第2話:シャドウ降臨
【第2話:闇の力と竜、そして“影”】
ユウトは5歳の頃から、夜な夜な魔力の鍛錬を続けていた。
誰にも気づかれないように。
静かに、確実に。
森へと足を運び、盗賊や魔物を相手に戦い続ける。
そして――7歳。
その力は、すでに常人の域を超えていた。
その夜。
家族が眠りについたのを確認し、ユウトは静かに窓から外へ出る。
黒いスライムのような魔力が身体を覆い、装甲へと変わる。
「……行くか」
そのまま夜空へと跳び上がる。
森を越え、さらに奥へ。
強い気配を探していると――
(……ん?)
異質な魔力。
しかも、かなり大きい。
視線の先。
王都アストリア。
そこでは、一体の“竜”が暴れていた。
空間を裂くように現れた異界の存在。
圧倒的な魔力。
王都は炎に包まれ、人々は混乱に陥っていた。
騎士団、冒険者たちが応戦するが――
被害は広がる一方。
(……いいね)
(これは“使える”)
ユウトはゆっくりと高度を上げる。
(もしこれが“見せ場”なら――)
その目が細められる。
(……完璧にやるしかない)
次の瞬間。
ドォォンッ!!
赤紫の閃光が空から落ちる。
地面が砕ける。
そこに立っていたのは――
「我が名はシャドウ」
「闇に潜み、すべてを呑み込む存在」
低く、冷たい声。
人々は呆然と見上げる。
「シャドウ……?」
竜が咆哮し、魔力を放つ。
ユウトは軽く身を翻し、攻撃を回避する。
(……意外と危険だな)
(この身体、まだ完全には制御しきれていないが――)
(軽く調整すれば問題ない)
空中戦。
激しい衝突。
爆音が響き渡る。
一撃、二撃。
ユウトは確実にダメージを与えていく。
やがて――
翼を斬り落とし、腕を断つ。
竜の絶叫が夜空に響く。
「……そろそろ終わりだ」
無数の紫の光が空中に展開される。
“影の糸”が竜を拘束する。
「――ブレード・アビス」
次の瞬間。
ドォォォォォン!!
紫の閃光が炸裂する。
王都全体を照らす光。
竜は跡形もなく消滅した。
静寂。
人々は言葉を失う。
その中で、一人の少女が空を見上げていた。
(……あの人……)
かすかな笑み。
そして――
ユウトは姿を消す。
森の近く。
巨大な古木の上。
ユウトは枝に立ち、王都を見下ろす。
「……まあ、悪くないな」
夜風が吹き抜ける。
闇のマントが揺れる。
背を向け、立ち去ろうとした――
「……何も言わずに帰るつもりか?」
ユウトの動きが止まる。
沈黙。
空気が、一瞬で重くなる。
「……ほう」
振り向かない。
だが――
その目が変わる。
「……さっきから」
「……気づいていたさ」
闇の中から声が響く。
「それでも、気づかないフリをするとはな」
一人の影が現れる。
その魔力は――
異質。
ユウトはわずかに笑う。
「……面白い」
(初めてだな)
(完全には見抜けない相手は)
影の人物が顔を上げる。
「……シャドウ」
「……貴様を待っていた」
空気が凍りつく。
ユウトはゆっくりと振り返る。
「……そうか」
その口元に笑み。
「……なら――」
「……始めようか」
――第2話 終わり




