【番外編】 ハロウィン特別編: 仮装収穫感謝祭
〜異国から伝わった祭り〜
秋も深まり、八千代の国の山々は赤や黄色に色づいていた。
旅を続ける緋月桜花、白峰こはく、白夜の三人は、とある町の通りを歩いていた。
普段は落ち着いた雰囲気の通りだったが、今日はどこか様子が違う。
店先には南瓜をくり抜いて作られた灯籠が並び、軒先には色鮮やかな布や、見慣れない飾りが吊るされている。
子どもたちの姿も多く、楽しそうな声があちこちから聞こえていた。
「ねえねえ! あれ、何のお祭りなの?」
白夜が目を輝かせながら尋ねた。
「どうやら、海外から伝わった祭りのようですね」
桜花が店先の飾りを眺めながら答える。
「海外から?」
「はい。異国では、秋の収穫を終える頃に行われていた祭りが、長い年月をかけて形を変えていったものだそうです」
こはくも飾りを見ながら続けた。
「もともとは、古い収穫祭や、亡くなった人々を思う風習などが結びついて生まれたものだと聞いたことがあります」
「亡くなった人?」
「ええ。昔の異国では、秋の終わりから冬へ移る時期に、亡くなった人々や不思議な存在がこの世に近づくと考えられていた地域もあったそうです。そのため、人々は火を灯したり、仮装をしたりして夜を過ごしたのだとか」
「へえー! なんだか妖怪のお祭りみたいだね!」
白夜が楽しそうに尻尾を揺らす。
「そうですね。今では恐ろしいものを遠ざけるというよりも、仮装を楽しんだり、お菓子を贈り合ったりする行事として親しまれているようです」
「お菓子!?」
白夜の耳がぴんと立った。
「そこが一番大事なの!?」
こはくが小さく笑う。
「ふふ。白夜らしいですね」
〜小さな仲間たち〜
そのとき、通りの向こうから子どもたちの声が聞こえてきた。
「白夜ー!」
白夜が振り返ると、そこには三人の子どもたちがいた。
神無月 水月、皐 千里、蓬莱 紡。
以前からこの町で白夜と顔を合わせていた子どもたちである。
「おっ、みんな!」
白夜は嬉しそうに駆け寄った。
「今日は何してるの?」
「町のお祭りだよ!」
「仮装して、お菓子をもらいに行くんだって!」
「白夜も一緒に行かない?」
三人の言葉に、白夜はすぐさま反応した。
「行く行く! もちろん行くよ!」
「白夜、ずいぶん乗り気ですね」
桜花が微笑ましそうに声をかける。
「だって、お菓子がもらえるんだよ!」
「それだけではありませんよ。せっかくのお祭りですから、皆さんと楽しんできてください」
「うん!」
白夜は大きく頷いた。
「桜花、こはく! 行ってくるね!」
「はい。気をつけてくださいね」
「暗くなる前には戻ってきてくださいね」
「分かってるって!」
白夜は三人と一緒に、通りの奥へと駆けていった。
〜仮装の支度〜
町の一角には、祭りのために用意された衣装や小物が並べられていた。
子どもたちはそれぞれ気に入ったものを選び、思い思いの姿へと変わっていく。
白夜も並べられた衣装を眺めていた。
「うーん……どれにしようかな」
白い髪と狐耳、二本の尻尾を持つ白夜は、普段から十分に目立つ姿をしている。
それでも、今日ばかりは特別な格好をしてみたいらしい。
しばらく迷った末、白夜は小さな黒い外套を手に取った。
「これにする!」
外套を羽織り、頭には小さな飾りをつける。
狐耳と二本の尻尾は隠さず、そのままにした。
「どう? 似合う?」
白夜が三人に尋ねる。
三人から返事をもらうと、白夜は満足そうに頷いた。
「よーし! 準備できた!」
その様子を少し離れた場所から見ていた桜花とこはくも、穏やかな表情を浮かべていた。
「楽しそうですね」
「はい。白夜にとっても、良い思い出になりそうです」
〜お菓子をください!〜
日が傾き、町の家々に灯りがともり始めた。
仮装した子どもたちは、数人ずつに分かれて通りを歩いていく。
白夜たちもその中に加わり、最初の家の戸口へと向かった。
白夜が戸を叩く。
「こんばんはー!」
中から出てきた住人は、仮装した子どもたちを見て微笑んだ。
「おやおや、可愛らしいお客さんたちだね」
白夜は胸を張り、元気よく声を上げた。
「お菓子をください!」
住人は楽しそうに笑い、用意していた菓子を一人ずつ手渡した。
「ありがとう!」
白夜は受け取った菓子を大事そうに抱える。
次の家でも、その次の家でも、子どもたちは同じように声をかけた。
家々を巡るたびに、袋の中のお菓子が少しずつ増えていく。
「わあ、いっぱい集まった!」
白夜は袋の中を覗き込み、嬉しそうに尻尾を揺らした。
「まだまだ行くよ!」
そう言って、次の家へ向かう。
一方、少し離れた場所では桜花とこはくがその様子を見守っていた。
「白夜、すっかり夢中ですね」
「ふふ。お菓子をもらうたびに、あんなに嬉しそうにしています」
「今日は特別な日ですからね」
桜花は、子どもたちの楽しそうな姿に目を細めた。
〜祭りの灯りの下で〜
やがて町はすっかり夜に包まれた。
通りには南瓜の灯籠が並び、家々から漏れる明かりが道を照らしている。
白夜たちは最後の家を訪ね終え、広場へ戻ってきた。
「ふうー! いっぱい歩いたね!」
白夜は袋を抱えながら、満足そうに息をついた。
「たくさんもらえたね!」
「うん! こんなにいっぱい!」
白夜が袋の中を見せると、三人もそれぞれ集めたお菓子を見せ合った。
そこへ桜花とこはくがやってくる。
「お帰りなさい。楽しめましたか?」
「もちろん!」
白夜は勢いよく答えた。
「見て見て! こんなにお菓子をもらったんだよ!」
「ふふ。ずいぶん集まりましたね」
「みんなで一緒に回れたのが楽しかったです」
こはくが三人にも声をかける。
白夜は袋から一つお菓子を取り出し、桜花とこはくに差し出した。
「二人にもあげる!」
「ありがとうございます。では、ありがたくいただきますね」
「私もいただきますね。ありがとう、白夜」
二人がお菓子を受け取ると、白夜は嬉しそうに笑った。
広場では、まだ祭りを楽しむ人々の姿があった。
子どもたちの笑い声が響き、南瓜の灯りが夜の町を優しく照らしている。
「ねえ、桜花!」
「はい?」
「また来年も、これやりたい!」
白夜の言葉に、桜花は穏やかに頷いた。
「そうですね。また皆さんと一緒に楽しめると良いですね」
「約束だよ!」
白夜は三人の方を振り返る。
その言葉に、子どもたちも嬉しそうな様子を見せた。
こうして、異国から伝わった小さな祭りは、白夜たちにとって忘れられない一日となった。
秋の夜空の下、南瓜の灯りはいつまでも町を照らしていた。
ハロウィンということで特別編です。
平日での2話構成は大変でしたが楽しんで頂けたでしょうか?
新キャラについての初対面は前の葛幕村で白夜が知り合った子供達でした。




