第3話:静かな日常の終わり
【第3話:影と日常、そして新しい「家族」】
夜――
森の奥。
静寂の中に、かすかな余韻が残っていた。
先ほどの戦い。
そして――“あの存在”。
(……逃げたか)
ユウトは木の枝に降り立つ。
視線は、すでに消えた気配の方向へ。
(完全には追えなかったが……)
(間違いないな)
ただの人間じゃない。
(……面白くなってきた)
わずかに口元が歪む。
「……まあいい」
闇がほどける。
黒いスライム装甲が消え、いつもの少年の姿へ。
「今は日常を優先するか」
夜風が吹き抜ける。
ユウトは軽く跳び、屋敷へと戻った。
朝――
ユウトの初登校の日。
新鮮な空気。
わずかに高鳴る胸。
(……姉、か)
昨夜、母から聞いた話。
両親を失い、行き場をなくした少女――
真人ユキ。
今日から、この家の一員になるらしい。
(別に興味はないけど……)
(どんな奴なんだろうな)
女性に対して特別な感情はない。
だが、その境遇には少しだけ理解があった。
学校。
初日の授業は問題なく進む。
新しいクラスメイト。
軽い会話。
穏やかな時間。
(……魔力持ち、結構いるな)
何人かはすでに魔力を持っていた。
だが、ユウトはそれを一切見せない。
(7歳でバレたら面倒だ)
魔力測定。
模擬戦。
ユウトは完璧に“弱者”を演じた。
「はぁっ!」
クラスでもトップクラスの少女――
シノン・シトル。
放たれた火球がユウトに直撃する。
ドンッ!!
身体が吹き飛ぶ。
地面に叩きつけられる。
血が飛び散る――
ように見えた。
(よし、いい感じだ)
瞬時に生成した偽の血。
完璧な演技。
教師たちは慌てて試験を中断。
ユウトは保健室へ運ばれる。
静かな部屋。
ベッドの上。
(……順調すぎるな)
前世ではただの妄想少年。
だが今は違う。
(……“闇の支配者”に近づいている)
窓の外を見る。
(……姉はまだ来てないか)
放課後。
帰路。
(今夜は何をするか……)
門をくぐった瞬間――
「ユウト!!」
両親が駆け寄る。
「ユキが……誘拐されたの!」
空気が変わる。
「今、兵を動かして探してる!」
ユウトは一瞬だけ黙る。
「……分かった。家で待つ」
両親はすぐに出ていった。
(……なるほど)
(さっき感じた魔力の集団……)
(あれか)
(雑魚っぽいが……ちょうどいい)
夜。
部屋に戻り、鍵をかける。
「行くか」
闇が身体を包む。
黒いスライム装甲。
“シャドウ”。
窓から飛び出し、夜空へ。
月明かりの中を駆ける。
――その頃。
ユキは森の中を走っていた。
後ろからは魔力を持つ盗賊たち。
「待てぇ!!」
魔弾が飛ぶ。
地面が爆ぜる。
「いや……!」
その様子を、別の影が見ていた。
「……やっぱり」
低い女の声。
「“シャドウ”に関係あるかもしれない」
確信はない。
だが、興味はある。
その時――
ドォォン!!
赤紫の閃光が空から落ちる。
地面が砕ける。
そこに立つのは――
「我が名はシャドウ」
「闇に潜み、すべてを喰らう存在」
冷たい声。
盗賊たちが振り向く。
「なんだこいつ!?」
一人が斬りかかる。
キンッ――
刃が当たる。
だが――
「……効かないな」
傷は瞬時に修復される。
黒いスライムが再構築。
「じゃあ、次はこっちだ」
巨大な鎌が現れる。
一閃。
血が舞う。
「化け物かよ……!」
魔弾が放たれる。
ユウトは鎌を回転させ、吸収。
「悪くないな」
突撃。
斬る。
斬る。
斬る。
「ハハ……」
「少しは上がったか」
最後の一撃。
ズバッ――
全員が倒れる。
ユキは震えていた。
恐怖ではない。
圧倒的な力への驚き。
(……この人……)
影の女は青ざめる。
(危険すぎる……)
離脱。
ヒュン!!
ナイフが木を貫く。
「……気づいてるぞ」
低い声。
彼女は息を飲み、消えた。
ユウトは追わない。
「……今はこっちが優先だ」
ユキを見る。
だが――
「……金、結構あるな」
荷車へ。
(普通の金か)
必要な分だけ回収。
「気をつけろよ」
消える。
数分後。
「大丈夫ですか!?」
普通の姿で登場。
完璧な演技。
「さっき“シャドウ”って人が……」
(ああ、俺だ)
「そうなんですか!よかった……!」
「俺はユウト・クロガネです」
「……ユキです」
帰り道。
「さっきのこと……内緒で」
(バレたら怒られる)
帰宅。
「ユキ!!」
抱きしめる両親。
ユウトは後ろで安堵。
(……バレてないな)
夜。
家族で食事。
「俺、空気じゃない?」
笑い声。
ユキは思う。
(……この家、いいかも)
ユウトは部屋へ。
(……あの女、気になるな)
ベッドに倒れる。
(あと5年か)
「学院編……楽しみだな」
闇の中で笑う。
――第3話 終わり――
第4話ネタバレ(少し)
ただの夜の外出のはずだった――
それはやがて、
王都での「シャドウ」の最初の舞台へと変わる。
謎の少女。
暗躍する組織。
そして――触れてはいけない存在に手を出してしまった者。
闇の中で、
空間すら飲み込む力が目覚める。
だが、本当に恐ろしいのはその力ではない。
――それを使う者が、
ただ“カッコつけて演じているだけ”だということ。
この章の見どころ: ・初の本格バトル
・新技の初披露
・組織の最初のメンバー登場
・背後に潜む敵の存在




