第4話: 夜遊びの裏で、影は戦場に立つ
第4話:夜遊び…そして影の舞台
その夜。
ユウトは夕食を終えたところで、部屋の扉が勢いよく開いた。
「おいユウト!遊びに行かね?」
外に立っていたのは、満面の笑みを浮かべた二人の友人。
カイト・レンジ――いつも騒ぎを起こす男。 ハルト・シン――とにかく皆を引っ張る男。
そしてその後ろには……
ユキがいた。
「……少しだけなら、いいよね」
ユキは小さく微笑む。
ユウトは心の中でため息をついた。
(姉さんがいると……断れるわけないだろ)
「……わかった、行くよ」
こうして四人は街へ出た。
夜のトリア王都は、光に満ちていた。 笑い声、話し声、屋台の賑わい。
ユウトは歩きながら思う。
(たまにはこういうのも悪くないな……)
(でも今夜は訓練もしないと……)
(いや、ここで一発“抜ける演技”をしておくか?)
しばらく歩いたその時だった。
ユウトが突然立ち止まる。
「……あっ」
「どうした?」とカイトが振り返る。
ユウトは腹を押さえ、顔を歪めた。
「腹が……やばい……無理……」
ハルトが慌てる。
「さっきまで普通だっただろ!?」
ユキが駆け寄る。
「ユウト!大丈夫!?家まで連れて行くよ!」
ユウトはすぐに手を振った。
「い、いや大丈夫!!」
「姉さんは二人と遊んでて!」
「俺は一人で帰れるから!」
「迷惑かけたくないし!」
数秒の沈黙。
カイトは涙目になった。
「お前……」
ハルトも目を潤ませる。
「犠牲になってくれてんのかよ……」
「行こうユキ!こいつもう限界だ!」
二人はユキを連れて行った。
ユキは振り返る。
「気をつけて帰ってね!」
「……ああ」
三人の姿が見えなくなると――
ユウトは叫んだ。
「絶対誰にも言うなよ!!」
そして再び演技を続ける。
「うぅ……やばい……」
……5秒後。
すっと立ち上がる。
無表情。
「……演技って疲れるな」
ユウトは路地裏へと消えた。
誰もいない暗闇。 音すらない世界。
フードをかぶる。
黒い魔力が全身を包む。
影のスライムが体を覆い尽くし――
“シャドウ”が現れた。
屋根へ跳び上がる。
夜風が吹く。 月光が差す。
(さて……この街、何か面白いものはあるか)
しばらく観察した後、視線が止まる。
怪しげな一団が、一人の少女を連れていた。 向かう先は――
禁断の塔。
(お、夜イベントか)
(なら……それっぽく決めるか)
場面転換
馬車の中。
ギルス・アストル―― “エデンズ・ローヴェン(ER)”の一員が少女を見下ろしていた。
「なぜ自分が捕まったか分かるか?」
少女は震えながら睨み返す。
「……黙れ」
ギルスは笑う。
「お前の血はトリア・ヒコウの末裔だ」
「かつて世界を滅ぼしかけた存在を封じた英雄の血」
「お前は……それを蘇らせるための“素材”だ」
少女――トウカ・シトロンは拳を握りしめる。
「家族に手を出したら……殺す」
ギルスは冷たく笑った。
「その前に、楽しませてもらおうか」
「馬車を止めろ」
絶望が広がる。
その時――
ザシュッ。
一瞬。 音すらない。
護衛たちが崩れ落ちる。
上空から黒い影が降り立った。
「……俺はシャドウ」
「影に潜み――」
「深淵の恐怖をもたらす者」
トウカは目を見開く。
ギルスは眉をひそめた。
「この魔力……何だ……?」
彼はトウカを殴り飛ばす。
「邪魔だ!」
馬車が破壊される。
シャドウが立っていた。
静かに。
ギルスが突撃する。
金属音が響く。
キン!キン!キン!
だが全てが空を切る。
「お前は俺に触れることすらできない」
(……今の、決まったな)
影が揺れる。
背後に移動。
ザシュッ!!
一閃。
ギルスが叫ぶ。
「があああああ!!」
しかし彼は薬を飲み込んだ。
肉体が膨張し、魔力が暴走する。
「殺す……殺してやる!!」
ユウトは息を吐く。
「……厄介だな」
戦いが激化する。
攻撃は全て回避される。 傷はすぐ再生される。
影のスライムがダメージを吸収する。
ユウトは鉄の棒を拾う。
魔力を纏わせる。
(武器なんて何でもいい)
突撃。
斬撃の嵐。
しかし敵はさらに暴走。
薬を飲み続ける。
「死ねぇぇぇぇ!!」
ユウトは止まった。
そして手を掲げる。
影の糸が無数に伸び、敵を拘束する。
静寂。
空間が歪む。
ユウトが呟く。
「I....AM....THE....SHADOW」
黒い点が現れる。
小さく――だがすべてを飲み込む。
「Black Singularity」
――崩壊。
音が消えた。
光が消えた。
世界が一度“無”になり――
そして戻る。
そこには何もなかった。
ギルスの存在は完全に消滅していた。
ユウトは背を向ける。
(まあ、悪くない)
屋根へ跳び去る。
影の中へ消える。
少女は震えながら呟く。
「……シャドウ……」
遠くで見ていた者は後ずさる。
「……化け物だ……」




