声で答えた。

「店の者たちも、彼女を店主として扱っていました。少なくとも、私たちが滞在していた間に、余戸屋殿が店を経営しているような様子はありませんでした」

「それは、店に出入りしていた時間だけの話でしょう」

小左衛門がすぐに言い返す。

「私が毎日店にいたわけではありません。仕入れを担当していたのですから、店に顔を出す頻度が少なくても不思議ではないでしょう」

「ですが、仕入れを担当していたことと、店を所有していたことは別ではありませんか?」

「何をおっしゃる。店にとって欠かせないものを納めていたのですよ」

「欠かせないものを納めていたからといって、その店の所有者になるわけではありません」

桜花は声を荒らげることなく、淡々と答えた。

小左衛門は不満そうに眉を寄せたが、役人が手を上げて発言を制した。

「双方の主張は分かった。まずは、余戸屋が小黒茶店へ小黒小豆を納めていたことを確認した。そのうえで、それが所有権を示すものなのか、ほかの証言も含めて判断する必要がある」

「承知いたしました」

桜花は静かに頭を下げた。

その隣で、こはくも小さく頷いている。

白夜は小左衛門をじっと見つめていた。彼の言い分に納得できない様子だったが、今は口を挟まずにいる。


     *


「では、桜花殿たちが証人として呼んだ者を入れよ」

役人の言葉を受け、広間の入り口から一人の男が入ってきた。

小黒茶店で働いていた従業員、奈良坂伝之である。

伝之は三人の姿を見つけると、わずかに表情を和らげた。しかし、すぐに役人の前へ進み出て、深く頭を下げる。

「奈良坂伝之と申します。小黒茶店で働いておりました」

「そなたは、桜花殿たちが店を訪れた際、接客をしていたそうだな」

「はい。初めてお見えになったとき、私が応対いたしました」

「では、当時の店の様子を説明せよ」

「はい」

伝之は一度息を整えてから、ゆっくりと話し始めた。

「小黒茶店の店主は、玉藻前という女性でした。店の仕入れや従業員への指示、客への対応など、店に関することは基本的に玉藻前が取り仕切っておりました」

「余戸屋との関係はどうだった?」

「小左衛門殿は、小黒小豆を納めてくださる取引相手でした」

「取引相手、か」

「はい。納品の際に店へ来ることはありましたが、店の経営に関わっている様子はありませんでした。従業員に指示を出したり、店の方針を決めたりすることもありません」

「待ちなさい!」

小左衛門が声を上げた。

「私が店の経営に関わっていなかったなど、勝手なことを言わないでいただきたい!」

「余戸屋殿。証言の途中だ。発言は許可を得てからにせよ」

役人にたしなめられ、小左衛門は不満げに口を閉じた。

「伝之殿、続けなさい」

「はい。私たち従業員は、玉藻前を店主として認識しておりました。小左衛門殿を店主として扱ったことはありません」

「それは、玉藻前が店主だと名乗っていたからか?」

「それもありますが、実際に店を取り仕切っていたのが玉藻前だったからです。従業員への指示も、売り上げの管理も、店の営業に関する判断も、すべて玉藻前が行っていました」

「なるほど」

役人は伝之の証言を書き留めた。

「では、余戸屋が小黒小豆を納めていたことは認めるのだな?」

「はい。それは事実です。ですが、それ以上の関係ではありません」

「それ以上ではない、というのは?」

「小左衛門殿は小黒小豆を納めていた。それだけです。店を所有していたわけでも、店を経営していたわけでもありません」

伝之ははっきりと答えた。

小左衛門は腕を組み、露骨に不快そうな顔をしている。

「ふん。従業員に何が分かるというのだ。店の裏側の事情など知らないだろう」

「小左衛門殿!」

役人の声が広間に響く。

「証言者を侮辱するような発言は慎みなさい」

「……失礼いたしました」

小左衛門は一応頭を下げたものの、その表情から不満が消えることはなかった。


     *


「次に、白峰こはく殿。そなたも証言をするとのことだな」

「はい」

こはくは静かに立ち上がり、役人たちへ向き直った。

「私たちが小黒茶店を訪れたとき、店の者たちは玉藻前の指示に従って動いていました。小左衛門殿が店の所有者であると示すような言動は、一度も見ておりません」

「余戸屋が小黒小豆を納めていたことについては?」

「それは伝之さんの証言と同じです。小左衛門殿が小黒小豆を納めていたことは事実でしょう。ですが、納品していたことと、店を所有していたことは別の問題です」

「具体的に説明できるか?」

「はい」

こはくは一度、小左衛門の方を見た。

「たとえば、料理屋に米や野菜を納めている商人がいたとします。その商人が食材を納めているからといって、料理屋そのものが商人の所有物になるでしょうか?」

「……ならんだろうな」

役人の一人が答えた。

「そうですよね。食材を納めることは取引です。店を所有することとは、まったく別の話です。小黒茶店についても同じだと思います」

「それは詭弁だ!」

小左衛門が声を荒らげる。

「小黒小豆は、あの店の名物菓子に欠かせないものだったのだぞ! ただの食材と同じにするな!」

「欠かせないものであっても、取引であることに変わりはありません」

こはくは落ち着いて答えた。

「小黒小豆がなければ名物菓子を作れなかったとしても、それは小左衛門殿が小黒小豆を納めていたという話です。店の所有権を証明するものにはなりません」

「むむ……!」

小左衛門は言葉に詰まった。

「それに、名物菓子に使われていた小黒餡子を作っていたのは、店の者たちだったと聞いています。材料を納める人と、それを使って菓子を作り、店を営む人は違います」

こはくの言葉に、役人たちは再び書類へ目を落とした。

納品記録は確かに存在する。しかし、そこに記されているのは小黒小豆の取引についてだけであり、店の所有権を示す内容は見当たらなかった。

「余戸屋。そなたの提出した記録には、店の所有権に関する記載はないようだが?」

「そ、それは……長年の取引があれば、わざわざ書面にする必要もないと思っていたからです」

「長年の取引があったことと、所有権があることは同じではない」

「しかし、私はあの店を支えていたのです!」

「その点は、先ほどから聞いている」

役人は疲れたように息を吐いた。


     *


「では、最後に白夜殿。そなたも証言をするとのことだが」

「うん!」

白夜は元気よく返事をして立ち上がった。

役人たちの視線が集まる中、白夜は少しだけ緊張した様子を見せたものの、すぐに顔を上げる。

「あたしも、あの店にいたときのことを話すよ」

「では、玉藻前と余戸屋の関係について、知っていることを述べなさい」

「玉藻前は店主だったよ。店の中でも、外でも、みんな玉藻前の言うことを聞いてた。小左衛門は小黒小豆を持ってきてただけ。店のことを決めてたのは玉藻前だった」

「その証言は、先ほどの二人と同じだな」

「うん。だって、本当にそうだったんだもん」

白夜は小左衛門を見た。

「それに、小左衛門が店主だったなんて、あたしは一度も聞いたことがないよ」

「ふざけるな!」

小左衛門が机を叩いた。

「妖怪の言うことなど信用できるものか! どうせ人間を騙すために、都合のいいことを並べているだけだろう!」

広間の空気が一瞬で張り詰めた。

白夜の耳がぴくりと動く。

「妖怪だからといって、嘘をついていると決めつけるのはどういうことだ!」

桜花が口を開きかけた、そのときだった。

「……違うよ」

白夜が先に声を出した。

いつもの明るさは、少しだけ影を潜めていた。

「妖怪だからって、あたしの話を聞かなくていい理由にはならないよ」

白夜は小左衛門を見つめたまま、言葉を続ける。

「今、話してるのは人間か妖怪かってことじゃないでしょ。あたしが話してるのは、実際に見たことだよ。玉藻前が店主で、小左衛門が小黒小豆を納めていた。それだけのこと」

「妖怪の記憶など、当てになるものか!」

「じゃあ、人間の記憶なら全部正しいの?」

白夜の声が、わずかに震えた。

それでも、彼女は目をそらさなかった。

「人間だからって嘘をつかないわけじゃないでしょ。妖怪だからって、何も分からないわけでもない。あたしが見たことまで、なかったことにしないでよ」

白夜の目元に、少しだけ涙が浮かんでいた。

けれど、その声は最後まで途切れなかった。

「……あたしは、ちゃんと見てたんだから」

広間が静まり返る。

桜花は白夜の隣で、そっと視線を向けた。

すぐに助け舟を出すこともできた。けれど、今の言葉は白夜自身が伝えたかったことなのだろう。

桜花は口を挟まず、彼女の言葉を最後まで見守った。

白夜が席に戻ると、桜花は静かに声をかける。

「白夜、よく話してくれましたね」

「……うん」

「あなたが見たことを、きちんと伝えられたと思います」

白夜は小さく頷いた。

こはくも、優しい表情で白夜を見つめている。

「役人殿。今の白夜の証言も、これまでの証言と同じく、実際に店で見聞きしたことに基づくものです」

桜花は改めて役人たちへ向き直った。

「人間か妖怪かという理由で、証言の正しさを決めるべきではありません。どうか、話の内容そのものを確かめていただきたいと思います」

「……承知した」

役人は頷き、白夜の証言を書き留めた。

「余戸屋。証言者の種族を理由に、その証言を退けることは認められない。今後は発言に注意するように」

「……分かりました」

小左衛門は不満そうに目を伏せた。


     *


証言がひと通り終わると、広間の外からざわめきが聞こえてきた。

幕府の建物の外には、今回の件を聞きつけた町人たちが集まっていたのだ。

小黒茶店のことを知る者もいれば、余戸屋と取引をしたことのある者もいる。今回の申し立てに納得できず、成り行きを見守っている者も少なくなかった。

「少しよろしいでしょうか!」

広間の入り口付近から、一人の町人が声を上げた。

「何事だ」

役人が顔を向ける。

「私も、余戸屋のことで知っていることがあります。証言をさせていただけないでしょうか!」

「そなたは、今回の件に関係がある者か?」

「直接、小黒茶店で働いていたわけではありません。しかし、余戸屋と取引をしたことがあります」

町人は緊張した様子で答えた。

「余戸屋が小黒茶店の所有者だという話を聞いて、どうしても黙っていられませんでした。私が知っていることを、お伝えしたいのです」

役人たちは互いに顔を見合わせた。

「……分かった。まずは身元を確認する。証言を求めるのであれば、所定の手続きを踏んでもらう。ほかにも話したい者がいるなら、順番に申し出なさい」

「ありがとうございます!」

町人は深く頭を下げた。

小左衛門が不快そうに顔をしかめる。

「まったく、何を騒いでいるのだ。私と小黒茶店の取引とは関係のない者たちだろう」

「それを判断するのは、そなたではない」

役人がすぐに言い返した。

「証言の内容を確認したうえで、必要なものを採用する」

「しかし……」

「余戸屋。何度も同じことを言わせないでいただきたい」

役人の声には、明らかな疲労がにじんでいた。


     *


しばらくして、手続きが整った町人たちから、順番に話を聞くことになった。

最初に証言したのは、小黒茶店の近くで商いをしていた者だった。

「私は小黒茶店の様子を、日頃から見ておりました。店を切り盛りしていたのは玉藻前です。余戸屋が小黒小豆を納めていたことは知っていますが、店主として振る舞っていたところは見たことがありません」

「余戸屋との取引について、何か知っていることはあるか?」

「はい。余戸屋は、ほかの商人や仕入れ先にも、ずいぶん強い態度を取ることがありました」

「具体的には?」

「私が見たのは、仕入れ先の者に対して、納めた品の量や質について大声で文句を言っていた場面です。相手が説明しようとしても、話を最後まで聞かずに責め立てていました」

「それは、いつ頃のことだ?」

「小黒茶店が営業していた頃です。少なくとも、一度だけではありません」

役人は証言を記録する。

「ほかにも、余戸屋の言動について知っている者はいるか?」

すると、別の町人が手を挙げた。

「私も、余戸屋と取引をしたことがあります。こちらの事情を聞かず、一方的に無理な要求をされたことがありました」

「どのような要求だ?」

「納品の日取りについてです。こちらにも都合があると説明したのですが、余戸屋は聞き入れず、決めた日までに必ず届けろと強く迫ってきました」

「その要求は、契約に基づくものだったのか?」

「いいえ。こちらが事前に約束していた日よりも早く届けろという話でした」

「なるほど。ほかに証言できることは?」

「余戸屋の言い方に困っていた商人は、私の知る限りほかにもいます。ですが、今日ここにいる者たちが、すべて同じ経験をしたわけではありません。私が実際に見聞きしたことだけをお話ししました」

役人は頷いた。

「分かった。今の証言も記録しておく」

小左衛門は、次第に落ち着きを失っていく。

「待ってください! その者たちは、私に恨みがあるから悪く言っているだけでしょう!」

「恨みがあるかどうかも含めて、こちらで確認する」

「私は商いをしているのです! 多少強い言葉になることくらいあるでしょう!」

「商いをしているからといって、無理な要求や威圧的な言動が許されるわけではない」

「それと今回の小黒茶店の件は関係ないではありませんか!」

「余戸屋。今の証言は、そなたの普段の取引態度についてのものだ。今回の申し立ての正当性を直接証明するものではない。しかし、そなたの主張や証言を判断するうえで、無関係とも言い切れない」

「そんな……!」

小左衛門は言葉を詰まらせた。

役人たちも、次々と持ち込まれる証言に対応するため、書類を整理しながら確認を続けている。

その様子を見ていた桜花は、静かに息を吐いた。

「思っていた以上に、余戸屋殿を知る方が多いようですね」

「うん。みんな、いろいろ知ってるみたい」

白夜は、先ほどより少し落ち着いた表情で答えた。

「でも、あたしたちのことを助けてくれるために、わざわざ来てくれたんだよね」

「そうですね。ありがたいことです」

こはくも頷く。

「ただ、まだ結論が出たわけではありません。証言を集めたうえで、幕府が判断することになります」

「分かってるよ」

白夜は小さく頷いた。

「でも、さっきよりは少し安心した」


     *


その後も、何人かの町人から話を聞く時間が続いた。

小黒茶店の常連客だった者は、玉藻前が店主として客の注文を受け、従業員に指示を出していたことを証言した。

また、店の近くをよく通っていた者は、小左衛門が小黒小豆を納めに来る姿を見たことはあっても、店の経営に関わっている様子は知らないと話した。

それぞれの証言は、少しずつ違っていた。

しかし、共通していたのは、玉藻前が店を取り仕切っていたという点だった。

小左衛門が小黒小豆を納めていたことは事実である。だが、それをもって店の所有者だったとする主張を裏付ける証言は、今のところ出ていない。

「本日の審理は、ここまでとする」

やがて、役人が告げた。

「提出された書類と、各証言については、引き続き確認を行う。今回の件については、まだ判断を下す段階にはない。次回の審理でも、必要に応じて証言を求めることとする」

「お待ちください!」

小左衛門が立ち上がった。

「これだけの納品記録を提出したのですぞ! 私の主張が認められないというのは、あまりにもおかしい!」

「まだ判断を下していないと言っている。何度も同じことを繰り返さないように」

「しかし!」

「本日の審理は終了だ」

役人の言葉に、小左衛門はようやく口を閉じた。

桜花たちは席を立ち、伝之や証言をしてくれた町人たちへ頭を下げた。

「本日はありがとうございました。皆さんのお話、とても心強かったです」

「いえ。私たちも、知っていることをお話ししただけです」

伝之はそう言って、穏やかに笑った。

「小黒茶店のことを、あのような形で利用されるのは納得できませんから」

「そう言っていただけるだけで、十分です」

桜花は静かに頷いた。

広間を出ると、外にはまだ多くの人々が残っていた。

審理の内容を気にしている者たちが、三人の姿を見つけて声をかけてくる。

「どうだったんだい?」

「まだ決まってはいません。次回も審理が続くそうです」

「そうかい。けれど、あの余戸屋の言い分が通るなんて、納得できないねえ」

「私もそう思うよ。小黒茶店の店主は玉藻前だったんだろう?」

「小黒小豆を納めていただけで店の持ち主になれるなら、世の中の店はどうなっちまうんだ」

町人たちの言葉に、白夜は少しだけ表情を明るくした。

「みんな、ちゃんと分かってくれてるんだね」

「そうですね。ただ、最終的に判断するのは幕府です。次の審理に備えましょう」

こはくがそう言うと、桜花も頷いた。

「ええ。今日の証言で、少しずつ事実が明らかになってきました。ですが、まだ確認しなければならないこともあります」

「次も、ちゃんと話せばいいんだよね」

「はい。私たちが知っていることを、正しく伝えましょう」

白夜は二人の顔を見て、力強く頷いた。

「うん!」

三人は幕府の建物を後にした。

今回の審理で、余戸屋小左衛門の主張に疑問を持つ者は増えた。

小黒茶店で働いていた者、店を訪れていた客、町で商いをする者。それぞれの証言が重なり、玉藻前が店主であったことを裏付けていく。

それでも、まだ結論は出ていない。

小左衛門は納品記録を手にしており、当初の主張を撤回するつもりもないようだった。

次の審理で、さらに何が明らかになるのか。

桜花たちは、町の人々の声を背に、次の審理へ向けて歩き出した。

今回の話はどうでした?

少し本編を、白夜は妖怪だけどまだまだ心理的には幼い、そんな白夜が強さを見せれた話だと思います。

次回もお楽しみに

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